上 下
48 / 49
第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です

46 大喝一声 レベル2

しおりを挟む
     💰

 臍の辺りまでシャツの前を空け、ズボンも脹ら脛あたりまでの長さにして、動きやすさを優先しているのか、ゴワゴワの毛を見せて威圧感を出してるのか、6人とも似たような格好だった。

 チンピラ感満載。どこの世界でも同じなんやな。
 畜生、胸厚いなぁ、腕ふっといなぁ。羨ましくなんかないぞ、暑苦しい。ちょっとだけなんだからな。

「結局、羨ましいんですか?」
ヘソまで胸毛がギャランドゥとか、臑毛すねげゴワゴワはまったく羨ましくないけど、肉付きよくて強そうなのと身長はちょっとだけ⋯⋯て、羨ましくないって言ってるやん」

 生温かい目で見るなぁ!! ⋯⋯いいよな、ヨナスさんはまだ18歳でもすでに一八〇㎝近く身長あるんやから。
 俺かって成り行きで先日が誕生日の17歳って事になってしもたけど、本当はこの秋で18歳になるんやで? なのに一七二㎝しかないんや⋯⋯

 あのニーチャン達、一九〇ないか?

「よぉ、オニーチャン、そこの可愛かわい子ちゃんと財布を置いて行きな」
「可愛い子ちゃんってなんだよ、俺は男だぞ」
「男でも大丈夫」
「なっ、何が!?」

 怖いこと言うなぁ!!

 俺、なんでこの世界に来てからずっとヒロインみたいな扱いやねん!? 生まれて18年足らずの間、しっかり男やったんやで?

「聞き入れられない要求ですね。あなた達こそ、他人の金品をアテにするような生活は改めて、真っ当に働き、日々汗水流して精進なさい」

 いやぁ、そんなこと言って聞くようならとうに普通に暮らしてるだろうし、そのお説教は、却って逆上させるだけじゃないかな?

「うぅるせぇ!! いいから黙って財布と僕ちゃんを置いてどっか行っちまいな」

 ほら。
 ヨナスさん、風紀委員長ルーカスさん化してないか? 師匠と従騎士スクワイアって、親子化すんのかな。当人達は三つしか歳違わんけど。

 チンピラ感極まるごろつき達は、刃の長いナイフや棍棒、小さな手斧など、テレビゲームで出て来る最初の武器的な物を構えた。

「ほらほら。可愛い子ちゃんは、無傷で欲しいし、騒ぎは起こしたくないんだよ、俺達」
「俺達、フェミニストだからさあ?」
「⋯⋯フェミニストって意味、知ってる? てか、俺は男だから」
可愛かわい子ちゃん、おべべ脱いでみな? 本当に男かどうか確認してやるぜぇ?」
「もぉ、こんなんばっか。ヨナスさん、俺、男に見えますよね!?」

 返事がないんですけど。しっかし、品がないなぁ。エディさんがお上品に思えて来たな。

「女性には見えませんが、中性っぽい子供に見え⋯⋯あ、いえ、ちゃんと17歳の少年だと知ってますよ」
「それを言うなら青年。ま、いいけど。人種差で子供に見えるのは知ってるし」

 ヨナスさんは武器を持っていないけど、一応警備隊の従騎士スクワイアだけに、俺の前に立って、守ろうとしてくれる。うん、この人も俺のことヒロイン扱いかいな。

 男達のひとりが、威嚇の意味か、長いステッキみたいな棒を振り回して近づいてくる。

 横から別のチンピラ君がナイフでヨナスさんを威嚇してくるけど、そこはさすが従騎士スクワイア、半身を捻るだけで避け、手首を取ったかと思うと捻り上げ、ナイフを奪った。

「わあ、さすが、警備隊員だ。格好いいですね、ヨナスさん」
「ありがとうございます」

 でも、ナイフを奪ったことで、奪われたチンピラ君は逆上し、まわりも攻撃性が強くなる。

「オニーサン、格好いいじゃねぇか。余裕こいてる場合じゃねぇぜ? 武器を奪ったくらいでいい気になるな。こっちぁ、まだまだ6人居るんだからな?」

 包囲の輪が縮まってくるし、威嚇で振り回してた棍棒がヨナスさんを打ち据えようとしてくる。

 ヨナスさんは奪ったナイフのヒルト部分で受け止め、絡め取るようにしてこれも奪い取り、「セイヤさん、棍のスキルを得たんですよね」と投げてよこした。

 受け取って、構える。

 しばらくは、棍で寄って来た男達を打って近寄らせないようにしていたけれど、斧を持ったやつに、棍を三つくらいに切り分けられリレーのバトンぐらいの短さにされてしまう。
 勿体ねぇな。そして、俺には、防御の手段がなくなってしまう。

 ヨナスさんひとりでは、自身と俺を護りながら武器馴れしたチンピラ君達を捌ききれない。

 エディさん~!! 早く戻って来てくれぇ。

 畜生! なんとかなんねぇのか。

 周りの人達は、こいつらが武器を出したあたりで、蜘蛛の子を散らすように逃げている。
 コイツらをなんとかしてくれとか言わんからせめて、町の警邏隊に報せてくれ。

 こういう時、ラノベや漫画だと、力が欲しいか?とかって謎の声が聴こえて、コイツらをどうにかする力が芽生えるんだけどなぁ。

「あの、醜鬼ゴブリンを追っ払った技能スキル使えへんかな」
「ああ、アレは凄かったですねぇ」

 ヨナスさんは、まだ今のところ体力は続きそうだったけど、6人居る向こうが有利だ。

 あの技能スキル、なんて言うんだっけか。

「えっと、固有能力ユニークスキル【守銭奴】のアクティブ系防御技? の祖父じいさんの大喝⋯⋯大きな喝?一声ってどうやって使うんだっけ?」

〘受領出来ます。固有能力ユニークスキル【守銭奴】アクティブ系防衛機能・祖父の大喝一声 レベル1、発動しますか?〙

 あの、女神の声に似てるけどちょっと違うアナウンスが脳内に響く。レベル1って確か、数秒間硬直してその後一斉に逃げた奴だよな。

「レベル2とか3とか出来るの?」
〘今のカネナリのランクでは、レベル2までです。レベル2にしますか?〙

 まあ、祖父じいさんの一喝程度で人死には出ないやろ。

「よし、祖父じいさんの大喝一声、レベル2で!!」

〘受領しました。固有能力ユニークスキル【守銭奴】アクティブ系防衛機能・祖父の大喝一声 レベル2、発動します。初回のみ、レベルアップにつき料金は倍額になります〙

「は? 料金?」

 そういや、前回は、初回特典で無料とか言ってたっけか?

「え? ちょ、待っ」

 目の前に空間の歪みと景色の揺らぎが見え、今度は剣道場っぽい景色が現れる。
 その真ん中に、防具は着用してない、胴着姿の祖父じいさんが立っていて、チンピラ君達を見るなり、目を般若のようにかっぴらく。

「この愚か者どもめが、修行積んで明後日来るがよいわ!! 喝ー!!くぁあつっ 

 前回同様、チンピラ君達はまるで動画再生の一時停止のように、ピタッと固まる。
 2人は腰を抜かしてへたり込み、1人は痙攣を起こしてぶっ倒れた。
 3人は固まったまま動けない。

 それは数秒経っても変わらなかった。

固有能力ユニークスキル【守銭奴】アクティブ系防衛機能・祖父の大喝一声 レベル2、正常に発動しました。追加効果行動麻痺発動率66.6% 追加料金発生なし 総額12万ギル

「はぁぁぁ!? じゅっ じゅうにまんꩢ!?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ダンマス(異端者)

AN@RCHY
ファンタジー
 幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。  元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。  人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!  地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。  戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。  始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。  小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。  向こうの小説を多少修正して投稿しています。  修正をかけながらなので更新ペースは不明です。

処理中です...