22 / 52
22 学園生活5
しおりを挟む
「テレシア様!! 昨日は当家のサミュエルが助けていただき、ありがとうございましたわ!」
ソフィアやエリアスと共に朝食をとっていると、キャロリーヌが唐突に声をかけてきた。
「あ、失礼しますの」
ずずいっと、ソフィアの向かい側に座るエリアス……の、隣に食事を置いて着席する。
ちなみにテオは寝坊しているのか部屋で食べるのか、まだ食堂に姿を見せていない。
「サミュエルがあんっっな目にあうだなんて! テレシア様がいらっしゃいませんでしたらどうなっていたことか、考えるだけで恐ろしいですわ。ありがとうございましたわ! 獣人様の尊さをご存知でない狼藉者には、このキャロリーヌがフリアンディーズ家の名にかけて、お仕置きしておきましたわ!」
見事な水色の縦ロールを弾ませて、一気に捲し立てた。
ちょっと声が大きすぎて、周囲からの視線が痛い。
「大事に至らずよかったです。サミュエルさんのお加減は、いかがですか?」
「ええ……大きな怪我はありませんが足を痛そうにしていて、今日は大人しく寝ているように言ってありますの。ダニエルも、部屋に置いてきたので大丈夫ですの!」
「そうなのですね。昨日、ダニエルさんには失礼なことを言ってしまったみたいで……気にしていたのですがーー」
「まぁ、そうなんですの? その様なことは何も申しておりませんでしたわ。お気に病まれることはありませんわ! 」
やや早口気味の、吊り目と相まって強く感じる口調に気押されたのか、ポカーンとした様子のエリアスと目があい……
「エリアス様、ソフィア様、紹介しますね。何度か面識はあるかと思いますが、こちらはキャロリーヌ・フリアンディーズ様です。私と同じく獣人の従者をお連れなんです」
二人にキャロリーヌを紹介した。
「キャロリーヌ・フリアンディーズと申しますの。よろしくお願いいたしますわ」
「僕はエリアス・ランベールと申します」
「私はソフィア・ミュレーです。フリアンディーズ様、どうぞ仲良くしてくださいね」
「……フリアンディーズ家と言うと、もしかして辺境伯の……?」
「え、ええ……そうなんですの。田舎から出てきて、私このあたりのことには疎いんですの。何か失礼があったらごめんなさいですわ」
辺境伯! エリアスの口から、初めて聞くワードが出てきた。
「そうですか……あの地は、大変なことがありましたからね。ご苦労も多いことでしょう……」
「お気遣い痛み入りますわ」
『ソフィア様、辺境伯とは?』
隣で食事をとるソフィアにこそっと聞いた。
『……私たちが産れる前、魔物が溢れて……前国王陛下が神の元へと旅立たれた地だと聞いています』
現国王陛下は随分お若いと思っていたら、そういうことだったのか……
『以前は、専属の騎士団の保有が認められていて、この学園卒業生の有力な就職先の一つでもありました。前陛下のことがありましてから大変厳しい扱いを受けていると……』
そっと斜め向かいを見ると、当の彼女はエリアスと談笑している。
気丈に振る舞うキャロリーヌが急にとても強い子に見えた。
数日後、“お披露目”の日がやってきた。
服は制服、従者を一人まで同伴して良いらしく、私はレオンと参加することにした。
「はー、緊張するー」
「いつも通りやれば大丈夫だよ、テレシアなら出来る」
鏡越しに、優しそうに目を細めながら髪を梳かすレオンが見える。この時間が好きだーー。
むふふ、美少年。尊い。
「交代しよ! わたしがやってあげる!」
立ち上がってくるりとレオンの肩に手を置き座らせると、パチパチと瞬きをした。
ムフフ。
「……笑い方が怖いですよ、テレシアサマ」
サラサラの黒髪をブラシで梳かすと、耳についているアクセサリーがシャララと揺れる。
アクセサリーはもちろん似合うけど、いつか、こんなものを着けなくても自由に生活できたらいいのにーー。
コロシアム状の訓練場が会場となっていて、新入生は訓練場、上級生は観覧席へ集まっていた。
会場内で一際高い背に猫耳、ダニエルがいた。長身の彼は、他の従者がいても流石に目立つ。ダニエルとは、サミュエルを助けた後微妙な別れ方をしたきりで、少し気不味い。
「テレシア様、先日はご質問へお返事もせずに失礼しました」
「……ダニエルさん、いいんですよ。サミュエルくんが大変な時に、いきなりあんなことを聞かれても困りますよね。配慮不足でした」
「まだ、私たちにはそこまでの信頼関係はないと思うんです。ーーいつか、お話しできる時がくるでしょう」
「それはどう言うーー」
そう言いかけたとき、キャロリーヌ、エリアス、テオ、ソフィアも寄ってきて話はそこまでとなった。
