空を飛んでも海を渡っても行き着けない、知らない世界から来た娘

ピコっぴ

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オウジサマってなんだ?

17.朝から3人娘が少女に夢中

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 メイド長と最初に当番に立ったメイドが、少女の目覚めた気配に、寝室へ入る。
 僅かな掛布を返す音と、穏やかなあくびや伸びをする音がしてたが、突然飛び起きた音が聞こえてきた。

「お嬢さま、目が覚めましたか?」
 マーサが声をかけると、少女の少し慌てた声が帰ってくる。
《はい、起きました。すみません》

 応えた内容は理解できないものの、拒否する感じではなかったので、マーサの合図で、寝室の外で待機していたもう2人もワゴンを押して入って来る。
 若いメイド3人が、天蓋の幕を開き、少女の身支度を整え始める。

 1人が夜着を抵抗させる間もなく脱がせ、1人が髪を梳り始める。
《え? 何? 着替え、ひとりで出来るよ?》
 少女が目を白黒させながら、手際よく働くメイド達を見まわしていた。

 後ろに控えていたメイドが、受け取った夜着をワゴンの下の籠に収め、幾つか用意していた中から、レースがふんだんに飾られた青紫のドレスを、手早く脱がせたメイドに手渡す。

《いや、待ってちょ。私ドレスなんか着ないよ?  私の服はどうしたの?   ねえ?》

 昨夜の様子から、少女が世話をされる事に慣れてないのかかなりの恥ずかしがり屋らしいことは解っていたので、恥じらい頰を染める様子には誰も反応しなかった。
 反応すれば、より恥ずかしがるだろうから。
 でなければ、若いメイド達は、
「きゃー可愛い♡恥ずかしがってらっしゃるわ♡」
「見て、お化粧した事ないのかしら、このお肌」
「仕草がお可愛らしくて小さい子っていいわねぇ」
 などと騒ぎたいのを堪えていた。勿論、少女に気づかれないように、目だけで会話していた。

 無視されたと思ったのか、少女がしょんぼりと俯くと、マーサが軽く柏手を打つ。
 ハッとした3人の手が止まる。

 マーサやメイド達の視線に、少女はおずおずと毛布で胸元を隠しながら、頰を染めて、着せようとしていた青紫のドレスの端を摘まみ、首を横に振る。
 頰を染めて恥じらいながら、表情を曇らせて首を振る様子に、また3人は可愛い~と声を上げたいのを堪える。

 可愛らしかったので、少しの悪戯心も含め、言葉が通じないための確認も兼ねて、ピンク色が愛らしい総レースのドレスを見せる。

 少女は頰の赤みを増して、両手を前に突き出して左右に振りながら、首も左右に向きを高速で振り拒絶の意を表す。
 そんな仕草も可愛らしかったので、メイド達は、絶対に、少女の担当から外されないようにしようと誓った。

 どうやら、レース飾りは気にはなるものの、身につけるのは恥ずかしいらしく、おいおい慣れていただく事にして、次案の、若草色のフリルがたっぷり愛らしいドレスを見せる。

 その後も、ちょっと背伸びして大人っぽいドレスを着てみたいのかと、デコルテが広くあいたドレスや、肩が出るドレスなども見せたが、頰を染めるどころか真っ赤になって拒否した。

 ここでもう一度悪戯心をみせ、デコルテが広く胸の谷間を強調するだけでなく背中も殆どみせ、更に腿まで見せるスリットが深く入ったイブニングドレスなども見せると、毛布を頭からかぶって悶える様子が、メイド達を癒した。

 やり過ぎて少女を困らせて、メイド長に睨まれたり担当を外されては困るので、無難な所で、当主の妹君ルーティーシアが幼少の頃着ていた物を見せると、少女はようやく頷いた。

 落ち着いたワイン色のコーデュロイ生地で、胸元の合わせ部分は真っ白のフリルの白波が三重に並んでひらひら、ボタンが薔薇の花の形が可愛いワンピース。
 ウェストは真っ白なサッシュで帯のように締めて後ろで大きな蝶々を作る。スカート部分には白いフリル付き工プロンがまた、いい味出してて、全身が童話に出て来る少女を思わせて可愛いデザインだ。

 ──ただ、ちょっと子供っぽ過ぎるかな~?

 着せられた少女自身、メイド達3人とマーサ、この場全員の総意であった。


 *** *** *** *** ***

 長らく本編ばかりにかかりきりで申し訳ありません。そろそろこちらも更新進めますね。

 ちなみに、マーサやメイド達は、明莉が幼女、少女などの『子供』でない事はだいたい解ってます。
 女同士、また、他人の世話をする仕事柄、見れば子供が大人か、普通判りますよね?
 たとえ、小柄で童顔でも(笑)
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