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オウジサマってなんだ?

35.森の調査団を結成しよう

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 サルティヴァルスの言う小貴族達が幾分、苦言や利己的な感情での発言などを呈したが、概ね、緑風の森を一度正式に調査する事が認められた。

「エリキシエルアルガッフェイル公爵が領地として治めることで、魔の森が緑風の森となり、より安全性の高い資源の豊富な森であると近隣諸国にも通るようになった事で、自由民と呼ばれる国籍を持たぬ人間や、何でも屋とか自らを冒険者と名乗る輩が多く入国し、緑風の森で狩りや収穫を行う者達が増えてきた」
 サルティヴァルスの通る声が状況を軽く説明すると、どよめきがあがる。
 すり鉢状に段差のついた室内に、長テーブルと椅子が数百名分ほどあるがほぼ満席状態で、1番低い底の部分に当たる最前列だけが全員を見渡せる向きに設置され、議長席に立ち声を張り上げるサルティヴァルスの金きらきらしい姿は、劇場的効果を最大限に発揮する。


「それまで手つかずだったために、国内でもあまり出回らない良質の資源を、他国の者に搾取されているのか? 公爵殿」
「搾取、とは言葉が過ぎぬか?
 拝領する以前に比べ、進んで人を襲う魔獣が出ぬようになったと言うだけで、居なくなったわけではない。
 森の境界に柵を設けたり結界を張っているわけではないので、誰でも出入り出来るのは確か。
 瘴気が払われた事で、多くの者が立ち入りやすくなったのも確か。
 自己責任で森へ入って、適度に運動したり素材を集めたり、レクリエーション活動を行う事を禁じてはいないのも事実。
 だが、野生動物(魔獣含む)が居ないわけではないのだ。それらの毛皮、角、肉、核、魔石などを素材として利用する為に狩りをする者は、それなりの危険を理解した上で行っていると思っている。
 が、どこにでも軽率な者はいるもので、己の力量を過信し、或いは瘴気が払われた事で重圧感プレッシャーがなくなったので安全と勘違いする者もいるのが現状」
 おおー。苦々しい声が複数あがる。

「領内の慣れた者は、薬草や小動物の肉や素材を求めて、小川や狩猟小屋付近のごく一部地域においてのみ狩りを行うが、決して深入りはしないし、陽が落ちる前に森の外へ戻ってくる。
 が、宰相の言う外部の者達は、野営してまで森にこもって活動しているようだ。補給も売買取引も王都で行うようなので、領内での活動は少なく、すべてを把握できていないのも現状であるゆえ、一度正式に調査する事が必要かと思われる」

 サルティヴァルスが上手く切り出してくれたおかげで、昨夜の事件を表に出すことなく、調査へ話を持っていくことが出来た。
 不平を漏らす下級貴族もいるがいつもの事で、概ね良好な手応えを感じ、なんとかなりそうだと安堵の笑みが薄く口の端にのる。

 近衛の王太后付の騎士や、商工会の幹部、魔道省や大学の魔道士、文官には僅かながら女性もいるので、微妙で見逃しがちな珍しいルーシェンフェルドの笑みを見て、ほぼ全員がため息を吐いてうっとりする。

 王立騎士団ではなく、野営と遠征の訓練を兼ね、城内の職業軍人である兵士達と、物理攻撃の効かない妖魔対策に魔道省の武官とで構成した調査団を結成する事で、多くの貴族達の(人材や経費の)不満を反らすことが出来た。

 補給も、一部現地調達と公爵領の森に近い村や街で賄う事で、ほぼ反対意見はなくなった。

「クィルフ」
 それまで、自身のスケジュールにも他の朝議の議題内容にも一切口を挟まずに、議長席の隣の玉座で静かに聴いていたエルキールアライオンが呼びかけた。
「王?」
「あ、すまぬ。つい……許せ。
 魔道省本局長、ルーシェンフェルド・クィルフ・エッシェンリール・アッカード=エリキシエルアルガッフェイル公爵、
 その遠征演習についてだが、私も……」
「却下です」

 にべもなく、言い払われて、拗ねた子供のような表情をする。
 こういう場では、人型の青年の姿である。

「考慮するとか、なんとか……」
「「ダメです」」
 ルーシェンフェルドとサルティヴァルスの2人同時に切り捨てた。
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