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𓅊ダンジョン最奥の祭壇にて𓅽
🎭3 供物の奉納完了と殺戮の終わり
しおりを挟む魔族による殺戮の祭りも酣、魔獣の殆どは斃せたものの、魔族は増える一方。
魔族の放つ瘴気に圧されて縮んでいく精霊達は、耐えられなくなったのか祭壇下の炉に逃げ帰った。
「なあ、トゥグリ。その古代神とやらは邪神なのか?」
「どうして? なぜそんなことを訊くのかしら?」
血塗れで倒れているドルガを支えながら魔獣を屠りつつ、豹人が私を見上げる。
「神の力に惹かれてやって来るのが魔族や魔獣ばかりじゃねぇか」
「あら。眷属に魔族や魔獣がいれば、邪神なの?」
「だって、そうだろ?」
「どうかしら」
魔族や魔獣──ヒトに敵対する勢力を眷属に持っていたら、邪神とは、ヒトはなんて勝手なのだろう。
「あなた達にとって、都合の悪い相手を従えていたら邪神という発想がいかにもヒトらしいわね」
「お前は違うのか?」
「⋯⋯お喋りはここまでよ」
風使いが頑張っているみたいだけど、片腕では両刃の長棹を振り回せず、痛みで集中力も切れやすいのかそもそも魔族に魔法で勝てるはずもなく。
「それじゃ、死なないように、気をつけて帰ってね?」
古代神に捧げられたボウヤの身体が、細かい粒子になって分解され、跡形もなくなる。
供物として神がボウヤを受けとった証。
「お、おい、消し炭もなくなっちまったぞ?」
「神がボウヤを供物として受けとったからよ。後は、この御霊を収めた金時計を主に届ければ、依頼は達成よ。ここにある宝物はみんなあなた達で分けていいわよ。じゃあね?」
「あ、おい!! 待てよ」
一応、このダンジョンのある一帯が魔界や冥府と繋がったり大発生したりしたらさすがにちょっと寝覚めも悪いから──
精霊や妖魔を召喚するのと逆の要領でこの場にいる魔族達を、空間制御魔法を解くのと同時に元いた世界へ送還してやる。
「きっ、消えた!?」
「これは、ここまで一緒に来てくれた事と、条件クリアのための生贄を提供してくれた事へのお礼よ。じゃあね?」
用は済んだのだ。この場に長居する必要はない。
魔族も送還し、空間が歪むのを正常に保つための制御魔法も必要のなくなった今、私の魔法は自由に使える。
魔族の去った冷たい石壁の隠し部屋の床に、四重の円が描かれている。
外縁と2つ目の円の間にあるのはこの場所の座標を固定し、魔法を維持するためのルーン。
その内側には、複雑な転移魔法を簡単に少しの魔力で行うための、緻密な計算による魔法陣。
一番内側の円との間にあるルーンは、少々面倒くさい定義が施されているけれど、私の手にかかればこんな物、児戯にも等しいイタズラ書きと化す。
一部を自分の都合のいいように書き換え、強引に発動させる。
「その魔法陣はなんなんだ?」
「⋯⋯たぶん、転移魔法。古典文学過ぎて全文は理解できないが」
目を顰めて魔法陣の解析を試みようとする片腕のドラゴニュート。
「風使い正解よ。本当は、ちょっと厄介なところに飛ばされるみたいだけど、私が書き換えたわ。主が待っていらっしゃる街まで一瞬よ。ふふふ。じゃあね」
「おい、こら! トゥグリ。最後まで面倒見ろや、勝手に一人で戦線離脱してんじゃねぇ」
豹人の悲鳴にも似た怒声が背中に当たるけれど、構わず魔法陣の中心に降り立った。
魔法陣から放たれる、ルーンを帯びた光に包まれ、私は、彼らを置いて、主の金時計を持って帰路についた──
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