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🐾始まった魔法の特訓とまだ戻れない地上🐾
🐾8 隠し部屋
しおりを挟む結局、僕は地上に出られるようになるまで、半年近くかかった。
その内の半分以上が、魔力の開発と魔法の特訓、体力作りの筋トレ、食料確保のための命懸けの狩りと、大怪我による寝込みだった。
戦士や弓士などの技能も持っていない、ちょっと人より魔力はあるけど魔法を使い慣れてない、体も鍛えてない14歳の子供。
その僕が、誰のサポートも受けずに、一人で大型ダンジョンを踏破──それも最下層から逆に昇る──という無謀さ。
成長の早い種族の獣人なら14歳は働き盛りで壮年の域だけど、成人するまでに20年かかる人間の僕はまだまだ成長途中の子供だ。
〔そろそろ、外に出てもいいかもね〕
ロスクラリスのお墨付きを貰った僕は、隠し部屋に広げた日用品の数々を手に触れることで順にポケットにしまっていく。
〔その君が最初から持ってた唯一の魔法、便利だね〕
「まあね。今の所容量いっぱいにはなってないけど、その内入りきらなくなるのかな」
〔⋯⋯ボクの見たところ、君の魔力が増えれば増えるほど容量も拡がるみたいだから、成長と共に持てる量も増えるってやつじゃない? 溢れ出すまでは大丈夫でしょ〕
絨毯や古文書、たくさんの古びた剣、青銅の壺や真鍮製の盛皿、寝具、積み上がった装飾品。
実は、この祭壇のある隠し部屋以外にも隠し部屋はあって、殆どが手付かずだった。
どうやら、扉を開くには条件があって、一般的な魔法での封印や鍵はない。
ただ、僕は、ロスクラリスと魂の一部とか魔力や精神とかが同調しているせいか、フリーパスなのだ。
最下層まで降りる時に、トゥグリが幾つか隠し部屋を見つけたのだけど、どこの部屋も開かなかったし、鍵や封印魔法などは施されてなかった。
トゥグリいわく、古代の魔法で魔術と違い、それぞれに設定された条件を満たせば開く法則の魔法が施されていて、無理矢理開くことが出来るのは、大精霊や神などの、理を動かせるほどの力を持ったモノくらいだと言っていた。
で、神さまである。
*******
盗賊鼠が、僕が斃した猪怪人の残した魔石を抱えて走り去った。
まあ、1個くらいいいんだけど、どこへ持っていくのか、なんとなく興味をひかれて、後をつけた。
何度か角を曲がっていく盗賊鼠。けっこう足が速い。
「あ、この辺りって⋯⋯」
来る時に、トゥグリが隠し部屋を見つけた辺りじゃないのかな。
マッピングしたものは、ドルガ達が持ち去っていたので記憶の限り、だけど。見覚えのある岩壁。
その石の裂け目に、盗賊鼠は潜り込んでしまった。
〔追いつけなかったね〕
「いや、あの魔石が惜しくて追っていた訳では。確かこの辺に、トゥグリが隠し部屋を見つけたんだったと思うんだ」
盗賊鼠が潜り込んだ隙間の辺りをこんこんと裏拳で叩いていく。
〔隠し部屋? もしかして、ボクの祭壇があったところみたいな?〕
「中は見れなかったからね、わからないけど、似たような仕掛けなんじゃないかって言ってたんだ」
もっとよく見ようと、〘明光〙を引き寄せようとしたら、霊体のロスクラリスはスウッと岩の中に溶け染みるように入っていった。
ええっ? そ、そうか、霊体だから壁抜けも出来るか。
カチッ
燧石を金属片にぶつけるような音がした後、ゴルゴルと重いものが転がるような音と共に、岩壁の一部が奥に引っ込んでいく。
中には、盗賊鼠の集めたお宝が山のように積まれていた。
魔物の魔石や核、何かの魔法がかかってそうな、魔石の填まったナイフに、どこかの探索者のドッグタグ。
誰のものだろう、確認しようと手を伸ばしたら、
〔ダメだよ! 危ない!!〕
ロスクラリスの警告の言葉は、二通りの意味を持っていた。
一つは、お宝を盗られまいとして飛びかかってくる盗賊鼠。
それも一匹や二匹じゃなかった。
習ったばかりの魔法を使って、退治する。
自分を中心に全方向に〘洗浄一閃〙の強化版を放つ。
もちろん、攻撃魔法として使うために〘安定〙と〘強化増幅〙で強化してある。
すべての盗賊鼠は小指の爪より小さい魔石をパラパラと落として、塵となった。
そして、もうひとつの警告は──
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