上 下
27 / 38
🐾始まった魔法の特訓とまだ戻れない地上🐾

🐾8 隠し部屋

しおりを挟む


 結局、僕は地上に出られるようになるまで、半年近くかかった。

 その内の半分以上が、魔力の開発と魔法の特訓、体力作りの筋トレ、食料確保のための命懸けの狩りと、大怪我による寝込みだった。


 戦士や弓士などの技能スキルも持っていない、ちょっと人より魔力はあるけど魔法を使い慣れてない、体も鍛えてない14歳の子供。

 その僕が、誰のサポートも受けずに、一人で大型ダンジョンを踏破──それも最下層から逆に昇る──という無謀さ。

 成長の早い種族の獣人なら14歳は働き盛りで壮年の域だけど、成人するまでに20年かかる人間の僕はまだまだ成長途中の子供だ。

〔そろそろ、外に出てもいいかもね〕

 ロスクラリスのお墨付きを貰った僕は、隠し部屋に広げた日用品の数々を手に触れることで順にポケット • • • • にしまっていく。

〔その君が最初から持ってた唯一の魔法、便利だね〕
「まあね。今の所容量いっぱいにはなってないけど、その内入りきらなくなるのかな」

〔⋯⋯ボクの見たところ、君の魔力が増えれば増えるほど容量も拡がるみたいだから、成長と共に持てる量も増えるってやつじゃない? 溢れ出すまでは大丈夫でしょ〕

 絨毯や古文書、たくさんの古びた剣、青銅の壺や真鍮製の盛皿、寝具、積み上がった装飾品。

 実は、この祭壇のある隠し部屋以外にも隠し部屋はあって、殆どが手付かずだった。

 どうやら、扉を開くには条件があって、一般的な魔法での封印や鍵はない。

 ただ、僕は、ロスクラリスと魂の一部とか魔力や精神とかが同調しているせいか、フリーパスなのだ。

 最下層まで降りる時に、トゥグリが幾つか隠し部屋を見つけたのだけど、どこの部屋も開かなかったし、鍵や封印魔法などは施されてなかった。

 トゥグリいわく、古代の魔 • で魔  • と違い、それぞれに設定された条件を満たせば開く法則の魔法が施されていて、無理矢理開くことが出来るのは、大精霊や神などの、ことわりを動かせるほどの力を持ったモノくらいだと言っていた。

 で、神さまロスクラリスである。


*******



 盗賊鼠ロバーラットが、僕が斃した猪怪人ワーボアの残した魔石を抱えて走り去った。

 まあ、1個くらいいいんだけど、どこへ持っていくのか、なんとなく興味をひかれて、後をつけた。

 何度か角を曲がっていく盗賊鼠ロバーラット。けっこう足が速い。

「あ、この辺りって⋯⋯」

 来る時に、トゥグリが隠し部屋を見つけた辺りじゃないのかな。
 マッピングしたものは、ドルガ達が持ち去っていたので記憶の限り、だけど。見覚えのある岩壁。

 その石の裂け目に、盗賊鼠ロバーラットは潜り込んでしまった。

〔追いつけなかったね〕
「いや、あの魔石が惜しくて追っていた訳では。確かこの辺に、トゥグリが隠し部屋を見つけたんだったと思うんだ」

 盗賊鼠ロバーラットが潜り込んだ隙間の辺りをこんこんと裏拳で叩いていく。

〔隠し部屋? もしかして、ボクの祭壇があったところみたいな?〕
「中は見れなかったからね、わからないけど、似たような仕掛けなんじゃないかって言ってたんだ」

 もっとよく見ようと、〘明光〙 ライティング を引き寄せようとしたら、霊体のロスクラリスはスウッと岩の中に溶け染みるように入っていった。

 ええっ? そ、そうか、霊体だから壁抜けも出来るか。

 カチッ

 燧石ひうちいしを金属片にぶつけるような音がした後、ゴルゴルと重いものが転がるような音と共に、岩壁の一部が奥に引っ込んでいく。

 中には、盗賊鼠ロバーラットの集めたお宝が山のように積まれていた。

 魔物の魔石や核、何かの魔法がかかってそうな、魔石の填まったナイフに、どこかの探索者ハンターのドッグタグ。
 誰のものだろう、確認しようと手を伸ばしたら、

〔ダメだよ! 危ない!!〕

 ロスクラリスの警告の言葉は、二通りの意味を持っていた。

 一つは、お宝を盗られまいとして飛びかかってくる盗賊鼠ロバーラット
 それも一匹や二匹じゃなかった。

 習ったばかりの魔法を使って、退治する。

 自分を中心に全方向に〘洗浄一閃クリーンアップ〙の強化版を放つ。
 もちろん、攻撃魔法として使うために〘安定スタビリス〙と〘強化増幅アンプリフィカレ〙で強化してある。

 すべての盗賊鼠ロバーラットは小指の爪より小さい魔石をパラパラと落として、チリとなった。

 そして、もうひとつの警告は──




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人狼という職業を与えられた僕は死にたくないので全滅エンド目指します。

ヒロ三等兵
ファンタジー
【人狼ゲームxファンタジー】のダンジョン攻略のお話です。処刑対象の【人狼】にされた僕(人吉 拓郎)は、処刑を回避し元の世界に帰還する為に奮闘する。 小説家になろう様 にも、同時投稿を行っています。 7:00 投稿 と 17:00 投稿 です。 全57話 9/1完結。 ※1話3000字程度 タイトルの冒頭『Dead or @Live』を外しました。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...