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月がきれいだった
6.ようやく、私は意味のわかる会話にありつけた。
しおりを挟むようやく、私は意味のわかる会話にありつけた。
❈
あの、全身に摺りこまれたシアバターみたいなクリームは、とてもお肌にあったようで、つやつやほっぺになりまして、どこで売ってるのか教えてほしい。
吸いつくような手触り。これが私のほっぺなの?
また、温かいゴブレットを手渡される。中身は──やはりこれってワインかな? 未成年なんですってば。
両手を添えて辞退させていただくと、さっきの浴場にも来た集団女湯見学隊のおじさん達が入って来た。
──この人達は、女性の寝室にも入ってくるのか
何やら、年配の女性に、眉間にシワを寄せて話している。
女性は首を振っていた。なんか、嫌な予感。
眉間にシワを寄せ、灰色の髪のお父さんくらいの年齢と思われるの男性が苛立たしげに近寄ってくる。
女性からゴブレットを引っ手繰るように取り上げ、私の肩を乱暴に掴んだ。
「やめて! 私は未成年だし、お酒なんか要らない!」
ゴブレットを口に当てて、飲めとばかりに唇が痛くなるくらい押しつけてくる。
どうしても、それは飲みたくない!
そんな強い気持ちに、肩が痛いほど強く掴まれ、唇が自分の歯とゴブレットに押しつぶされそうに痛くて、つい暴れ、ゴブレットを肘で弾き飛ばしてしまう。
中身の赤ワインっぽいものは、男性の頭にかかり、チャコールグレーのトーガを赤く染めた。
グワッと怒られる、と思いきや、男性は青褪めて部屋を出ていった。
ホッとする女性陣。
え? 待って。かかったら青褪めて逃げるような代物なの? あれ。やはり飲まなくてよかった。
男性がひとり減ったけど、あの美人さんが、慌てて帰ってきた。
なに語か解らない言葉で、言い争っている。
年配の男性陣より美人さんの方が身分は上なのかな?
男性陣から離れて、美人さんが、こちらへ来る。
ベッドのそばに膝をつき、私の目線に目の高さを合わせてくれる。
今まであった中で、ダントツこの人が信頼できるよね。
溺れたのをお湯から引きあげてくれて
洟垂らしてても優しく拭ってくれて(見ないふりして欲しかったけど)
扱いは丁寧
不安になったら背をタップしてくれたり微笑んでくれたり
着替えの時は席を外してくれて(本来当たり前だけどね)
こうして駆けつけてくれて、目を合わせてくれる
何より美人さんだ。この中の誰よりも。
私は別に面食いとかそういう事はないけど、人当たりのよい見目いい人は、好印象だよね。普通。
美人さんが、声をかけると、後ろから男子とも女子ともつかない、おかっぱのオレンジっぽい金髪の子供が出て来て、柔らかい布が詰まったカゴを掲げる。
美人さんが、カゴの布の中から、真珠?をつまみ上げる。
その真珠からは、一本の針が出ていた。
──ん? 針?
嫌な予感再びと思った瞬間、
ぷっ
その真珠から出ていた針は、私の左耳たぶを突き刺した。
「ごめんね。痛かっただろう?」
そう言って、美人さんが、私の血の出る耳たぶを舐めた。
「ちっ! 痴漢?」
「治療、と言ってくれないかな?」
「え? 治療?」
というか「急に日本語話せるようになったの?」この人たち。
「逆だね。君が、僕たちの言葉を理解して、自国の言葉を話しているつもりで、僕たちの言葉を話しているよ」
「今、私、日本語話してない?」
「君の国は、ニホンと言うの?」
なんだろう、いざ話せるようになったら、さっきまでと美人さんの印象が違う?
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