3 / 38
🐾ダンジョンと仲間とボクと🐾
🐾2 メンバーとボクの力関係
しおりを挟むラルクが疑うならよそへ持って行けと言ってくれたおかげかみんなは「そこまで言うならいいけどよ」と、納得した訳じゃなくてもこの場はおさめてくれた。
銀貨三枚分の小銀貨と銅貨を、ゲイル達三人が殆どを分け、2~3日軽食を食べられるくらいの小銭を袋に残して返してくれた。
「まあ、仕留めたのはゲイルの氷雪魔法だからな、お前の分け前は、解体手数料と売却交渉分だ。もっと欲しけりゃ、高く買い取ってもらいな」
豹の獣人ペイルは、上半身より長い太めの尾を揺らして去って行った。あの尾は自慢らしく、実際、女の子にも人気がある。
ドラゴニュートと呼ばれる爬虫人のゲイルは、二足歩行する蜥蜴か鰐のような姿で、風と水の魔法と槍を使い分ける戦闘の達人である。
爬虫類や両生類の獣人は、グロテスクな外見か、竜族のように神々しいかのどちらかで、特にゲイルは、鋼のような光沢のある鱗が鎧を纏ったかのような重厚感ある姿なのに素速い動きが出来る、神の御使いか戦神の如く格好いい戦士だ。
僕の襟を掴んで吊り上げていた虎人のドルガは、この中では古株で、後頭部から肩にかけてもふっとしていて、厚い毛皮を通しても判る上腕や胸の筋肉は厚く盛り上がり、ひょろっとした僕には羨ましい限りである。
僕は、立派な鬣もお髭もないしふさふさの尻尾もない。
走るのだって殆どの種族より遅いし、殆どの種族より力もない。
魔力値も低くなく内包魔力は、あるのに魔法は殆ど使えない。
握力や腕力、肩も背筋もそれこそ全身の筋力が低いから、彼ら獣人の使う武器も使い熟せない。
つまり、僕はモテなかった。どんな種族の女の子にも。
もっと子供の頃は魔法もまったく使えなかったし、力も今よりもなくて、全身禿げた喋る猿人の仲間なんじゃないのかと言われていた。
獣相もなく、毛を刈られた赤裸のサルとイジられた事もあったけど、僕を養ってくれた探索者達は
「お前は、今は少なくなってしまった人間だろう。この辺りじゃ見かけないが、絶滅したとは聞いてないし、お前の親だっているはずだろ? いつか、探しに行けばいいさ」
と、笑って可愛がってくれていた。
多産で繁殖力の強い獣人が最も多く、もふもふ獣人か爬虫人、またはそれらとの半人ばかりで、人間は非常に少なくなってしまったらしい。
僕は、その稀になってしまった『人間』の子供──
❈❈❈❈❈❈❈
青矮性翼竜の代金を節約してもそろそろ食べ尽くしそうな頃、虎人のドルガから声をかけられた。
「次の依頼はダンジョンだ。何日か潜ることになるが、魔物が多めに棲む層があるらしいから、準備は余裕を見てくれ。大丈夫か?」
陽の差さない地下迷宮は、松明やカンテラなど灯りも必要だし、食糧も現地調達出来るか判らない。
荷物も多くなりそうだけど、なるべくコンパクトに纏めなきゃ。
「何日かって、どれくらいなの?」
「現地まで馬車で3日、中は正直判らねぇな」
「何年か前に、虎人とドラゴニュート、熊人の3名で最下層まで五日、帰りはダンジョンコアのワープでひとっ飛びってきいたぞ?」
今のリーダーは虎人のドルガで、依頼を選ぶのも彼が多く、女の子にモテる人当たりのいい豹人のペイルが情報を仕入れてきたり、下調べしたりする。
「熊人ほど膂力はないがスピードはこっちのが上だし、ゲイルの魔法もある。そう変わらないだろう」
「わかったよ。往復馬車で6日間、中は5日~7日間の予定で余裕を持たせて準備するよ」
「ああ、今回も鳥人のトゥグリを連れていくからな」
「ええ? ダンジョンなのに、大丈夫なの?」
「本人が行くっつってんだ、大丈夫なんだろ? そもそもこの話を持ってきたのはアイツなんだ」
少し前から仲間に加わった、ハーピイよりかは人間かもね? な姿で雌の鷹の鳥人 トゥグリ。
彼女は、鳥人ならではの高い位置から急降下で爆発的な攻撃力を出すバックアタッカーで、猛禽類の視力と観察力で斥候も兼ねている。
天井のある暗い地下迷宮で、その役割は果たせるのだろうか?
多少の不安はあるものの、本人が一番よく解っているのだろうから、敢えて聞き直したりはしないで、準備を始めることにした。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
人狼という職業を与えられた僕は死にたくないので全滅エンド目指します。
ヒロ三等兵
ファンタジー
【人狼ゲームxファンタジー】のダンジョン攻略のお話です。処刑対象の【人狼】にされた僕(人吉 拓郎)は、処刑を回避し元の世界に帰還する為に奮闘する。
小説家になろう様 にも、同時投稿を行っています。
7:00 投稿 と 17:00 投稿 です。 全57話 9/1完結。
※1話3000字程度 タイトルの冒頭『Dead or @Live』を外しました。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)
浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。
運命のまま彼女は命を落とす。
だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる