聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
上 下
91 / 163
今日から冒険者(仮)

🚯6 ルゴの実はどんなの?

しおりを挟む

 片手で持てる大きさの、ザルより深い籐籠にいっぱいにチェゴ草が溜まる。
 一応、クエストの商品として提出しなくてはいけないので、ぴちょんの水で洗って土を落とし、軽く雫を振り払ってから、同じ向きに揃えて入れる。

 ある程度集まった時にふと思いついて、別の丈の長い草の軸で5株毎に束にしておく。野菜売り場のほうれん草みたいな感じで。

「丁寧なのね」
「え? どれくらい採れたかって訊かれてもすぐ答えられるし、少しは葉に傷がつきにくくなるし渡しやすいでしょ?」

 まあ、八百屋のノリですが。

 ここの人達にとってみれば、初心者にしては細かいとか手慣れてる風に感じんのかな?
 八百屋感覚と、ライトファンタジー小説の読み過ぎのおかげやけどね。

「後は⋯⋯ ルゴの実は、人の背丈から2mくらいの穫りやすい木に鈴なりなんですよね?」
「そうよ。乾燥したら黒くなるけれど、木に成っている時は、未熟の緑から完熟の深紅まで、熟成度で色が違うから、なるべく熟したのを穫った方がいいわ」
「色が濃いほど辛く、未熟なほど酸っぱいけどな」

 胡椒や辛子みたいなもん?

 取りあえず、山椒の木か胡椒の蔓みたいなのを探そうかな。


 草どころか木も増えて来たので、更に火霊メラの出番がなくて拗ねる声が聴こえる。

──だいたいさぁ? 攻撃に向いてるのは私だと思うのにどーして風霊ウィンばかりなのよ
──そりゃ、草に火がついたら大変になるからデショ
──幻影じゃないの
──でも、モモカが眼で見て燃え移るって思ったらそのまま実現する空間なんだから、火がついたらダメなのは同じだもん、ここは諦めなよ
──土や水もいいはずだよねぇ?

「解りました。みんな順番に使ってみるから、揉めないで」

──やったー!!


 飛び出してきた蜂の魔物を土塊で塗り込める。ただの蜂なら通り過ぎてもらうけど、全長が1mもあってどこ見てるのかわからない複眼で迫ってこられたら、刺される!?って思っちゃうよね。
 魔物じゃなくて、ここの蜂は普通にこんなサイズなのかもしれないので、風で切り刻んだり燃やしたりせず、土で埋めてみる。私が通り過ぎてから、自力で出て来てね。

「殺さなくていいの?」
「今回は初心者向けクエストで、幻影の ヴァーチャル 魔物から魔石とれる訳じゃないし、襲ってこなければいいかな~って」

 採集クエストであって、戦闘訓練じゃないですよね?

「そうね。主旨を解ってるなら今回はそれでもいいかもね」

 自由民(冒険者)をやりたい人の多くは、採集クエストであっても、ついでがあれば手を出すものらしい。



 次話
🚯7 クエスト達成ですね?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

連帯責任って知ってる?

よもぎ
ファンタジー
第一王子は本来の婚約者とは別の令嬢を愛し、彼女と結ばれんとしてとある夜会で婚約破棄を宣言した。その宣言は大騒動となり、王子は王子宮へ謹慎の身となる。そんな彼に同じ乳母に育てられた、乳母の本来の娘が訪ねてきて――

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

妹の妊娠と未来への絆

アソビのココロ
恋愛
「私のお腹の中にはフレディ様の赤ちゃんがいるんです!」 オードリー・グリーンスパン侯爵令嬢は、美貌の貴公子として知られる侯爵令息フレディ・ヴァンデグリフトと婚約寸前だった。しかしオードリーの妹ビヴァリーがフレディと一夜をともにし、妊娠してしまう。よくできた令嬢と評価されているオードリーの下した裁定とは?

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

(完)愛人を作るのは当たり前でしょう?僕は家庭を壊したいわけじゃない。

青空一夏
恋愛
私は、デラックス公爵の次男だ。隣国の王家の血筋もこの国の王家の血筋も、入ったサラブレッドだ。 今は豪商の娘と結婚し、とても大事にされていた。 妻がめでたく懐妊したので、私は妻に言った。 「夜伽女を3人でいいから、用意してくれ!」妻は驚いて言った。「離婚したいのですね・・・・・・わかりました・・・」 え? なぜ、そうなる? そんな重い話じゃないよね?

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

処理中です...