月がきれいだった

ピコっぴ

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月がきれいだった

7.紳士的な柔らかい印象の人だったのに

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 会話が通じない間は、紳士的な柔らかい印象の人だったのに、いざ言葉が通じたら、上から目線の碌でもないお貴族さまのようなイメージに変わってしまった。

 なんでだろう。言葉が通じない分、私の不安や依頼心が、好印象に自発的に意識操作をしていたのかな。


「君の耳に刺しているそのピアスが、意思疏通の為の魔導具だよ。なくさないようにね」


 マドーグ? なんだろう。

 意思疏通の為のマドーグだと言うけれど、意味は通じてない──私が知らないものは通訳出来ないってことかな?


「マドーグってなんですか?」


 訊いてみると、呆れたような、やや侮蔑が入ったような眼で見られる。

 なんでよ、意思疏通出来てないから訊いてるのに。識らないのに知った顔で頷くほうが問題でしょう?


「読んで字の如く『魔導具』だよ。それ自体に込められた魔導の力で、この場合は、思考言語を置き換えるものだね」


 ──魔導!


「魔法なんて、本当にあるんですか!?」

「事実、僕達の言葉は識らないのに、それを身につけただけで会話できるようになっているだろう?」

 それはそうだけど…… 魔法? 本当に?


、魔法はなかったのかな?」

「私の国にもどこの国にも──世界!? 今、世界って言いました?」


 美人さんは、形のいい柳眉を顰め、肩を揺らして大きなため息を吐く。バカを見るような、呆れた視線を寄こしてくれる。

 いかにも面倒くさそうに、それでも一応は説明してくれた。


「いちいち聞き返さないと話が進められないのかな。まあ、知らない世界から来たらそうなるのかな。

 そうだね。君は、この国のあるどの土地でもない、空の彼方よりも遠い、異国どころかこの世でもない異世界から取り寄せた、にえの月の水環みわひめだよ」



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