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🐾始まった魔法の特訓とまだ戻れない地上🐾
🐾5 判断ミス
しおりを挟む弱い魔物ばかりだからと、一度に出てくる量に辟易しつつも、そこには油断があった。
魔物には、属性があるものが殆どである。
属性は多岐にわたり、獣、鳥、蟲、植物、鉱物、霊体でも妖魔から神族まで、多くあるが、その更に細かく分類することも出来るし、何より、どの形態の魔物でもたいてい共通する属性が、元素。
所謂、火 ← 水 ← 土 ← 風 ← 火と言った性質のもの。それと光と影。
単一属性から複属性のものもいる。
僕が、ロスクラリスに習った魔法は──
〘明光〙〘洗浄一閃〙〘転移の扉〙〘癒しの光〙〘陰影の帳〙(隠遁の魔法)
光属性のものばかり。因みに〘陰影の帳〙は光と闇の二属性魔法である。
元々使えたのは基礎レベルの生活魔法。
【点火】【注水】【送風】
それと僕は勝手にポケットと呼んでいる収納魔法。これは特殊で、一般的には次元倉庫と呼ばれる空間魔法だ。
そして、僕の目の前に現れたのは、上層には居ないはずのヘルハウンドが三頭。
属性は相性があまり良くなかった。
強化版〘洗浄一閃〙でその身を灼き尽くそうにも、イヌ科だけあって動きは速いし、身の一部や毛を灼いてもたいしたダメージにはならず、全身を覆うほど大きい火炎を出して高温で灼くには僕の魔力では火力不足で、まして、ヘルハウンドの吐く火は、光と熱の魔法では止める事は出来なかった。
火が吹き消されるほど強い風も起こせないので、【送風】では酸素を送って却って火力が上がる始末。
【注水】をコップに注ぐのではなく、ヘルハウンドに向けて投げつけても向こうの熱の方が強くて一瞬で蒸発し、むしろ一〇〇℃近い蒸気が籠もって、盗賊鼠がとばちりで煮えてしまったのは偶然で良かったが、危うく僕まで火傷するところだった。
ここまで来たらおわかりだろう。そう、僕には、ヘルハウンドを斃す手段がないのである。
思わぬ強敵に慌てて、前述のように、水蒸気を発生させてしまったり、効果なかったり。
焦った僕は、ロスクラリスに習った中で一番強い魔法〘洗浄一閃〙を、〘安定〙と〘強化増幅〙で強化して、攻撃魔法として使おうとした。
結果、ヘルハウンドの吐く火の勢いを強めてしまっただけでなく、呼吸が出来ないほどの大火傷を全身に負ってしまった。
しかも、今度のは、火の精霊による火の気の霊気で灼かれたのではなく、魔力と妖力の籠もった物理的な火炎放射で丸焦げである。
〘⋯⋯!!〙
ロスクラリスが、僕をなんと呼んだのかは聴き取れなかった。名前を呼んだのではなかったのかもしれない。
暗いダンジョンの中で、すべてが白くなるほどの強烈な光が迸り、光が収まって暗くなっていくのを見ながら、僕の意識は闇の淵へと落ちていった。
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