5 / 30
月がきれいだった
5.優しく肩を揺すられる。眠いんだけど。
しおりを挟む優しく肩を揺すられる。眠いんだけど。
「オクタ・ヴィアムナーラ、ア・レム、クレスタム」
ん? オクタビアンさん? レクイエム? 何言ってんのかわかりません。
温かくて、気持ちいいからもう少し寝かせて……
再度優しく肩を揺すられる。う~ん、眠いんだけど。
ぼんやりと、薄目を開けると、窓から月が見える。
ああ、ここの月もきれいだな。三日月って、いろんなもののモチーフに……に? 三日月?
「私が観てたのって、満月じゃなかった!?」
飛び起きる。
スブリングこそ入っていないものの、これでもかと言うくらい中綿の入った、柔らか過ぎず固くないベッドに寝ていた。
私の肩を揺すっていたのは、先程タオルや着替えを持ってきていたお姉さん(たぶん)で、美人さんは、2歩下がった位置で見守っていた。
あの毛布のようなタオルは吸水性抜群だったらしく、着ていた服──木綿のブラウスとウールの巻スカート、カーディガンとレーヨンの九分丈パンツはすっかり乾いている。
けれど、乙女にあるまじき、異臭を放っていた。
急な雨に濡れたまま歩いてて、上がったあとにしばらく生乾き状態が続き、乾いたあと、残念な洗濯物の臭いになるよね。アレである。
そりゃ、美人さんは、こんな私を運んで来たら、さぞかし鼻が辛かった事だろう。距離をとるのも無理はない。
ギリシャ神話の女神のような格好のお姉さんは、着替えらしき衣類を見せ、私が頷くと、カーディガンから順に脱がしていく。
んん? 自分で出来ますが……
ハッ 美人さんがいる前でなんて事を!? と、思ってそちらを見ると、すでに姿は見えなかった。
私が目覚めたので安心してどこかへ行ったのか、着替えが始まるタイミングで気を利かせて姿を消したのかは、見てなかったからわからないけど、気兼ねなく脱げるかな。
別のお姉さんの持つ籐のカゴにカーディガン、巻スカート、九分丈パンツ、ブラウスの順に入れられていく。
一度お風呂に入ったあとなので、キャミソールは着ててもブラは着けてなかった。
キャミソールとショーツも脱ぐの?
そりゃ、身体に接する肌着で濡れて生乾きを起こしたのだから、雑菌が繁殖してるのはわかる。でも、こんなにたくさんのお姉さんたちがいる前で、すっぽんぽんになれと?
躊躇していると、後ろに控えていたやや年配の女性が迫って来て、有無を言わさずキャミソールとショーツをへっぺがし、籐カゴへ投げ入れる。
取り返されると思ったのか、カゴを抱えたお姉さんは、頭の位置も変わらないほど滑らかに後ろへ下がり、ゆっくり動いているようなのに驚く速さで退室していった。
返してくれるんでしょうね? アレ。
素っ裸の私に、若い女神コスプレのお姉さん達が群がり、温かい絞りタオルで全身を拭われ、バニラのような香りのミルククリームっぽいものを摺り込んでいく。シアバターみたいな保湿クリームなのかな?
薄手のシルクっぽい滑らかな生地の、一分丈パンツ。キュロットかもくらいのタックとかドレープとかとられた、超ひらひらを穿かせてくれる。
締め付けなさすぎて、逆に心許ない下着です。ウエスト部分はゴムではなく、両脇に縫い付けられた幅広の帯を腰に二周巻いて端を折り返して、巻いた部分へくぐらせていた。
両肩に幅広の帯のような布をお臍まで垂らし、それを押さえるようにウエストにも薄いシルクのような帯を三周させて、同じように端を巻いた部分に折り込む。
肩から下げていた帯は、背中も被っていて、短いひと言(意味は理解出来なかったけどたぶん断りを入れたのかな)のあと、中に手を突っ込んで胸の収まりをよくしてくれる。ブラ変わりなのだろう。補正下着みたいな盛り上げとフィット感はいいけど、知らない人に胸を摑まれて、内心困惑がおさまらない。
過去に一度だけ下着屋さんでされたことがあるっきりの、他人に胸を持ち上げられるという慣れない行為に、目を白黒させてしまう。
私の着ていた胸元にレースを縫い付けた綿の短めのキャミソールとはまったく違う、するするしたシュミーズを被せてくれる。
が、着せてくれたのはこれで終わりだった。
ちなみに、ただおとなしくナスがママキューリがパパではなかった。
抵抗しても、身体を隠そうと試みても、集団で寄ってたかってお世話されるのだ。力負けした。
始終にこやかで、無表情でなかったのがせめてもの救いだった。
これはどういうアレなのか。私が何をしたというのだ。
ここはどこ? 私はなんでこうなってんの?
もちろん、答えてくれる人はいなかった。
もっとも、答えてくれる人がいても、たぶん、理解はできなかっただろうけど。
まず、言葉が通じないのだから。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】悪役令嬢はラブロマンスに憧れる☆
白雨 音
恋愛
その日、一冊の本が、公爵令嬢ヴァイオレットの頭を直撃した。
それは《ラブロマンス》で、驚く事に、自分と同姓同名の登場人物がいた。
だが、ヒロインではなく、引き立て役の【悪役令嬢】!
「どうしてわたしが悪役なの?」と不満だったが、読み進める内に、すっかりロマンスの虜となっていた。
こんな恋がしたい!と、婚約者である第二王子カルロスに迫るも、素気無くされてしまう。
それに、どうやら、《ヒロイン》も実在している様で…??
異世界恋愛:短編(全9話)※婚約者とは結ばれません。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる