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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です
28 講習の連れの三人組
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とりあえず、俺だけ新顔と言うことで、自己紹介をする。
「えっと、急に講習に割り込んですみません。常磐詠哉と言います。トキワが家名で、セイヤが名前です。好きな方で読んでください」
「俺はキルケ。一応、剣を使った戦士系の職に就きたいと思っている」
「僕はレェーヴ。握力腕力があんまりないので、打撃武器は苦手でとりあえず剣を提げてますが、これもあまり当てにならないです。動植物の生態環境を調べたりしていきたいです」
「わたしはシュカ・シエルと言います。魔法を活かした仕事に就きたいと思っています」
名前。これまた、笑いそうになるのを必死で堪える。
自動翻訳機能、どうなってんの。俺を笑わせに来てんの?
鷹に狐に烏。サバイバル教官が子供達を引き連れて、西遊記や桃太郎みたいなイメージが湧いてくる。もちろん、口には出さないけど。
三人とも同じ町の出身で、男子ふたりに名字がないのは平民だから。
平民は家名は特になくて名前しか名乗らず、個人を特定するときは、親の名前と出身地の領地名か町の名を連ねるらしい。
俺だったら、『詠哉・周成・嚴造・川西(or兵庫)』で、かなりクドい名前になるなぁ。
まあ、それはともかく。サバイバル教官ラーガーさんの引率で、街の外に講習──というよりは実習?に出掛けることになった。
手荷物検査というか、確認。
みんな、キャンプで持っていきそうな道具っぽいものを三人で手分けして持っていた。
「大きな道具なんかは手分けして持ち合うのはわかるが、ちょっとした必須アイテムは各自持った方がいいぞ? 山や森で仲間と逸れた時に、あれは誰か持ってたこれは持ってるけどあれがないと使えないなんて事がないだろう」
なるほどなー。俺は、元々持ってたタンブラーとタオル、火付け石とてのひらサイズの七輪みたいな焜炉、それに合うサイズの携帯鍋を鞄に入れてきたけど、他は何にもない。
実は全財産とも言う。
「皿は大きな葉っぱを折って代用できるし、寝袋はいざという時に面倒くさいから毛布とか上着でいいかなって⋯⋯」
そもそも、野外活動の初心者向け講習としか聞いてなかったから、街の外に泊まる用意は頭になかったな。
「確かに。代用できるなら、荷物は可能な限り少ない方がいいだろう」
歩きながら、彼らに聞いた話では、2日前に座学を終えて、昨日は準備期間、本日実習という事だった。
そこに、初級の魔法の講師を兼ねられる野外活動実習という事で、俺をねじ込んだわけだ。
街の城門を出る時、初めて自分の腰に提げた大きなドッグタグのような身分証を使うのがドキドキする。
この街に来たときと同じ、ぶっとい眉の兵士が立っていて、いそいそと自由民株カードを見せる。
「おお、坊主、ワーテルガー様に保護してもらったそうじゃないか。よかったな。自由民協会に入ったのか。頑張れよ」
頭を撫でられる。完全子供扱いだな。
「セイヤさん、学ぶことももちろんですが、楽しんできてくださいね」
ルーカスさんとヨナスさんがなぜか見送りに来てくれていた。
さっき詰め所で送ってくれたばかりやん。
「これを渡しておこうかと思いまして」
ハガキサイズの紙を綴じた束と、風呂敷みたいなものを手渡される。風呂敷は、素材が革なのか布なのかよく解らない。
「筆記具を持っているのに、書き付けるものがなくては勉強が捗らないでしょう。どうぞ、使ってください」
「ああ。昨日の騒ぎでそう言ったものを買うの忘れてました」
「だと思いましたよ」
有り難く受け取って、上着のポケットにしまった。
細い紐で和綴じふうの綴じ方。手縫いなんだろうな。
警備隊の兵士も、ルーカスさんヨナスさんも、にこやかに送り出してくれた。
道中、ラーガーさんは、俺には初めて見る草を指して、傷口の血止めになるとか、肉を煮込むのに臭み取りになるし滋養強壮効果があるとか、色々教えてくれる。
すぐには覚えられないので、一枚千切ってルーカスさんに貰ったノートに挟み、聞いた説明を書き込む。
「基本的な薬草も知らないのか?」
キルケが不思議そうな顔で訊いてきた。
「ああ。俺、この辺は初めてなんや」
「そう言えば、言葉、ちょっと変わってますよねぇ」
レェーヴも頷く。
「止しなさいよ。慣れてないから初心者講習に参加するんでしょう? 私達と一緒よ」
シュカが窘める。幼馴染みだというこの三人は、こういう関係性でずっと来てるんだろうな。
目的地の林まで、特に問題もなく順調だった。
❈❈❈❈❈❈❈
キルケ(Κίρκη) 古ギリシャ語で鷹を意味する、神話に出て来る魔女のこと
レェーヴ(räv) スウェーデン語で狐のこと
シュカ(choucas) フランス語で西黒丸烏のこと
シエル(ciel) フランス語で空、スペイン語で天国のこと
主人公を笑わせるためだけに、響きのいい言葉を探して並べました<(๑¯﹀¯)>
とりあえず、俺だけ新顔と言うことで、自己紹介をする。
「えっと、急に講習に割り込んですみません。常磐詠哉と言います。トキワが家名で、セイヤが名前です。好きな方で読んでください」
「俺はキルケ。一応、剣を使った戦士系の職に就きたいと思っている」
「僕はレェーヴ。握力腕力があんまりないので、打撃武器は苦手でとりあえず剣を提げてますが、これもあまり当てにならないです。動植物の生態環境を調べたりしていきたいです」
「わたしはシュカ・シエルと言います。魔法を活かした仕事に就きたいと思っています」
名前。これまた、笑いそうになるのを必死で堪える。
自動翻訳機能、どうなってんの。俺を笑わせに来てんの?
