スマイルØ🇬(ｺﾞｰﾙﾄﾞ) ～時も沈黙も力も金なり!?💸～

第３話 ユニークスキルは『守銭奴』です

34 ゴブリンの目的

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　ズボンの腰紐をしめながらキャンプ地へ向かって歩き出すと、カクカクと膝が笑ってることに気づく。

　思い出しても怖いし、仕方ないとは思いつつ情けないなぁとも思う。

　モンスターなんか居ない世界で、戦争も海の向こうの、狭く平和な島国に育ち、目の前で、モンスターとはいえ、手や胴体が斬り離れ血飛沫が飛ぶなんて、初めての経験だ。スプラッター映画や戦争映画も観ないし、ゲームでだって、人が死ぬシーンなんかリアルに見たことはない。バイオハザードとかサバイバル系なんかやらないからな。ゲームやる時間があれば、宿題やるかバイトしてたというのもある。

　ふらふら歩いてると、だんだんみんなに遅れてくる。
　ズボンの腰のベルト通しのような部分からさがっている七色の組み紐の先で、トランプほどのサイズの金属カードが２枚──出生身分証と自由民株カードが、七色のペイントされた銅貨で留められて揺れている。時々チャカチャカ音がする。

　財布の革袋も、自衛機能が働いて醜鬼ゴブリンたちに奪われてない。そもそも、妖魔だか亜人だかには、人間のお金になんか興味はないだろうけど。

　キ　キキ⋯⋯　

　どこかで、まだヤツらの声がする気がした。今夜はもう寝ないでおこう。夢に見るに違いない。

　強烈な体験からの幻聴がついてくるような気がして、身震いがした。

　やっぱり、膝が笑うので、歩くのが遅くなる。誰かに肩を借りよう。

「ヨナ⋯⋯」

　キーッキィキキ

　突然、暗がりから一匹が飛び出してきた。ワーテルガーさんの討ち漏らしか、先に逃げた奴か、それとも新手か。

　力の強い大きい奴じゃない。だけどその分動きが速かった。
　腰にとりついて振り払えない。きーきー鳴きながら、ズボンを引き剥がそうとする。

「だから、なんでみんな俺のズボンを脱がそうとするんだよ！　俺は男なんやて。それに、繁殖するんやったら、巣に帰ってにしろや」

　いや、巣まで連れ去られたら困んねんけど！

　震える手でせっかく結んだズボンの腰紐を、ほどかれ引き下げられる。膝の辺りで引っかかって歩けずに、地に醜鬼ゴブリンと一緒に転がった。

　臭いわうるさいわ、怖いやら呆れるやら情けないやら。

　複雑な感情と、一度助かった事で緊張感や危機感が弛んだこと。

　叫んで、誰かに助けを求めるべきなのに、喉がひりついて悲鳴も出ない。

　ズボンを下げたが剥ぎ取りはしない。パンツもそのままだ。
　だが、コイツはキィキィ鳴きながら、パーカーを捲り上げ、腹を撫でるようにまさぐり、インナーシャツを引きちぎろうとする。

　キィキィ鳴くのを止め、インナーシャツを裂くと、牙を剥き出しにして口を大きく開け、腹に齧りつこうとする。

　コイツの目的が繁殖じゃなかったことにほっとするも、より一層ゾッとする。

　コイツ、俺の腸はらわた喰おうとしてるのか!?

「止め⋯⋯!!　こら、止めろって」

　醜鬼ゴブリンとの間に足を入れて、力が入らないなりになんとか蹴り、引き剥がそうとするが、上手くいかない。

　こんな所で、醜鬼ゴブリンに囓られて死ぬのか!?

　だ、だれかっ　誰か助けて⋯⋯!!

　ワーテルガーさんやルーカスさん達とは離れてしまい、暗がりの中でなんとか囓られないように暴れるが、醜鬼ゴブリンを振り払えず、もつれ合って転がりまわるしか出来ない。

　こんな、臭くて汚い化け物に喰われて死ぬなんて、嫌だ!!

　誰か助けてくれ!!