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竜族の棲む深い森の中で
🔇4 ヒツジクサ揺れる水源
しおりを挟む星竜の眠っていた湖よりも緑味が強い湖水。
透明度は高めなのでわかるけれど、岸の近くにはヒツジクサや、カモンバやマツモに似た水草が群生していて、白い花を咲かせているのが可愛らしく、日本のお祖母ちゃんの庭を思い出した。
「綺麗な水源やね。真ん中に湧き出し口があるの?」
ここへ流れ込む川はないようなので、どこかに山からの水が湧き出す場所があるのだと思った。
──あの辺と真ん中辺り、もう一カ所向こうの方にあるかな? あっちは深いから、湧き出す所が見たいなら、あの辺へ行こうか
ぴちょんの案内で、ヒツジクサが咲いている岸辺に向かう。
ヒツジクサが咲いているって事は、もうお昼(正午~未の刻に咲くから)って事かな。結構歩いたもんね。
水草が固まって生えている中にぽっかり空いた所があって、底の方をよく見ると、砂を吹き上げながら透明な水が噴き出していた。
結構長い間見ていたらしい。
お腹がぐぐ~ぅと鳴いた。
『くくく。腹が減っているのか?』
へ? 誰?
ぴちょん達精霊の可愛い声とは違って、頭の中が大ホールで反響しているような、スピーカーやメガホンで話しているような声がする。
『む? 調整が足りなかったか? ⋯⋯これでどうだ? 聴きやすくなったか?』
「はい、ありがとうございます」
声の質はそのままに、反響がなくなりクリアな優しい声に変わる。
『腹が減っているのか? 吾子に与えた狼の肉が残っているが、食すか?』
「えっと、ご好意には感謝しますけど、調理の仕方が解らないのでお気持ちだけ。お子様におかわりしてあげて下さい」
狼の肉。中国とか赤犬を食べるとか聞いたし、チャウチャウって元々は食用として輸入されたって唯一食用犬として登録されてるって聞いたような気はするけど、いい料理が解らない。
お鍋かな? 串焼きかな? でも、犬を食べる習慣がないので食べづらい。
『くくく。腹は減っているのに、遠慮するか。吾子のおかわりにしろとな? 面白い娘だ』
これって、どこから見てるのか、たぶん、この辺が縄張りという青竜さんだよね?
『いかにも。精霊をたくさん引き連れたヒト族の小娘が、竜の棲む森になんの用か?』
ここは、正直に言うところだよね?
『そうだな。竜族を謀ろうなどと思わぬ事だ』
頭に直接話しかけてるだけあって、こちらの考えも読めるのかな。
「ハイキングです。ついでに、薬草とか香木とかきのことか、素材も拾えるかなって」
『ほう? 素材、とな⋯⋯
娘よ、その素材とやらには、我ら竜族の鱗や角、牙や爪、皮なども含まれるのか?』
次話
🔇5 栗拾いと梨狩り
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