鷹に狐に烏。サバイバル教官が子供達を引き連れて、西遊記や桃太郎みたいなイメージが湧いてくる。もちろん、口には出さないけど。
三人とも同じ町の出身で、男子ふたりに名字がないのは平民だから。
平民は家名は特になくて名前しか名乗らず、個人を特定するときは、親の名前と出身地の領地名か町の名を連ねるらしい。
俺だったら、『詠哉・周成・嚴造・川西(or兵庫)』で、かなりクドい名前になるなぁ。
まあ、それはともかく。サバイバル教官ラーガーさんの引率で、街の外に講習──というよりは実習?に出掛けることになった。
手荷物検査というか、確認。
みんな、キャンプで持っていきそうな道具っぽいものを三人で手分けして持っていた。
「大きな道具なんかは手分けして持ち合うのはわかるが、ちょっとした必須アイテムは各自持った方がいいぞ? 山や森で仲間と逸れた時に、あれは誰か持ってたこれは持ってるけどあれがないと使えないなんて事がないだろう」
なるほどなー。俺は、元々持ってたタンブラーとタオル、火付け石とてのひらサイズの七輪みたいな焜炉、それに合うサイズの携帯鍋を鞄に入れてきたけど、他は何にもない。
実は全財産とも言う。
「皿は大きな葉っぱを折って代用できるし、寝袋はいざという時に面倒くさいから毛布とか上着でいいかなって⋯⋯」
そもそも、野外活動の初心者向け講習としか聞いてなかったから、街の外に泊まる用意は頭になかったな。
「確かに。代用できるなら、荷物は可能な限り少ない方がいいだろう」
歩きながら、彼らに聞いた話では、2日前に座学を終えて、昨日は準備期間、本日実習という事だった。
そこに、初級の魔法の講師を兼ねられる野外活動実習という事で、俺をねじ込んだわけだ。
街の城門を出る時、初めて自分の腰に提げた大きなドッグタグのような身分証を使うのがドキドキする。
この街に来たときと同じ、ぶっとい眉の兵士が立っていて、いそいそと自由民株カードを見せる。
「おお、坊主、ワーテルガー様に保護してもらったそうじゃないか。よかったな。自由民協会に入ったのか。頑張れよ」
頭を撫でられる。完全子供扱いだな。
「セイヤさん、学ぶことももちろんですが、楽しんできてくださいね」
ルーカスさんとヨナスさんがなぜか見送りに来てくれていた。
さっき詰め所で送ってくれたばかりやん。
「これを渡しておこうかと思いまして」
ハガキサイズの紙を綴じた束と、風呂敷みたいなものを手渡される。風呂敷は、素材が革なのか布なのかよく解らない。
「筆記具を持っているのに、書き付けるものがなくては勉強が捗らないでしょう。どうぞ、使ってください」
「ああ。昨日の騒ぎでそう言ったものを買うの忘れてました」
「だと思いましたよ」
有り難く受け取って、上着のポケットにしまった。
細い紐で和綴じふうの綴じ方。手縫いなんだろうな。
警備隊の兵士も、ルーカスさんヨナスさんも、にこやかに送り出してくれた。
道中、ラーガーさんは、俺には初めて見る草を指して、傷口の血止めになるとか、肉を煮込むのに臭み取りになるし滋養強壮効果があるとか、色々教えてくれる。
すぐには覚えられないので、一枚千切ってルーカスさんに貰ったノートに挟み、聞いた説明を書き込む。
「基本的な薬草も知らないのか?」
キルケが不思議そうな顔で訊いてきた。
「ああ。俺、この辺は初めてなんや」
「そう言えば、言葉、ちょっと変わってますよねぇ」
レェーヴも頷く。
「止しなさいよ。慣れてないから初心者講習に参加するんでしょう? 私達と一緒よ」
シュカが窘める。幼馴染みだというこの三人は、こういう関係性でずっと来てるんだろうな。
目的地の林まで、特に問題もなく順調だった。
❈❈❈❈❈❈❈
キルケ(Κίρκη) 古ギリシャ語で鷹を意味する、神話に出て来る魔女のこと
レェーヴ(räv) スウェーデン語で狐のこと
シュカ(choucas) フランス語で西黒丸烏のこと
シエル(ciel) フランス語で空、スペイン語で天国のこと
主人公を笑わせるためだけに、響きのいい言葉を探して並べました<(๑¯﹀¯)>
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