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今日から冒険者(仮)
🚯6 ルゴの実はどんなの?
しおりを挟む片手で持てる大きさの、笊より深い籐籠にいっぱいにチェゴ草が溜まる。
一応、クエストの商品として提出しなくてはいけないので、ぴちょんの水で洗って土を落とし、軽く雫を振り払ってから、同じ向きに揃えて入れる。
ある程度集まった時にふと思いついて、別の丈の長い草の軸で5株毎に束にしておく。野菜売り場のほうれん草みたいな感じで。
「丁寧なのね」
「え? どれくらい採れたかって訊かれてもすぐ答えられるし、少しは葉に傷がつきにくくなるし渡しやすいでしょ?」
まあ、八百屋のノリですが。
ここの人達にとってみれば、初心者にしては細かいとか手慣れてる風に感じんのかな?
八百屋感覚と、ライトファンタジー小説の読み過ぎのおかげやけどね。
「後は⋯⋯ ルゴの実は、人の背丈から2mくらいの穫りやすい木に鈴なりなんですよね?」
「そうよ。乾燥したら黒くなるけれど、木に成っている時は、未熟の緑から完熟の深紅まで、熟成度で色が違うから、なるべく熟したのを穫った方がいいわ」
「色が濃いほど辛く、未熟なほど酸っぱいけどな」
胡椒や辛子みたいなもん?
取りあえず、山椒の木か胡椒の蔓みたいなのを探そうかな。
草どころか木も増えて来たので、更に火霊の出番がなくて拗ねる声が聴こえる。
──だいたいさぁ? 攻撃に向いてるのは私だと思うのにどーして風霊ばかりなのよ
──そりゃ、草に火がついたら大変になるからデショ
──幻影じゃないの
──でも、モモカが眼で見て燃え移るって思ったらそのまま実現する空間なんだから、火がついたらダメなのは同じだもん、ここは諦めなよ
──土や水もいいはずだよねぇ?
「解りました。みんな順番に使ってみるから、揉めないで」
──やったー!!
飛び出してきた蜂の魔物を土塊で塗り込める。ただの蜂なら通り過ぎてもらうけど、全長が1mもあってどこ見てるのかわからない複眼で迫ってこられたら、刺される!?って思っちゃうよね。
魔物じゃなくて、ここの蜂は普通にこんなサイズなのかもしれないので、風で切り刻んだり燃やしたりせず、土で埋めてみる。私が通り過ぎてから、自力で出て来てね。
「殺さなくていいの?」
「今回は初心者向けクエストで、幻影の魔物から魔石とれる訳じゃないし、襲ってこなければいいかな~って」
採集クエストであって、戦闘訓練じゃないですよね?
「そうね。主旨を解ってるなら今回はそれでもいいかもね」
自由民(冒険者)をやりたい人の多くは、採集クエストであっても、ついでがあれば手を出すものらしい。
次話
🚯7 クエスト達成ですね?
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