上 下
36 / 66
本編

第35話「ピンクの元ビッチ着ぐるみに大興奮」

しおりを挟む
大きな頭に大きな身体。
ふわふわしていた髪はぼさぼさでその顔の半分以上を覆い隠していた。
ピンクの髪の毛からギロリと覗く瞳が鋭い眼光でこちらを見て―――

「答えなさいよ。どうなの?このわたしを見て、本当に可愛いと思ってるの?!」

ルルルルルルルルルルルル嬢!!!

絶対に逃がさない、そんな勢いでわたしの部屋に入り込んできたルル嬢は
血走った目でわたし達を睥睨するとまずレイチェル様に狙いを絞った。

「っひ!」

エイレーン様は気絶し、レイチェル様は震えている。けれどルル嬢は逃がさない。答えなさい、とレイチェル様に迫った。

「嘘もお世辞もいらないわ!正直に答えなさい!わたしを本当に可愛いと思ってる?!」

ルル嬢に眼前ぎりぎりまで迫られたレイチェル様はルル嬢の形相に恐れおののき首を振る。何度も何度も肯定の意味で首を縦に振り同じように隣で震えるわたしに視線で助けを求める。
ああ、ルル嬢は心を壊してしまっているのだ、と。
レイチェル様の瞳に一瞬憐れみの色が浮かんだように見えた。

このルル嬢の姿を見れば、誰もが感じることだろう。

あれほど可憐に振る舞っていたルル嬢が、身なりも気にせず夜着のままぼさぼさの髪を振り乱し血走った目でこんな質問をしてくるのだ。アレク様達を失ったショックで壊れてしまったのかもしれない、と。
誰しも思うはずだった。

確かに恐ろしくはある。


でも――


「あんたはどうなの?!あんたの目にわたしはどう見えてるの?!」

ルル嬢は舌打ちをして、レイチェル様からわたしへ視線を移した。
何故だろう、わたしにはルル嬢が泣いているように見えた。必死に、助けを求めているように見えた。
髪を振り乱し、血走った目で聞いてくるのは、誰かにわかってほしいと訴え叫んでいるように見えたのだ。

「答えなさい!!」

黙るわたしに苛立ったルル嬢の檄が飛ぶ。答えないわたしにレイチェル様も縋るような視線を向けてくる。
だけどわたしは考える。
考えて考えて考えて――

ルル嬢の言葉の意味を、その奥に隠された意味を、必死に考えた。

「ルル…様、は……」

「わたしは?!」

ルル嬢の両手がわたしの肩を掴み、さらに近づいた顔にもわたしは怖れなかった。

ルル嬢が、求めている答えはなんだ。
何と答えてほしくて、ルル嬢はここまで狂乱しているのか。


「ルル様…―――――わたくしの目にはあなたは、着ぐるみに……見えます」


「…何ですって?」

どさり、と音がして隣を見れば
レイチェル様まで気絶して倒れてしまっていた。2人は後で介抱するとして、今はルル嬢に向き合うことにする。

「あるいは―――…コスプレ、でしょうか?」










「鏡を見たらでしょ、今までは自分が一番可愛いって思ってたのに急に不気味に見えて驚いたのなんのって。」

「それで錯乱したのですね」

「そりゃそうでしょう?!よ?!この姿よ!?」

「わかります。」

あれからわたし達は、プロ侍女さんの帰りを待って気絶したエイレーン様とレイチェル様を託しルル嬢の部屋へ移動した。
ルル嬢の部屋は荒れ放題だったが今は関係ない。わたし達は部屋へ入るなり座ることもせず話し始めた。

「一体なんのドッキリよ!!」

ルル嬢が叫ぶ。

「どこにもカメラはないしいつまで経ってもこの姿のままだし!服を脱いで、みて、も……」

ごくん。
わたしは思わず、唾を飲み込んだ。

「ぬ、脱いでも…?」

ルル嬢がわたしを見つめる。

「……見たい?裸。」

わたしは力強く頷いた。

見たい。できれば、どころじゃなく本気で見たい。じっくり調べたい。くまなく調べたい。
チャックが本当にないのかどうか、服の上からではなく裸になってもらって確認したい。

「…いいわよ。」

「本当に?!」

「この身体に羞恥心なんてないわよ。」

「ぜひ。」

ルル嬢はそのまま、自分の服に手をかける。夜着姿のままだったのでボタンを外せばあっさりとその裸体が……

「…セクシーな下着ですわね」

「そう?持っている下着は全部こんなものよ。」

わたしの下着はいたってシンプルな機能性重視のものですが?

まさか着ぐるみが服を脱いだらいっちょこれから勝負しにいくぜというようなセクシーすぎる紐パンが出てくるとは思いませんでした。色はピンクなのにデザインは色気ムンムンなやつとか。脱いだらすごいんですと地でいくやつですね。毎日が勝負とか見習うべきですかね?

「このままでもいいでしょ。別に脱いでもいいけど。」

「いえそこまでは。…いややっぱり全部見たいかも。」

でもまずは背中から拝見。チャックがあるかくまなくチェック!

「チャックとかさー、あったらいいなって自分でも探したのよ。でも自分じゃ後ろまで上手く探せないでしょ。よく見てみて。」

ね?ある?どう?どうなの?!

ルル嬢が興奮気味に聞いてくる。

「ブラも外していいですか?」

「いいわよ。」

お言葉に甘えて、後ろホックをぱちりと外した。ルル嬢のお胸は大きい。ぷるるんっと弾ける音がしそうな勢いでブラが外れた。さすが二次元の夢を詰め込んでいるだけはある。

「どうなの?!あった…―――――」


ガチャリ


「ユーリア様!ご無事ですか?!」
「ユーリア様!大丈…――」
「お嬢様!!」

「……………え……?」
「「ユー、リア……様?」」
「………と」

なだれ込んできた3人と、

裸のルル嬢にそのルル嬢のブラを外しているわたし。

「……………」
「……………」
「……………」
「と……」


「とりあえず違うから……っっ!!!」


誤解!!
しおりを挟む
感想 631

あなたにおすすめの小説

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

処理中です...