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【間話】暴走のウッドリィ
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その出会いはきっと、運命だった。
極平凡な貴族の末っ子に産まれた私は、光属性だとわかると住み込みで神殿に入った。
どうせいつか兄上が家門を継ぐ、そうなればどこぞの家門と政略結婚して出ていくしかない。息が詰まる。6歳にしてそう思っていた私には、都合が良かった。
治癒魔法や絶対神についての講義に、お手伝い、自分の身の回りの世話は自分でこなす。私はなんでも覚えが早く、魔力量も多い方だったことから周りからちやほやされるようになっていった。
そんなことをしながら2年、3年と程過ごしたある夜、急用が出来た神官から風呂に着替えを届けるように頼まれた。
「失礼しま~~す」
大神殿には大きな風呂があり晩餐の後入ることが出来る。
しかし今は晩餐前……
誰が入ってるんだ?
籠に自分のものより少し小さい服を入れ、衝立越しに聞き耳を立てていると前神殿長の声がした。
「これカミーユ、やめなさい」
「あはは! おじいちゃん、頭も髭もモコモコです」
“カミーユ”
楽しそうに“おじいちゃん”と呼ぶ声には甘えが混じっているーー前神殿長の孫だろうか?
チラリと覗いて息を飲んだーー。
真っ白な髪に宝石のような赤い瞳、白い肩をほんのりピンク色に染めた“カミーユ”が湯に浸かっていた。
隣で一緒に湯に浸かる前神殿長と、笑顔で楽しそうに何やら話している。
この世のものとは思えない程美しい後ろ姿に、笑う横顔に、心臓が今動き出したかのように、ドクドク大きく音を立てだしたーー。
それからと言うもの、気付けば“カミーユ”を探すようになっていた。朝早く見かける事もあれば夜遅くにいることもあり、神殿に住んでいるようだった。講義でも、実技でも、私のいる住み込みの神官や見習いの部屋のあたりでは見かけたことがなかった。
いつ見ても美しい子供だった。
何者なんだーー?
半年程すると答えは出た。1年前神より名を授かりし存在が現れた、と神官たちの間では周知されていたらしいがーー
"カミーユ神殿長"は前神殿長から特別な教育を受けている。今後行動を共にすることも出てくるため失礼の無いようにーーと話があった。
翌年からは一緒に実技を受けることもあった。
カミーユは息をするように治癒魔法を一瞬で発動し私含め他の見習いを驚かせたが、最初、攻撃魔法はからっきしだった。
なんだ、大したことないじゃないかーー
「お前みたいな出来損ないの子供が、なんで神殿長なんだ?」
しかし何を言ってもニコリと微笑むだけで言い返さない。
“神”の教えはわかっていた。しかし信仰心などなかった私は、カミーユの事をよく思っていない他の貴族出身の見習いとともに幼稚な“イタズラ”をするようになった。
カミーユの履き物を隠したり、着替えの服を汚したり。
“神”から“名を授かった”からなんだと言うんだ。
ちょっと魔力量は多いかもしれないがーー
攻撃魔法もすぐ使えるようになったからってーー
自分だってそのくらいできるーー
しかしカミーユは、何をしても泣くことはなく、もちろん悪戯で笑うようなこともなく、まるで慣れているかのように汚れた服も平然と着てしまう。イタズラの犯人がバレては神官から怒られた。
なんとか言ったらどうなんだーー
ちゃんとこっちを見てーー
ある年、伝染病が流行った。
神殿が事態を把握した時には既に各地で伝染し、神官から見習いまでーー治癒が使えるものはルトルヴェール国内を飛び回った。
私も自分の産まれた領地へ神官と赴き、領民へも家族へも治癒を施す。
何日も、何日も、魔力が空になって回復しては治癒を繰り返した。
馬車で神殿に戻る頃には身体がだるく熱っぽく感じーー
気付けばベッドの上だった。
頭は鈍器で殴られ続けているかのように絶え間なく痛み、鍋で茹でられているかのような、喉から火を吹きそうな程熱いのに、ガタガタと芯から震える身体は寒気も感じる。
腫れ上がり痛む喉は水も通さない。
このくらいすぐにーーそう思っても治癒が思うように発動しない。
なん……でーー
その部屋には他にも沢山の神官、見習いが息を苦しそうに寝ていた。
ビル……リラ……シモン……
ベッドに、床に敷かれた布団に、横たわり苦しむ仲間を、朦朧とした頭で眺める。
何故誰も治癒をかけてくれないのだろう。
違う、魔力が足りないんだ。治癒が、追いつかないんだーー
次第に枕元に水を置く人もいなくなり……
ーーもう、ダメだーー
そう思った時、
「遅くなりました」
鈴のように凛とした声が響くと、視界は優しい光に包まれる。
辛かった症状は嘘のように消え、身体が動くーー
身体を起こし見回せば、戸口にはカミーユがいた。
「まさか本神殿がこの様な事態になっていたとはーー前神殿長と各地を回っていて戻るのが遅くなってしまいました」
「皆さん、苦しかったですねーー間に合って良かった」
「うっ……ふぅっ………も、もう、だめかと思った……」
大粒の涙が寝具に落ち、何十人いるのだろう、周りからもすすり泣く声が聞こえる。
いつの間にか大きな鍋の乗ったワゴンを押して戻ってきたカミーユは、スープをよそっては一人一人に配っていく。
ベッドに寝る者から床にいた者までーー
「さぁ、スープですよ。食べられますか?」
そう、気付かうように肩に手が触れ声をかけられる。
「カミーユ…………様は、大丈夫なんですか?」
自分で思った以上にかすれた声が出た。これ程の魔力を一度に使って、この人はなんともないのだろうかーー?
赤い瞳が驚いたように瞬いたあと、見たこともない美しい笑顔を向けられた。
「お気遣いありがとうございます。私は問題ありません。今はご自身の心配をしてください、ウッドリィ。病を治しても食事を取らないと、身体がもちませんよ」
そう言ってスープを渡された。
「名前ーー」
知っていたんだ。白い睫毛に縁取られた瞳に自分の姿を認めると、いつかのように心臓の音が大きく聞こえた。
「すごいよな……同行した見習いの話だと、俺達と同じ頃から各地を周りだし毎日治癒をかけて来たらしい……」
「花畑でお祖父様が呼んでいらっしゃったのに、カミーユ様に強引に呼び戻されちゃった。私が嫁になるしかない、もう」
「いや、リラのじーちゃん生きてるだろ」
「私達……今まで何てことしちゃってたんだろう」
「あの方こそまさに、神の御使い様だーー」
近くに寝ていた、これまでカミーユにイタズラをしてきた仲間が口々にそう呟く。
ーー本当にーー
ーーあの御方こそ奇跡だーー
カミーユ神殿長にこれまでの事を謝罪した。
そのくらいのイタズラ、何てことはないと笑って許してくれた。
前神殿長にはこっぴどく叱られた。
「カミーユが平気そうにしているからと、何をしてもいいわけではない。悲しい生い立ちのあの子は、自身の身体も、心すら痛みに対する感覚が鈍い。神より名を与えられているあの子は、そうでなくともこの先険しい道を歩むこととなるだろうーー。少しでも多く、優しい時間を過ごしてほしいんじゃーー」
その幼少期は聞くだけでも辛いものだった。
伝染病の終息はカミーユの力に寄るところが大きく、神殿以外でも
ーー神の御使いーー
としてその名が知られるようになる。
ーーあの人の役に立ちたいーー
ーー命を救ってもらった恩に報いたいーー
ーー今までの罪滅ぼしをしたいーー
何かカミーユを手伝えることはないかと観察すると、前神殿長が見ていないところでは頻繁に食事を抜いていることがわかった。
「ちゃんと食事をとってください! 」