「「「我に宿し力よ、その末端を顕現せよ!! オーブ!!」」」
号令と共に新入生が一斉に呪文を唱え、オーブを手元に用意する。
わぁぁぁぁーー
観覧席から歓声と拍手が起きた。
「新入生諸君、さぁ、上空へ放て!」
シェイバー先生がオーブフラワーと唱えると、また一斉に詠唱が始まる。
「「「上空へ舞い上がり咲き誇れ! オーブフラワー!」」」
私も周りのタイミングに合わせて上空へ4属性のオーブを放つと、みんなの魔法も相まって色とりどりの花火のような輝きに視界が覆わる。
「壮観ですね……」
歓声あふれる場内から、ポツリと呟くレオンの声がした。
彼の腕を軽く掴んでいた手に、ぎゅっと力を入れる。
「うん、きれいだね」
金色の瞳に、花火のような光がたくさん映る。もっとレオンと一緒に、いろんなものを見ていきたいな……隣でそっと思った。
大きな拍手に包まれた後、上級生からオーブフラワーのお返しがあり、上級生全員となるとさらに圧巻だった。
ザ・魔法使い、といった風貌の帽子を被った学園長の有難いお話があり……先日の獣人への暴行について名を濁して語り、学園内では身分を振りかざしてはならない、と二度三度お話があった。そうだよね。平民と貴族と従者もいるもの。
そのあとは、上級生の激しいチーム紹介があった。
学園には複数のチームが存在し、魔獣の討伐や剣や魔法の訓練、属性に特化したチーム等……上級生と行動を共にしたりもするらしい。
白熱のPR合戦の後、園庭に移動して立食でのパーティーが開催された。
先日の獣人暴行のことを思うと、レオンは紋章をつけてはいるが心配で、私から離れないように言った。
「はぁ~、色々なチームがありましたね。土属性活用も気になりますが、神学探求チームや読書も捨てがたいです」
「ソフィア様は好きなことがはっきりしていますね」
隣でスイーツを頬張りながら、どのチームがいいかと話すソフィアが微笑ましい。
「僕と一緒に神学探求チームへ入りませんか? ソフィア様」
「エリアス様! 神学も良いですよね。 光属性でなければ神殿で学ぶことができませんが、神殿へ出向いて特別に講義を受けることもあるというお話でしたね」
うっとりと話すソフィアに、うんうんと頷くエリアス。……講義の他に上級生との活動でも講義……本当に彼らは6歳なの?
「俺は魔法剣術応用チームが気になります!」
普段の言動からは信じられないほど、上品に立食をしながらテオが元気よく答えた。幼くとも貴族なんだなぁと実感する。
「「「テレシア様は、やはりあれですか」」」
3人が声を揃えてそういうと、隣に立つレオンが大きくため息をついた。
「はい、わたしはーー」
「ーーそこの獣人を連れたあなたーー」
背後から声をかけてきたのは、ベージュ色の髪を結い上げた上級生でーー
「一人の獣人にアクセサリーを2つも! とても凝ったデザイン。オーブの時から見ていたけれど、この人の多い会場でピッタリと隣に立つその様子……彼を大切にしているのが一目で分かったわ! 私たちのチームに入らない?」
「はい! 喜んで!」
先程チームアピールで見た上級生に声をかけられ、私は迷わず返事をした。
「獣人を愛でるチーム! 入らせてください!!」
ソフィアたちから生暖かい目で見られたのは、言うまでもない。
どうやらお披露目もこの立食も、チームの紹介と加入がメインのようで、オーブやオーブフラワーを見て属性を特定した生徒を勧誘したりと、よく見れば周りで新入生が複数の上級生に囲まれる、なんて現象も起きていた。
先程まで隣にいたはずのソフィア、エリアス、テオも、気付けば上級生たちと談笑している。
「テレシア様、私もそちらのチームへご一緒したいですわ」
ダニエルを連れたキャロリーヌが声をかけてきた。
「まぁ! 背の高い獣人さんですね! 私達のチームは獣人へ暴力を振るわないことが絶対条件です! そこは大丈夫ですか?」
キャロリーヌが不愉快そうに顔を歪めつつ頷くと、上級生の女の子が説明を続ける。
「私達のチームは、獣人の従者をお連れでない方も、貴族でも平民でも受け入れます。獣人を愛し、獣人を好きな気持ちがあればどなたでも参加可能です! 獣人へ暴力を振るう愛し方は、ごめんなさいお断りさせていただいています。獣人の所在調査、獣人商人の独自調査、獣人の歴史、獣人の由来などについて研究しています。獣人衣服の受注可能店も網羅していますので、ご紹介のみの利用をする生徒もいます。内容にご賛同頂けましたら是非参加をお待ちしています!」
なんと、学園にそんなチームが存在しているなんて。これは、王城で行われている獣人関係の法整備にかなり役立つのでは?
