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自由民ギルド ロックウェル支部
⛔16 査定・買い取りは、奥の職員作業場で
しおりを挟む気を利かせたキミカさんの手配で、協会の表カウンターではなく、奥の職員の作業場にある鑑定所に通される。
「この協会で、自由民や登録傭兵達の持ち込んだ素材を鑑定・査定したり、解体もしているの。ちょうどいいでしょ?」
「ありがとうございます」
◈◈◈◈◈
ピクミン。或いは、北の七つ星の拳的な雑魚キャラ。
パッと見の印象である。鑑定士の。
多分失礼なので口にはしない。ピクミンとか某拳法の名を出しても通じないだろうけど、雑魚キャラは間違いなくいい言葉じゃないし。
モヒカンに似てるけど、辮髪にも似てるかな? 耳より高い位置まで剃り上げて、てっぺんだけに立ち上がった髪があるのだ。
寝不足っぽい目つきで猫背。黒っぽい革のベストとパンツに工具や何かがたくさん並んで刺さってるベルト。
目利きのプロにも見えないこともないけど、世紀末アウトロー感が強すぎるのは、漫画の見過ぎかしら。
「ペプラムは、ここで買い取り査定と、必要なら解体作業も行ってるのよ。他の会員に見られたくないんでしょ?」
私は頷き、ホーンラビットを台の上に並べていく。
37匹いた。三カ所で間引き捕獲した結果で、まだ気絶したままの新鮮度合はピンピンだ。
「キミカか。どうした?」
奥の方で作業していたペプラムさんが、ぎろりとこちらを見ながら受付台に寄ってくると、少しびっくりしている。
「ど、どうしたんだ? こりゃぁ。どいつもこいつも生きたままじゃねぇか」
「南東のクルム草原からエルム森林までの街道沿いに、ホーンラビットが大量繁殖して、一般旅商人が困ってるって依頼だったの。で、一応、偵察に私達が通っただけで襲ってくるやつを捕獲した分よ。査定してもらえるかしら?」
「そりゃあ、クエストの達成証明の討伐部位を切り取ってないんじゃ、ここで買い取り査定するしかねぇが、お前さん、ホーンラビット程度、簡単に駆除できるだろう?」
「私が捕獲したんじゃないわ。この子よ。私なら燃やして、角か魔石だけ持ち帰るわね。私は先輩傭兵として指導係でついていっただけ」
一匹づつ罠にかけて駆除するなら初心者向けだろう。かなりすばしっこくてそのままでは攻撃もままならないけれど、工夫することで退治できる。
その手段として、私は電撃で麻痺させ、動かなくすることを選んだ。他に有効な手段や罠の仕掛け方が解らなかったから。
結果として、査定台に積み上げることになったけど。
「私は、ちょっと上に行ってるから、モモカはここで買い取り結果を待ってて?」
「はい、今日はありがとうございました。また、よろしくお願いします」
作業場を離れ、向こうに見える階段を上っていくキミカさんを見送っていると、ペプラムさんが話しかけてきた。
「お前さん、見かけねぇ顔だが、新人か?」
「はい。萌々香と言います。まだ、始めて五日ほどですが、よろしくお願いします」
「は? 始めて五日の初心者が、これだけのホーンラビットを生け捕りにしたのか?」
「はい。魔法も習い始めたばかりですが、魔力だけはあるので、気絶させました。でないと、動きが速すぎて攻撃は全く当たりませんから」
「そりゃあ、ウサギの脚で、まがりなりにも魔獣だからな。すばしっこさと強い脚力だけなら中級と言ってもいいさな」
話しながらも真剣な表情でウサギの状態を一匹づつ確認して行くペプラムさん。
ちょっとだけ、世紀末アウトローなんて思って悪かったなと思った。
次話
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