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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です
39 力が欲しい
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🦯
杖術が使えるようにはなったものの、まだ防御用の能力だけだ。
固有能力【守銭奴】も、パッシブスキルの自衛MAXと察知能力MAXだけ。スマイルは、よく解らん。
攻撃系、せめて迎撃能力が欲しい。まあ、財産を奪われたら犯人の手首から先が切断される自衛機能は、迎撃能力とも言えるけど、あれはものを盗られた場合に限るからなぁ。
襲われたら撥ね返す感じのが欲しい。
そういや、スマイルは、難局を乗り越えるとか説明にあったっけ?
笑えばいいのか?
マクドやミスドで鍛えたスマイルØ円の威力を試すとき!?
キィーッ
小さめの醜鬼が飛び付いてきた。横に避けてやり過ごし、振り返った醜鬼に、Ø円スマイルをお見舞いする。
キキ?
一瞬戸惑って動きを止めたが、傾げた首を元に戻すと、今度は牙を剝いて、叫びながら躍りかかってきた。
観察していた分、避け損なう。パーカーを引き裂こうと手を伸ばす醜鬼の脳天を棍で殴り、顎の下に膝蹴りを入れる。
足下にべっしゃりと腹這いに落ちた醜鬼を、俺が数歩下がったタイミングで、エディさんが首を落とす。
「急におかしな笑顔を見せるから、恐怖で気がふれたのかと心配したけど、ステータス異常はなさそうだね」
「ええっ? 固有能力にスマイルってあったから、笑ったら何か変わるかなぁ~って試してみただけですよぅ」
「変わった?」
「さあ⋯⋯ 一瞬怯んだというか、隙は出来たみたいでしたけど、俺、攻撃系の技能ないですから」
ははは。攻撃系の技能を身につけてから検証し直しだね。なんて言いながらも、醜鬼を、ズバッと斬り捨てるのがカッコいいエディさん。
しかし、この数、どうなってんの? この辺に、大規模な醜鬼村でもあんの?
「マズいな。もしかして、隊長達が探索してるから、巣を放棄して群れ全体でこっちに来たかな?」
醜鬼達は増える一方で、減る気配がない。だが、人間は体力でも機動力でも魔物に劣る。醜鬼に押され気味で、兵士達から順に減って来ている。
倒れた兵士や騎士には見向きもしない醜鬼達。
「それもおかしな話なんだよね。普通、醜鬼達は、女性は攫う、犯す、子供は喰う、壊れるまで玩具にする、男も壊れるまで玩具にする、或いは残酷な手口で殺す、ってのが通常なんだけど、倒れた兵士や騎士には見向きもしないってのもおかしいし、シュカちゃんよりセイヤに群がってるのが謎なんだ、よっと!」
動きが鈍くなってきた騎士達と、もはやただの金属の棒に成り下がっている、刃毀れと斬った魔物の脂で切れ味が落ちた剣を、めったやたらと振り回すだけのキルケ。
騎士達は、重い全身鎧を着ている分、防御力はあっても動きは醜鬼の方が明らかに速いし、疲れも見えて来た。
このままじゃ全員殺られてしまう。
こんな、子供みたいな小さい生き物なのに、騎士でも勝てないのか?
悔しくて涙が滲むけど、こぼれないようにエディさんに見られないように、誤魔化す意味と自分を奮い立たせる意味で、真正面の醜鬼を睨みつける。
やはり、一瞬は怯むのだ。すぐに立て直されてしまうけれど。
気迫でどうにかなるのか? 親父や祖父さんみたいな、強面で迫力があれば、追い払えるのかな。
また、十数匹暗がりから出て来て、一気にエディさんに飛びかかる。
この中で一番腕が立って、負傷兵を順に治癒魔法で応急手当しているエディさんは、篝火や騎士と同じで、ヤツらからしたら最も取り除きたい要因なのだろう。
「エディさん!!」
棍を掬い上げるように振りまわして、エディさんに集る醜鬼を追い払おうとするけど、多勢に無勢、キリがない。
その内の半分が、俺に矛先を向けて来た。
「セイヤ! 今すぐ三人と逃げろ! 街の方ではなく、隊長達がいる林の方へ!! 俺達には構うな」
「そんな!! さっきと言うことが違うじゃないか! 俺から離れるな、なんてカッコいいこと言ってたクセに、今更なんだよ!」
「状況が変われば指示も変わる! いいから行け! 助かるためには、最悪、見捨てろ」
最後のセリフは小さい声だった。この場合、見捨てろ、は、騎士達やエディさんではなく、シュカちゃん達三人のことだろう。
「だ⋯⋯や⋯⋯ いや、嫌だ! 自分だけ逃げてどうするんだよ! そもそもアイツらの足の速さと跳躍力で、逃げ切れるのかよ!」
俺には何も出来ないと思い知らされて、悔しい。
近所の悪ガキを怒鳴りつけて追い払ったり、腰を抜かして座り込んだところに説教したりした、祖父さんみたいな迫力──気迫と目力が欲しい。
俺が睨んだくらいでも一瞬は怯むのだ。気の弱い生き物なんだろう。気が弱いから、徒党を組んで襲ってくるに違いない。
祖父さんの一喝みたいに、アイツらを追い払いたい!!
〘新技能の修得可能。条件を満たした場合のみ、使用可能。初回のみ限定、特約特典で無料でご利用いただけますが、今すぐご利用になりますか?〙
また、あのアナウンスが脳内に直接響く。
条件付き技能? なんだそれ。
でも、何でもいい、アイツらを追い払えるなら、使えるものは何でも使いたい!
「ご利用になります!! 今すぐ!! 力をくれ! 俺に!!」
杖術が使えるようにはなったものの、まだ防御用の能力だけだ。
固有能力【守銭奴】も、パッシブスキルの自衛MAXと察知能力MAXだけ。スマイルは、よく解らん。
攻撃系、せめて迎撃能力が欲しい。まあ、財産を奪われたら犯人の手首から先が切断される自衛機能は、迎撃能力とも言えるけど、あれはものを盗られた場合に限るからなぁ。
襲われたら撥ね返す感じのが欲しい。
そういや、スマイルは、難局を乗り越えるとか説明にあったっけ?
笑えばいいのか?
マクドやミスドで鍛えたスマイルØ円の威力を試すとき!?
キィーッ
小さめの醜鬼が飛び付いてきた。横に避けてやり過ごし、振り返った醜鬼に、Ø円スマイルをお見舞いする。
キキ?
一瞬戸惑って動きを止めたが、傾げた首を元に戻すと、今度は牙を剝いて、叫びながら躍りかかってきた。
観察していた分、避け損なう。パーカーを引き裂こうと手を伸ばす醜鬼の脳天を棍で殴り、顎の下に膝蹴りを入れる。
足下にべっしゃりと腹這いに落ちた醜鬼を、俺が数歩下がったタイミングで、エディさんが首を落とす。
「急におかしな笑顔を見せるから、恐怖で気がふれたのかと心配したけど、ステータス異常はなさそうだね」
「ええっ? 固有能力にスマイルってあったから、笑ったら何か変わるかなぁ~って試してみただけですよぅ」
「変わった?」
「さあ⋯⋯ 一瞬怯んだというか、隙は出来たみたいでしたけど、俺、攻撃系の技能ないですから」
ははは。攻撃系の技能を身につけてから検証し直しだね。なんて言いながらも、醜鬼を、ズバッと斬り捨てるのがカッコいいエディさん。
しかし、この数、どうなってんの? この辺に、大規模な醜鬼村でもあんの?
「マズいな。もしかして、隊長達が探索してるから、巣を放棄して群れ全体でこっちに来たかな?」
醜鬼達は増える一方で、減る気配がない。だが、人間は体力でも機動力でも魔物に劣る。醜鬼に押され気味で、兵士達から順に減って来ている。
倒れた兵士や騎士には見向きもしない醜鬼達。
「それもおかしな話なんだよね。普通、醜鬼達は、女性は攫う、犯す、子供は喰う、壊れるまで玩具にする、男も壊れるまで玩具にする、或いは残酷な手口で殺す、ってのが通常なんだけど、倒れた兵士や騎士には見向きもしないってのもおかしいし、シュカちゃんよりセイヤに群がってるのが謎なんだ、よっと!」
動きが鈍くなってきた騎士達と、もはやただの金属の棒に成り下がっている、刃毀れと斬った魔物の脂で切れ味が落ちた剣を、めったやたらと振り回すだけのキルケ。
騎士達は、重い全身鎧を着ている分、防御力はあっても動きは醜鬼の方が明らかに速いし、疲れも見えて来た。
このままじゃ全員殺られてしまう。
こんな、子供みたいな小さい生き物なのに、騎士でも勝てないのか?
悔しくて涙が滲むけど、こぼれないようにエディさんに見られないように、誤魔化す意味と自分を奮い立たせる意味で、真正面の醜鬼を睨みつける。
やはり、一瞬は怯むのだ。すぐに立て直されてしまうけれど。
気迫でどうにかなるのか? 親父や祖父さんみたいな、強面で迫力があれば、追い払えるのかな。
また、十数匹暗がりから出て来て、一気にエディさんに飛びかかる。
この中で一番腕が立って、負傷兵を順に治癒魔法で応急手当しているエディさんは、篝火や騎士と同じで、ヤツらからしたら最も取り除きたい要因なのだろう。
「エディさん!!」
棍を掬い上げるように振りまわして、エディさんに集る醜鬼を追い払おうとするけど、多勢に無勢、キリがない。
その内の半分が、俺に矛先を向けて来た。
「セイヤ! 今すぐ三人と逃げろ! 街の方ではなく、隊長達がいる林の方へ!! 俺達には構うな」
「そんな!! さっきと言うことが違うじゃないか! 俺から離れるな、なんてカッコいいこと言ってたクセに、今更なんだよ!」
「状況が変われば指示も変わる! いいから行け! 助かるためには、最悪、見捨てろ」
最後のセリフは小さい声だった。この場合、見捨てろ、は、騎士達やエディさんではなく、シュカちゃん達三人のことだろう。
「だ⋯⋯や⋯⋯ いや、嫌だ! 自分だけ逃げてどうするんだよ! そもそもアイツらの足の速さと跳躍力で、逃げ切れるのかよ!」
俺には何も出来ないと思い知らされて、悔しい。
近所の悪ガキを怒鳴りつけて追い払ったり、腰を抜かして座り込んだところに説教したりした、祖父さんみたいな迫力──気迫と目力が欲しい。
俺が睨んだくらいでも一瞬は怯むのだ。気の弱い生き物なんだろう。気が弱いから、徒党を組んで襲ってくるに違いない。
祖父さんの一喝みたいに、アイツらを追い払いたい!!
〘新技能の修得可能。条件を満たした場合のみ、使用可能。初回のみ限定、特約特典で無料でご利用いただけますが、今すぐご利用になりますか?〙
また、あのアナウンスが脳内に直接響く。
条件付き技能? なんだそれ。
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「ご利用になります!! 今すぐ!! 力をくれ! 俺に!!」
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