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🐾ダンジョンと仲間とボクと🐾
🐾6 役割と価値
しおりを挟む──マジックバッグ
見た目以上に物が入り、質量に関係なく重量もかからない、空間拡張と重量不干渉の魔法がかかった特殊なアイテムで、持っている人は少ないという。
「だから、荷物持ちとしても、お前である必要はないんだ」
「だったら、戦闘が出来て鳥人ならではの能力も持ってるトゥグリの方がいいだろ?」
「お前は、金と面倒がかかりすぎるんだよ」
言い分としてはずいぶんなものだし、それじゃ今まではなんだったの? って言いたい。
何より、こんな所──クエストで入ったダンジョンの最下層、ダンジョンボスが居る場所の近くで言われるなんて!
「ま、まあ、その話は帰って聞くよ。今は依頼の⋯⋯」
「いいや。お前はここまでだ」
「え?」
「今まで⋯⋯まあ、面倒見てきたし、色々と思うところもあるけどな? 金もかかったし、そのリターンも見込めねぇし」
「どういう事?」
ここまで? じゃあ、その先はどうって事なの?
僕は、今まで頼もしかった兄のような仲間達が急に恐ろしくなって、震える足に力を入れるけど、震えは止まらなくて、今にも崩れそうになる。
こんな、ランタンがないと何も見えない日の当たらない地下世界──湿った空気と岩肌、滲み出る汚水と淀んだ瘴気の漂う洞窟──で、ここまでってどういう事なのか、考えるのも怖い。
「依頼主のご要望なんだよ」
「ダンジョンの最下層に眠る古代の魔物に生贄を捧げて、宝物を持ち帰れってな」
その『生贄』が、僕って事?
「街の知らねぇガキを掠って来て火に焼べる訳にもいかねぇだろ? まず、ガキを連れてここまで来るのも大変じゃねぇか」
「お前がちょうどいいんだよ」
「ガキと言うには少々トウが立ってるがな」
「いや、14~15って言やぁ、俺らじゃ結構中年にさしかかりだぜぇ?」
そりゃあ、たった二年で身体はほぼ大人になって、肉体的にも一番充実した年齢が5歳~10歳の獣人達と一緒にしないでよ。
街の図書館で調べたんだ。
僕達人間は、成長するのは20歳を超えるまでで14歳はまだ未成年なんだって、見たまま子供なんだって。
どうしてみんなはさっさと大人になるのに、僕だけいつまでも子供なんだろうって、もしかしてこれで大人の身体なんだろうかって⋯⋯悩んだんだ。
「まあ、見た目はガキんちょだし、力もねぇし、変声期も繁殖期もまだなんだから構わねぇダロ」
いや、人間には繁殖期はないから。それも調べたんだ。
「とにかく、ちょうどいいんだよ。無垢の『子供』で俺らとダンジョンに潜れる相手に心当たりなんざ、他にねぇからな」
「その依頼のために、今まで仲間だった人を生贄に出来るの? 僕のこと、少しも惜しいとか悲しいとか思わないの?」
「さぁてな?」
「丁度いいからな?」
「仲間ったって、正式に協会に登録してない雑用係だろ?」
確かに、僕は、探索者として探索者協会に登録していないし、どの探索者達よりも能力値は低いだろう。
戦闘面では、攪乱のために数に混ざって、最低限死なないようにすることしか出来ない。
でも、キャンプではテントを張ったり、食事を用意したり、寝る前にみんなの装備の点検をしたり、翌朝総て片付けて準備をしたり、みんなが斃すことに腐心して有効利用や換金性を気にしないので、代わりに解体して、食肉と素材にしたり、それなりに役に立っていると思っていたのに⋯⋯!!
「ま、そういう訳だから、悪いな」
本当に悪いと思っているのか判らない、軽い感じのひと言で、僕は、生贄の祭壇で、火に焼べられた──
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