チラリと横目でレオンを見るも無表情、その奥にいるダニエルが、何やら考え込んでいるのが視界に入った。
「?」
私の視線に気付くと、ニヤリとこちらに向かって笑い、先輩の方を見た。
「失礼ながら従者の発言をお許しください」
「許しますの、ダニエル」
「キャロリーヌ様は、辺境の地で獣人を保護されている。きっとチームのお役に立てることと思います」
「まぁ! 辺境の地と言うと、もしやフリアンディーズ地方ではありませんか?」
「そうでございます。こちらは、フリアンディーズ辺境伯のご息女、キャロリーヌ様です。」
「キャロリーヌ・フリアンディーズと申しますの。よろしくお願いしますわ」
ばさりと扇子で口元を覆いながら話す様は、ちょっと高圧的だが先輩は気を悪くした様子もなく……
「私はモンド男爵家のライラよ! チーム長の補佐をしているわ! あなたたちの先輩には平民もいるけど、学園内、及び学園に起因する活動では立場を問わないの。その辺りも大丈夫なら、是非お二人ともチームに入っていただきたいわ!」
ニコッと笑ってモンド先輩はそう話した。
キャロリーヌがそんな活動をしていたなんて。ますます親近感が湧いた。
ソフィアやエリアスと共に朝食をとっていると、キャロリーヌが唐突に声をかけてきた。
「あ、失礼しますの」
ずずいっと、ソフィアの向かい側に座るエリアス……の、隣に食事を置いて着席する。
ちなみにテオは寝坊しているのか部屋で食べるのか、まだ食堂に姿を見せていない。
「サミュエルがあんっっな目にあうだなんて! テレシア様がいらっしゃいませんでしたらどうなっていたことか、考えるだけで恐ろしいですわ。ありがとうございましたわ! 獣人様の尊さをご存知でない狼藉者には、このキャロリーヌがフリアンディーズ家の名にかけて、お仕置きしておきましたわ!」
見事な水色の縦ロールを弾ませて、一気に捲し立てた。
ちょっと声が大きすぎて、周囲からの視線が痛い。
「大事に至らずよかったです。サミュエルさんのお加減は、いかがですか?」
「ええ……大きな怪我はありませんが足を痛そうにしていて、今日は大人しく寝ているように言ってありますの。ダニエルも、部屋に置いてきたので大丈夫ですの!」
「そうなのですね。昨日、ダニエルさんには失礼なことを言ってしまったみたいで……気にしていたのですがーー」
「まぁ、そうなんですの? その様なことは何も申しておりませんでしたわ。お気に病まれることはありませんわ! 」
やや早口気味の、吊り目と相まって強く感じる口調に気押されたのか、ポカーンとした様子のエリアスと目があい……
「エリアス様、ソフィア様、紹介しますね。何度か面識はあるかと思いますが、こちらはキャロリーヌ・フリアンディーズ様です。私と同じく獣人の従者をお連れなんです」
二人にキャロリーヌを紹介した。
「キャロリーヌ・フリアンディーズと申しますの。よろしくお願いいたしますわ」
「僕はエリアス・ランベールと申します」
「私はソフィア・ミュレーです。フリアンディーズ様、どうぞ仲良くしてくださいね」
「……フリアンディーズ家と言うと、もしかして辺境伯の……?」
「え、ええ……そうなんですの。田舎から出てきて、私このあたりのことには疎いんですの。何か失礼があったらごめんなさいですわ」
辺境伯! エリアスの口から、初めて聞くワードが出てきた。
「そうですか……あの地は、大変なことがありましたからね。ご苦労も多いことでしょう……」
「お気遣い痛み入りますわ」
『ソフィア様、辺境伯とは?』
隣で食事をとるソフィアにこそっと聞いた。
『……私たちが産れる前、魔物が溢れて……前国王陛下が神の元へと旅立たれた地だと聞いています』
現国王陛下は随分お若いと思っていたら、そういうことだったのか……
『以前は、専属の騎士団の保有が認められていて、この学園卒業生の有力な就職先の一つでもありました。前陛下のことがありましてから大変厳しい扱いを受けていると……』
