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竜族の棲む深い森の中で
🔇2 森の中で
しおりを挟む私は、素材を拾いながらハイキング気分で、竜族が棲むという森の中を歩いていた。
時折、栗鼠や小鳥が目の前や木陰をちょろちょろしているのが微笑ましいけど、離れた辺りで大型の獣が歩いているのも、闇霊を通じて感じるけれど、たくさんの精霊達に囲まれている私には近寄ってこない。
──モモカの魔力と、魔法量、ボクたちがついてれば、滅多な獣は近寄らないよ
──上級の魔物が出て来ると厄介だけど、ここは竜族の縄張りだから、滅多には出て来ないから大丈夫
ん? 竜族の縄張りだと、魔族は出て来ないの?
──魔力や体力、生命力なんかは、属性は違えどほぼ拮抗するからね
──面と向かって敵対したら、この辺りが焦土と化しても決着がつかないかもね
「竜族って、そんなに強いの?」
──そうだね、この世界の生き物の頂点に立つ種族で、千年以上生きた巨竜になると、知識や経験もたくさん溜め込んで、神族にも匹敵する個体も居るみたいだよ
「巨竜⋯⋯ 餌が大変そう」
──そりゃあ、竜族が腹いっぱい食事をしようと思ったら、人間の街なんかあっという間に無人になっちゃうよね
──どうせ食べるなら牛や熊なんかの大型獣の方がマシだと思うけど
──モモカをイタズラに怖がらせないでよね
──大丈夫だよ? 竜族は大人になったら、魔素や地精、光気などを取り込んで生命エネルギーに変換する魔法を覚えるから、あれこれ食べたりしなくなるよ
「仙人みたいだね」
──仙人?
──モモカの生まれた世界には、仙骨を持った人間が修行したり真理を学んだりして、仙人と呼ばれる後天的な神族になる事があるんだよ
──こっちの世界には居ないと思うけど、他にも悟りを開いて仏になるニンゲンもいるのよ?
──そいつらは、原初の神を除いて、数多の神族よりも偉そ張るんだよ
──ふぅん? 『人間』が偉そ張るのはどこでも同じだね
話は逸れたけれど、後ろをつかず離れず歩く人が二人、森の中左手の奥の方を探索する人が三人ほど居るみたい。
アーテルとリンクして俯瞰で見てみると、確かに、某竜狩りゲームに出て来そうな恰好の人達が歩いている。
後ろを歩いてる二人は、武器は持ってないのか収納してるのか、斜めがけの小さめの背嚢だけで手ぶらだったけど、森の中の三人は、一人は大きな狩猟弓を抱え矢筒を背負ってるし、一人は大鋸? って思うような、たぶん刀と思われる武器を肩に担ぎ、もう一人は長い棍棒⋯⋯というより錫杖っぽい、飾りがついた長棹を持っているから、魔法使いなのかな?
いかにも、RPGゲームの冒険者パーティ風だ。
魔獣狩りしてるのかな?
──ここで攻撃的な行動をとると竜族を刺激するから、あまりやらないと思うけどなぁ
──こちらと一定距離を保ってるのも気味悪いよね
向こうもそう思って近づかないのかもしれないけど、用心はしておけと言うみんなの忠告を胸に、散策を続ける。
どちらかと言えば、独りで歩いてる私の方が不審者やんね?
次話
🔇3 野生の生き物は警戒心が強い?
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