思わずそう言って食事を運んでやれば“もうそんな時間でしたか”とおっとりした返事が返ってくる。
生い立ちがそうさせるのだろうか、カミーユには一日3食食べる習慣が無かった。
地方の治癒に神官と共に同行した際も、目を離すと何日も魔法を使い続けたり、平気で無茶をするーー
「いくら魔力量が多いからとーー身体を大切にしてくださいーー!」
「ーーもう6歳の子供ではありません。私のことは気にせず大丈夫ですよ」
何度進言したかわからない。この人はダメだ。誰かがついていないと、人間として生きていけないんだ。
前神殿長が神の御前へ旅立たれると、カミーユは改めて“神殿長”と呼ばれるようになり、ふいに流す涙を隠すかのようにベールを被るようになった。
夜、部屋の外まで様子を見に行くと、すすり泣く声が聞こえる。
子供の頃はどんなイタズラにも泣かなかったのにーー
私はカミーユの世話を焼くようになり、悲しさを紛らわせているのか夜中まで平気で書類を片付ける彼を手伝うよになった。
美しい青年へと育ったカミーユの寝室には、夜になると誰かが忍び込む事態が起き始めた。
気付き次第止めさせていたが、薄着のリラだったこともあった。
「なっ!?何をしてるんだリラ!? なんて格好なんだ」
「私……あの方に救われたの。あの方ももうお子がいてもおかしくないご年齢よ……この身を御用立ていただければと思って……」
頬を染めて、かつて様々な嫌がらせをした相手にそんなことを考えていた。
ビルやシモンに愚痴ると、
「いや、お前も大概だ」
「カミーユ神殿長を追って地方まで行く時のお前の振る舞いは、常軌を逸している」
「いいか、大事な事実を言うからよく聞け? お前のしてることはストーカーって言うんだぞ」
「そうだぞ、ストーカーだ。カミーユ様のご迷惑になるから食事の回数までチェックするのはもうやめろ」
と言われた。
心外だ。
あの方は放っておくと、平気で地方を治癒で回り続ける。
平気で何日も食を抜く。
魔力が空になっても、つらくても、誰にも言わない。
心配で心配で、たまらない。
誰かが見ていなきゃ、だめなんだーー
極平凡な貴族の末っ子に産まれた私は、光属性だとわかると住み込みで神殿に入った。
どうせいつか兄上が家門を継ぐ、そうなればどこぞの家門と政略結婚して出ていくしかない。息が詰まる。6歳にしてそう思っていた私には、都合が良かった。
治癒魔法や絶対神についての講義に、お手伝い、自分の身の回りの世話は自分でこなす。私はなんでも覚えが早く、魔力量も多い方だったことから周りからちやほやされるようになっていった。
そんなことをしながら2年、3年と程過ごしたある夜、急用が出来た神官から風呂に着替えを届けるように頼まれた。
「失礼しま~~す」
大神殿には大きな風呂があり晩餐の後入ることが出来る。
しかし今は晩餐前……
誰が入ってるんだ?
籠に自分のものより少し小さい服を入れ、衝立越しに聞き耳を立てていると前神殿長の声がした。
「これカミーユ、やめなさい」
「あはは! おじいちゃん、頭も髭もモコモコです」
“カミーユ”
楽しそうに“おじいちゃん”と呼ぶ声には甘えが混じっているーー前神殿長の孫だろうか?
チラリと覗いて息を飲んだーー。
真っ白な髪に宝石のような赤い瞳、白い肩をほんのりピンク色に染めた“カミーユ”が湯に浸かっていた。
隣で一緒に湯に浸かる前神殿長と、笑顔で楽しそうに何やら話している。
この世のものとは思えない程美しい後ろ姿に、笑う横顔に、心臓が今動き出したかのように、ドクドク大きく音を立てだしたーー。
それからと言うもの、気付けば“カミーユ”を探すようになっていた。朝早く見かける事もあれば夜遅くにいることもあり、神殿に住んでいるようだった。講義でも、実技でも、私のいる住み込みの神官や見習いの部屋のあたりでは見かけたことがなかった。
いつ見ても美しい子供だった。
何者なんだーー?
半年程すると答えは出た。1年前神より名を授かりし存在が現れた、と神官たちの間では周知されていたらしいがーー
"カミーユ神殿長"は前神殿長から特別な教育を受けている。今後行動を共にすることも出てくるため失礼の無いようにーーと話があった。
翌年からは一緒に実技を受けることもあった。
カミーユは息をするように治癒魔法を一瞬で発動し私含め他の見習いを驚かせたが、最初、攻撃魔法はからっきしだった。
なんだ、大したことないじゃないかーー
「お前みたいな出来損ないの子供が、なんで神殿長なんだ?」
しかし何を言ってもニコリと微笑むだけで言い返さない。
“神”の教えはわかっていた。しかし信仰心などなかった私は、カミーユの事をよく思っていない他の貴族出身の見習いとともに幼稚な“イタズラ”をするようになった。
カミーユの履き物を隠したり、着替えの服を汚したり。
“神”から“名を授かった”からなんだと言うんだ。
ちょっと魔力量は多いかもしれないがーー
攻撃魔法もすぐ使えるようになったからってーー
自分だってそのくらいできるーー
しかしカミーユは、何をしても泣くことはなく、もちろん悪戯で笑うようなこともなく、まるで慣れているかのように汚れた服も平然と着てしまう。イタズラの犯人がバレては神官から怒られた。
なんとか言ったらどうなんだーー
ちゃんとこっちを見てーー
ある年、伝染病が流行った。
神殿が事態を把握した時には既に各地で伝染し、神官から見習いまでーー治癒が使えるものはルトルヴェール国内を飛び回った。
私も自分の産まれた領地へ神官と赴き、領民へも家族へも治癒を施す。
何日も、何日も、魔力が空になって回復しては治癒を繰り返した。
馬車で神殿に戻る頃には身体がだるく熱っぽく感じーー
気付けばベッドの上だった。
頭は鈍器で殴られ続けているかのように絶え間なく痛み、鍋で茹でられているかのような、喉から火を吹きそうな程熱いのに、ガタガタと芯から震える身体は寒気も感じる。
腫れ上がり痛む喉は水も通さない。
このくらいすぐにーーそう思っても治癒が思うように発動しない。
なん……でーー
その部屋には他にも沢山の神官、見習いが息を苦しそうに寝ていた。
ビル……リラ……シモン……
ベッドに、床に敷かれた布団に、横たわり苦しむ仲間を、朦朧とした頭で眺める。
何故誰も治癒をかけてくれないのだろう。
違う、魔力が足りないんだ。治癒が、追いつかないんだーー
次第に枕元に水を置く人もいなくなり……
ーーもう、ダメだーー
そう思った時、
「遅くなりました」
鈴のように凛とした声が響くと、視界は優しい光に包まれる。
辛かった症状は嘘のように消え、身体が動くーー
身体を起こし見回せば、戸口にはカミーユがいた。
「まさか本神殿がこの様な事態になっていたとはーー前神殿長と各地を回っていて戻るのが遅くなってしまいました」
「皆さん、苦しかったですねーー間に合って良かった」
「うっ……ふぅっ………も、もう、だめかと思った……」
大粒の涙が寝具に落ち、何十人いるのだろう、周りからもすすり泣く声が聞こえる。
いつの間にか大きな鍋の乗ったワゴンを押して戻ってきたカミーユは、スープをよそっては一人一人に配っていく。
ベッドに寝る者から床にいた者までーー
「さぁ、スープですよ。食べられますか?」
そう、気付かうように肩に手が触れ声をかけられる。
「カミーユ…………様は、大丈夫なんですか?」
自分で思った以上にかすれた声が出た。これ程の魔力を一度に使って、この人はなんともないのだろうかーー?