そっと斜め向かいを見ると、当の彼女はエリアスと談笑している。
気丈に振る舞うキャロリーヌが急にとても強い子に見えた。
数日後、“お披露目”の日がやってきた。
服は制服、従者を一人まで同伴して良いらしく、私はレオンと参加することにした。
「はー、緊張するー」
「いつも通りやれば大丈夫だよ、テレシアなら出来る」
鏡越しに、優しそうに目を細めながら髪を梳かすレオンが見える。この時間が好きだーー。
むふふ、美少年。尊い。
「交代しよ! わたしがやってあげる!」
立ち上がってくるりとレオンの肩に手を置き座らせると、パチパチと瞬きをした。
ムフフ。
「……笑い方が怖いですよ、テレシアサマ」
サラサラの黒髪をブラシで梳かすと、耳についているアクセサリーがシャララと揺れる。
アクセサリーはもちろん似合うけど、いつか、こんなものを着けなくても自由に生活できたらいいのにーー。
コロシアム状の訓練場が会場となっていて、新入生は訓練場、上級生は観覧席へ集まっていた。
会場内で一際高い背に猫耳、ダニエルがいた。長身の彼は、他の従者がいても流石に目立つ。ダニエルとは、サミュエルを助けた後微妙な別れ方をしたきりで、少し気不味い。
「テレシア様、先日はご質問へお返事もせずに失礼しました」
「……ダニエルさん、いいんですよ。サミュエルくんが大変な時に、いきなりあんなことを聞かれても困りますよね。配慮不足でした」
「まだ、私たちにはそこまでの信頼関係はないと思うんです。ーーいつか、お話しできる時がくるでしょう」
「それはどう言うーー」
そう言いかけたとき、キャロリーヌ、エリアス、テオ、ソフィアも寄ってきて話はそこまでとなった。
「「「我に宿し力よ、その末端を顕現せよ!! オーブ!!」」」
号令と共に新入生が一斉に呪文を唱え、オーブを手元に用意する。
わぁぁぁぁーー
観覧席から歓声と拍手が起きた。
「新入生諸君、さぁ、上空へ放て!」
シェイバー先生がオーブフラワーと唱えると、また一斉に詠唱が始まる。
「「「上空へ舞い上がり咲き誇れ! オーブフラワー!」」」
私も周りのタイミングに合わせて上空へ4属性のオーブを放つと、みんなの魔法も相まって色とりどりの花火のような輝きに視界が覆わる。
「壮観ですね……」
歓声あふれる場内から、ポツリと呟くレオンの声がした。
彼の腕を軽く掴んでいた手に、ぎゅっと力を入れる。
「うん、きれいだね」
金色の瞳に、花火のような光がたくさん映る。もっとレオンと一緒に、いろんなものを見ていきたいな……隣でそっと思った。
大きな拍手に包まれた後、上級生からオーブフラワーのお返しがあり、上級生全員となるとさらに圧巻だった。
ザ・魔法使い、といった風貌の帽子を被った学園長の有難いお話があり……先日の獣人への暴行について名を濁して語り、学園内では身分を振りかざしてはならない、と二度三度お話があった。そうだよね。平民と貴族と従者もいるもの。
そのあとは、上級生の激しいチーム紹介があった。
学園には複数のチームが存在し、魔獣の討伐や剣や魔法の訓練、属性に特化したチーム等……上級生と行動を共にしたりもするらしい。
白熱のPR合戦の後、園庭に移動して立食でのパーティーが開催された。
先日の獣人暴行のことを思うと、レオンは紋章をつけてはいるが心配で、私から離れないように言った。
「はぁ~、色々なチームがありましたね。土属性活用も気になりますが、神学探求チームや読書も捨てがたいです」
「ソフィア様は好きなことがはっきりしていますね」
隣でスイーツを頬張りながら、どのチームがいいかと話すソフィアが微笑ましい。
「僕と一緒に神学探求チームへ入りませんか? ソフィア様」
「エリアス様! 神学も良いですよね。 光属性でなければ神殿で学ぶことができませんが、神殿へ出向いて特別に講義を受けることもあるというお話でしたね」
うっとりと話すソフィアに、うんうんと頷くエリアス。……講義の他に上級生との活動でも講義……本当に彼らは6歳なの?
「俺は魔法剣術応用チームが気になります!」
普段の言動からは信じられないほど、上品に立食をしながらテオが元気よく答えた。幼くとも貴族なんだなぁと実感する。
「「「テレシア様は、やはりあれですか」」」
3人が声を揃えてそういうと、隣に立つレオンが大きくため息をついた。
「はい、わたしはーー」
「ーーそこの獣人を連れたあなたーー」
背後から声をかけてきたのは、ベージュ色の髪を結い上げた上級生でーー
「一人の獣人にアクセサリーを2つも! とても凝ったデザイン。オーブの時から見ていたけれど、この人の多い会場でピッタリと隣に立つその様子……彼を大切にしているのが一目で分かったわ! 私たちのチームに入らない?」
「はい! 喜んで!」
先程チームアピールで見た上級生に声をかけられ、私は迷わず返事をした。
「獣人を愛でるチーム! 入らせてください!!」
ソフィアたちから生暖かい目で見られたのは、言うまでもない。
どうやらお披露目もこの立食も、チームの紹介と加入がメインのようで、オーブやオーブフラワーを見て属性を特定した生徒を勧誘したりと、よく見れば周りで新入生が複数の上級生に囲まれる、なんて現象も起きていた。
先程まで隣にいたはずのソフィア、エリアス、テオも、気付けば上級生たちと談笑している。
「テレシア様、私もそちらのチームへご一緒したいですわ」
ダニエルを連れたキャロリーヌが声をかけてきた。
「まぁ! 背の高い獣人さんですね! 私達のチームは獣人へ暴力を振るわないことが絶対条件です! そこは大丈夫ですか?」
キャロリーヌが不愉快そうに顔を歪めつつ頷くと、上級生の女の子が説明を続ける。
「私達のチームは、獣人の従者をお連れでない方も、貴族でも平民でも受け入れます。獣人を愛し、獣人を好きな気持ちがあればどなたでも参加可能です! 獣人へ暴力を振るう愛し方は、ごめんなさいお断りさせていただいています。獣人の所在調査、獣人商人の独自調査、獣人の歴史、獣人の由来などについて研究しています。獣人衣服の受注可能店も網羅していますので、ご紹介のみの利用をする生徒もいます。内容にご賛同頂けましたら是非参加をお待ちしています!」
なんと、学園にそんなチームが存在しているなんて。これは、王城で行われている獣人関係の法整備にかなり役立つのでは?
チラリと横目でレオンを見るも無表情、その奥にいるダニエルが、何やら考え込んでいるのが視界に入った。
「?」
私の視線に気付くと、ニヤリとこちらに向かって笑い、先輩の方を見た。
「失礼ながら従者の発言をお許しください」
「許しますの、ダニエル」
「キャロリーヌ様は、辺境の地で獣人を保護されている。きっとチームのお役に立てることと思います」
「まぁ! 辺境の地と言うと、もしやフリアンディーズ地方ではありませんか?」
「そうでございます。こちらは、フリアンディーズ辺境伯のご息女、キャロリーヌ様です。」
「キャロリーヌ・フリアンディーズと申しますの。よろしくお願いしますわ」
ばさりと扇子で口元を覆いながら話す様は、ちょっと高圧的だが先輩は気を悪くした様子もなく……
「私はモンド男爵家のライラよ! チーム長の補佐をしているわ! あなたたちの先輩には平民もいるけど、学園内、及び学園に起因する活動では立場を問わないの。その辺りも大丈夫なら、是非お二人ともチームに入っていただきたいわ!」
ニコッと笑ってモンド先輩はそう話した。
キャロリーヌがそんな活動をしていたなんて。ますます親近感が湧いた。
30
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
りんねに帰る
jigoq
ファンタジー
人間の魂を回収し、輪廻に乗せる仕事を担う下級天使のルシア。ある日、バディのフーガと魂の回収に向かった先で死神の振るう大鎌に殺されそうになる。それを庇ったフーガが殺されたかに思えた。しかし大鎌は寸前で止められる。その時ルシアの耳朶を打ったのは震える声。――死神は泣いていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる