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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です
41 魔力切れと補填
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それにしても、エディさん、いい加減、俺の頭から降りてくれないかな。
ずっと、肩にのしかかり、頭を抱えて離してくれないのだ。
「エアハルト。いつまでセイヤさんを弄っているのですか。失礼でしょう、そろそろ離れなさい」
察してくれたのか、ルーカスさんが窘めるけど、今度は頭の上に顎を乗せて、後ろから羽交い締めのようにして来た。
「疲れたんだよー。醜鬼どもにやられた味方の回復で、もうすぐ魔力切れ起こしそうなの」
そんなに使ったのかと振り返ると、あちこちに倒れていた第5隊の騎士や志願兵達は全員起き上がっていて、本隊の正騎士達に手を借りて歩き出していた。
「そうでしたか。それはそれ、これはこれ。セイヤさんにのしかかる理由にはならないでしょう?」
もっと言ってやってよ、ルーカスさん。
「いや、それがさぁ、可愛い子ちゃんにくっつくと癒されるって言うかぁ、回復する気がするのよね~、不思議」
「不思議、じゃありませんよ。いいから離れなさ⋯⋯い?」
エディさんと俺の肩を摑んで引き離そうとしたルーカスさんが止まった。
「え?」
「な?」
不思議そうな表情をするルーカスさんと、ドヤ顔のエディさん。
「ああ。召喚術を使った後で、溢れる魔力がダダ漏れしているんですね。セイヤさん、気を整えなさい。魔力が勿体ないですよ」
「いーじゃん。俺が回復するんだから。ちゃんと全部受け止めるからね」
よくわからないけど、魔法の使い方が解らない俺が、祖父さんの怒鳴り声を使ってそのまま、余韻で魔力だけが放出し続けているらしい。
「まあ、今は、エディさんが回復するのならいいですよ。でも、顎置きにすることはないんじゃないですか?」
「手を繋ぐ方とどっちがいい? チューでもいいけど」
「顎で!!」
BL展開は全力で拒否させてもらうぜ。
この人、これがなければいい人なんだけどなぁ。
「セイヤさん、甘やかしたらつけあがりますよ?」
「すでに後悔し始めてますよ。でも、街に戻るまで、エディさんの治癒魔法は必要でしょう?」
「まあそうですが。あなたが魔力切れを起こしたら元も子もありませんから、適度なところで蹴り飛ばしてくださいね」
にっこり怖いことを言う。俺よりタッパもあって、白人種というか、正騎士として鍛えた体のエディさんを蹴り飛ばせるわけないやん。
巣がカラになった後、こちらを襲撃していた一群を掃討したことで、とりあえずは警備隊の本隊も街に戻ることになった。
「しばらくは、一隊ごとに交代で、巣に戻る醜鬼がいないか、別働隊がいないか、警戒・捜索に当たる」
ワーテルガーさんの指示で、比較的疲弊していない第2隊が巣のそばにキャンプして、グループ単位で交代で見張るらしい。
「探索系の魔法の使える者、伝達魔法の使える者、回復魔法の使える者は、常に体調を整えておくように。キャンプには奇襲を警戒し、防御魔法も忘れるな」
凄い警戒ぶりだな。そんなヤツらに二度も対峙して、よく助かったな。俺。
「そうですね。運も良かったのでしょうが、それも女神様のご加護と、有り得ないほど高い幸運の持ち主であること、お祖父さまの守護が、よい具合に重なり合ってのことでしょう。神に、お祖父さまに感謝して、与えられた技能をもっと巧く活かせるように更に精進していきましょうね」
基本的に真面目なんだな。ルーカスさん。
でも、俺、生活魔法の火を熾す事すらまだ出来ないんですけど。
クリーンや治癒魔法が使えるようになるのはいつになるやら。
「なに? 回復魔法使いたいの? これは、ある程度の適正能力と、神への信仰心が必要なんだよ」
「えっ!?」
「何が『え?』なの。誰でも使えると思ってた?」
エディさんが喋る度に頭にガクガク衝撃来るけど、注目するところはそこじゃない。
「エディさん、信仰心あるんだ?」
「何をもって、俺が不信心な人間だと? 俺、毎朝欠かさず祈りを捧げてるし、月に何度かは、神殿に行って無料奉仕で、医師や薬師で治せない患者に治癒魔法使ってるのよ?」
目から鱗が落ちる はちょっと違うか。でも、そんな感じで、目を見開くくらい驚いた。
「ほらご覧なさい。普段の態度が、不信心者であると誤解を受けるのですよ、エアハルト」
ルーカスさんの苦言にも知らん顔で、俺の頭を撫でるエディさん。
「これ、いいな。セイヤ。いつもこうやって魔力補填してよ」
「言ってるそばから。甘えるんじゃありません」
パコ なんて音を立てて、エディさんの頭をはたくルーカスさんは、学校なら委員長みたいだ。
「委員長⋯⋯それも、学級委員じゃなくて、きっと風紀委員」
「なんですか? わたしがですか?」
「おま⋯⋯セイヤ、知ってたのか?」
「何を?」
「ルーカスは生真面目すぎて、一部の騎士に、風紀審問員って呼ばれてるんだよ」
エディさんがこっそり耳に触れそうな近さで、小声で教えてくれる。
やっぱりそうなのか。