赤い瞳が驚いたように瞬いたあと、見たこともない美しい笑顔を向けられた。
「お気遣いありがとうございます。私は問題ありません。今はご自身の心配をしてください、ウッドリィ。病を治しても食事を取らないと、身体がもちませんよ」
そう言ってスープを渡された。
「名前ーー」
知っていたんだ。白い睫毛に縁取られた瞳に自分の姿を認めると、いつかのように心臓の音が大きく聞こえた。
「すごいよな……同行した見習いの話だと、俺達と同じ頃から各地を周りだし毎日治癒をかけて来たらしい……」
「花畑でお祖父様が呼んでいらっしゃったのに、カミーユ様に強引に呼び戻されちゃった。私が嫁になるしかない、もう」
「いや、リラのじーちゃん生きてるだろ」
「私達……今まで何てことしちゃってたんだろう」
「あの方こそまさに、神の御使い様だーー」
近くに寝ていた、これまでカミーユにイタズラをしてきた仲間が口々にそう呟く。
ーー本当にーー
ーーあの御方こそ奇跡だーー
カミーユ神殿長にこれまでの事を謝罪した。
そのくらいのイタズラ、何てことはないと笑って許してくれた。
前神殿長にはこっぴどく叱られた。
「カミーユが平気そうにしているからと、何をしてもいいわけではない。悲しい生い立ちのあの子は、自身の身体も、心すら痛みに対する感覚が鈍い。神より名を与えられているあの子は、そうでなくともこの先険しい道を歩むこととなるだろうーー。少しでも多く、優しい時間を過ごしてほしいんじゃーー」
その幼少期は聞くだけでも辛いものだった。
伝染病の終息はカミーユの力に寄るところが大きく、神殿以外でも
ーー神の御使いーー
としてその名が知られるようになる。
ーーあの人の役に立ちたいーー
ーー命を救ってもらった恩に報いたいーー
ーー今までの罪滅ぼしをしたいーー
何かカミーユを手伝えることはないかと観察すると、前神殿長が見ていないところでは頻繁に食事を抜いていることがわかった。
「ちゃんと食事をとってください! 」
思わずそう言って食事を運んでやれば“もうそんな時間でしたか”とおっとりした返事が返ってくる。
生い立ちがそうさせるのだろうか、カミーユには一日3食食べる習慣が無かった。
地方の治癒に神官と共に同行した際も、目を離すと何日も魔法を使い続けたり、平気で無茶をするーー
「いくら魔力量が多いからとーー身体を大切にしてくださいーー!」
「ーーもう6歳の子供ではありません。私のことは気にせず大丈夫ですよ」
何度進言したかわからない。この人はダメだ。誰かがついていないと、人間として生きていけないんだ。
前神殿長が神の御前へ旅立たれると、カミーユは改めて“神殿長”と呼ばれるようになり、ふいに流す涙を隠すかのようにベールを被るようになった。
夜、部屋の外まで様子を見に行くと、すすり泣く声が聞こえる。
子供の頃はどんなイタズラにも泣かなかったのにーー
私はカミーユの世話を焼くようになり、悲しさを紛らわせているのか夜中まで平気で書類を片付ける彼を手伝うよになった。
美しい青年へと育ったカミーユの寝室には、夜になると誰かが忍び込む事態が起き始めた。
気付き次第止めさせていたが、薄着のリラだったこともあった。
「なっ!?何をしてるんだリラ!? なんて格好なんだ」
「私……あの方に救われたの。あの方ももうお子がいてもおかしくないご年齢よ……この身を御用立ていただければと思って……」
頬を染めて、かつて様々な嫌がらせをした相手にそんなことを考えていた。
ビルやシモンに愚痴ると、
「いや、お前も大概だ」
「カミーユ神殿長を追って地方まで行く時のお前の振る舞いは、常軌を逸している」
「いいか、大事な事実を言うからよく聞け? お前のしてることはストーカーって言うんだぞ」
「そうだぞ、ストーカーだ。カミーユ様のご迷惑になるから食事の回数までチェックするのはもうやめろ」
と言われた。
心外だ。
あの方は放っておくと、平気で地方を治癒で回り続ける。
平気で何日も食を抜く。
魔力が空になっても、つらくても、誰にも言わない。
心配で心配で、たまらない。
誰かが見ていなきゃ、だめなんだーー
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