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🐾消えたアイツらを探して🐾
🐾2 声変わりと立ち姿の印象の変化
しおりを挟む獣人の探索者達に囲われて育った僕には、住民票がなかった。
パーティの荷物持ち兼雑用係で、戦闘中にはサバイバルナイフを持っての撹乱役も担っていた。
それでも、メンバーとして認められず、探索者登録もしてなかった。
以前は赤葡萄色のクセ毛だった僕の髪は、何度も死んだり死にかけたりして、すっかり色が抜け落ち、限りなく白に近い薄黄緑色になっていて、赤葡萄から白葡萄に早変わりだ。
目の色も、葡萄色から薄い菫色に変わっていた。
〔何度か再構築する上で、情報が書き換わったか、暗いダンジョンの中で、色素が弱っちゃったのかな〕
元の僕を知っている人でも、パッと見や遠くからではわからないと思う。
顔つきは子供のそれから青年に、まわりの顔色を見てうつむき加減だった弱々しい姿は、ダンジョンで鍛えた筋肉と魔法を纏ってスッと立ち、色まで変わったのなら、殆ど別人と思われてもおかしくないのだ。
買い取り屋の目利きラルクも、最初は半信半疑だったらしいけど、僕の臭いと話し方に確信を持てたらしい。
「声まで変わっちまうんだもんな」
「人間には、声変わりってものがあるんだよ」
「なあに? 声変わりって?」
兎人のルピナスが、僕の顔を覗き見上げてくる。
「僕達獣相の少ない人間の男の子は、子供の頃は甲高い可愛い声をしていても、大人になる前に、男らしい低い声に変わるんだよ」
「声変わりって言うんだとさ」
獣人のラルクはほんの幼犬の頃はキャンキャン鳴いていたけれど、喋られるようになる頃には、今の声に近かったそうで、ドルガ達もそうだったらしい。
ルピナスの奢りで夕飯を軽く食べ、ラルクの店じまいに合わせて、お茶をいただいてる所だ。
ルピナスが怯えるので、ロスクラリスは僕の中で休んでいる。
ルピナスは魔法は使えないけど、魔力を溜めて身に纏って防禦したり、手に集めて魔力玉を投げつけたりは出来る。
魔力を身に纏っている時だけ、ロスクラリスが見えるらしく、最初は僕に憑いている幽霊だと思ってかなり怯えていた。
幽霊じゃないと諭しても、ロスクラリスの神気は隠せないので、やはり当てられて怯えるのだ。
「ウル。次の探索には連れて行ってくれる?」
ルピナスは、魔物に襲われていたのを助けた僕を、英雄か何かに準えて特別視している節がある。
彼女は、冬になっても毛色を変えることが出来ないため、一族からは出来損ないと貶まれ、獣人の殆どは彼女を純粋な兎人──獣人族と認めていなかった。
そんな、誰も助けてくれないから、魔物に襲われて食べられる運命を諦めていたルピナスが、偶々通りがかって助けた僕を神聖視するのは解らないでもない。
でも、僕は、実際には魔法だって使えるようになったばかりだし、自分を守るので精一杯の英雄にはほど遠いただの人間だ。
懐いてくれるのは嬉しくない訳ではないけれど、正直扱いに困る。
「ルピナスは、まだ探索者登録もしてないだろ。無理を言ってウルを困らせちゃいかんな」
見かねたラルクがやんわりと断りを入れてくれる。
「未成年や探索者資格のない者を同行して、大怪我をさせたり、最悪死なせてしまったりしたら、ウルが罰せられるし、探索者資格を取り消されてしまうかもしれん。そうなったら、ルピナスも悲しいだろ?」
「⋯⋯うん」
納得は出来ていない感じだったけど、僕が探索者資格を剥奪されるとか罰せられると聞かされて、渋々了承した。
僕を置き去り(実際は生贄として祭壇の火に焼べた)にしたことで、ドルガ達は探索者資格を停止されたらしい。
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