はあ。この人達といれば、色々安心だし楽しいし、勉強にもなるし。
あの宿舎、出て行くのもう少し後でもいいかな──
それにしても、エディさん、いい加減、俺の頭から降りてくれないかな。
ずっと、肩にのしかかり、頭を抱えて離してくれないのだ。
「エアハルト。いつまでセイヤさんを弄っているのですか。失礼でしょう、そろそろ離れなさい」
察してくれたのか、ルーカスさんが窘めるけど、今度は頭の上に顎を乗せて、後ろから羽交い締めのようにして来た。
「疲れたんだよー。醜鬼どもにやられた味方の回復で、もうすぐ魔力切れ起こしそうなの」
そんなに使ったのかと振り返ると、あちこちに倒れていた第5隊の騎士や志願兵達は全員起き上がっていて、本隊の正騎士達に手を借りて歩き出していた。
「そうでしたか。それはそれ、これはこれ。セイヤさんにのしかかる理由にはならないでしょう?」
もっと言ってやってよ、ルーカスさん。
「いや、それがさぁ、可愛い子ちゃんにくっつくと癒されるって言うかぁ、回復する気がするのよね~、不思議」
「不思議、じゃありませんよ。いいから離れなさ⋯⋯い?」
エディさんと俺の肩を摑んで引き離そうとしたルーカスさんが止まった。
「え?」
「な?」
不思議そうな表情をするルーカスさんと、ドヤ顔のエディさん。
「ああ。召喚術を使った後で、溢れる魔力がダダ漏れしているんですね。セイヤさん、気を整えなさい。魔力が勿体ないですよ」
「いーじゃん。俺が回復するんだから。ちゃんと全部受け止めるからね」
よくわからないけど、魔法の使い方が解らない俺が、祖父さんの怒鳴り声を使ってそのまま、余韻で魔力だけが放出し続けているらしい。
「まあ、今は、エディさんが回復するのならいいですよ。でも、顎置きにすることはないんじゃないですか?」
「手を繋ぐ方とどっちがいい? チューでもいいけど」
「顎で!!」
BL展開は全力で拒否させてもらうぜ。
この人、これがなければいい人なんだけどなぁ。
「セイヤさん、甘やかしたらつけあがりますよ?」
「すでに後悔し始めてますよ。でも、街に戻るまで、エディさんの治癒魔法は必要でしょう?」
「まあそうですが。あなたが魔力切れを起こしたら元も子もありませんから、適度なところで蹴り飛ばしてくださいね」
にっこり怖いことを言う。俺よりタッパもあって、白人種というか、正騎士として鍛えた体のエディさんを蹴り飛ばせるわけないやん。
巣がカラになった後、こちらを襲撃していた一群を掃討したことで、とりあえずは警備隊の本隊も街に戻ることになった。
「しばらくは、一隊ごとに交代で、巣に戻る醜鬼がいないか、別働隊がいないか、警戒・捜索に当たる」
ワーテルガーさんの指示で、比較的疲弊していない第2隊が巣のそばにキャンプして、グループ単位で交代で見張るらしい。
「探索系の魔法の使える者、伝達魔法の使える者、回復魔法の使える者は、常に体調を整えておくように。キャンプには奇襲を警戒し、防御魔法も忘れるな」
凄い警戒ぶりだな。そんなヤツらに二度も対峙して、よく助かったな。俺。
「そうですね。運も良かったのでしょうが、それも女神様のご加護と、有り得ないほど高い幸運の持ち主であること、お祖父さまの守護が、よい具合に重なり合ってのことでしょう。神に、お祖父さまに感謝して、与えられた技能をもっと巧く活かせるように更に精進していきましょうね」
基本的に真面目なんだな。ルーカスさん。
でも、俺、生活魔法の火を熾す事すらまだ出来ないんですけど。
クリーンや治癒魔法が使えるようになるのはいつになるやら。
「なに? 回復魔法使いたいの? これは、ある程度の適正能力と、神への信仰心が必要なんだよ」
「えっ!?」
「何が『え?』なの。誰でも使えると思ってた?」
エディさんが喋る度に頭にガクガク衝撃来るけど、注目するところはそこじゃない。
「エディさん、信仰心あるんだ?」
「何をもって、俺が不信心な人間だと? 俺、毎朝欠かさず祈りを捧げてるし、月に何度かは、神殿に行って無料奉仕で、医師や薬師で治せない患者に治癒魔法使ってるのよ?」
目から鱗が落ちる はちょっと違うか。でも、そんな感じで、目を見開くくらい驚いた。
「ほらご覧なさい。普段の態度が、不信心者であると誤解を受けるのですよ、エアハルト」
ルーカスさんの苦言にも知らん顔で、俺の頭を撫でるエディさん。
「これ、いいな。セイヤ。いつもこうやって魔力補填してよ」
「言ってるそばから。甘えるんじゃありません」
パコ なんて音を立てて、エディさんの頭をはたくルーカスさんは、学校なら委員長みたいだ。
「委員長⋯⋯それも、学級委員じゃなくて、きっと風紀委員」
「なんですか? わたしがですか?」
「おま⋯⋯セイヤ、知ってたのか?」
「何を?」
「ルーカスは生真面目すぎて、一部の騎士に、風紀審問員って呼ばれてるんだよ」
エディさんがこっそり耳に触れそうな近さで、小声で教えてくれる。
やっぱりそうなのか。
はあ。この人達といれば、色々安心だし楽しいし、勉強にもなるし。
あの宿舎、出て行くのもう少し後でもいいかな──
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