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今日から冒険者(仮)
🚯4 薬草を見つけよう
しおりを挟むとにかく、この訓練で採集する薬草は自由民としての活動に基本的な物で、冒険に出て怪我をしてもチェゴの葉をすり潰して塗り込めば血止めにもなるし、傷の快復が早くなるという。
同じくルゴの実は、料理に混ぜて食べると一時的に耐久力が上がり、毒や麻痺に強くなるという。そのまま囓ると即効性で解毒剤にもなるけど、のたうち回るくらい辛くて苦くて酸っぱいらしい。韓国や中国のお料理みたいなのかな? 辛いの苦手なんだよな~。
それらを覚える意味でも、最初のクエストになっているそうだ。
あるはずの天井は見えないし、下りてきたはずの階段は消えてしまった。
達成条件のチェゴの葉とルゴの実を籠いっぱいに採集してくるしかない。
今も、動きやすさと馴染んでる事と、光触媒素材に憑いて来た光の子の守護があるという事で、ミタムラの吸汗速乾シャツとワイドパンツや、パーカーを着ている。
「変わった服装ね? フードはともかく、中途半端な長さのコートだし」
この国の人達は、厚地のガウンをコートのように着ているのが普通で、ふくらはぎや足首まである長いもの。
ガヴィルさんも栗色のガウンの下に生成りの太ももまである貫頭衣を来て、獣皮の10㎝幅のベルトを締めている。
ズボンはちょっと違うけど、ターバン巻いてたら中近東の人みたい。
剣士のお姉さんは、革製のズボンとシャツに、固い革の、肩から胸を多う短いベストみたいなのを装備している。
剣を振り回すのに邪魔なのだろう、コートやジャケット類は羽織ってない。
高くても私の胸元までしかない低木ばかりの草地に身を隠せないからか、初心者向けだからか、火を噴く小動物とか、突進してくる中型犬サイズの獣くらいしか出て来ない。
広い草地を一時間ほど歩いて、漸く灌木や背の高い草が密集した地域に辿り着いた。
「この辺にありそうですよね」
無造作に種を蒔いた野趣溢れるイングリッシュガーデンみたいな群生地にしゃがみ込み、依頼の葉っぱがないか掻き分けていく。
事前に聞いた話では、木の葉ではなく、膝丈くらいの野草で、半日陰になる場所でロゼット型に輪を描くように広がって伸びるらしい。
出発前に、草丈、真っ直ぐ伸びて拡がるのか一カ所から放射状に広がって伸びるのか、長いのか丸いのか、薄いのか肉厚なのか、毛は生えているのか艶っとしているのか、ギザギザはあるのか、花はつけるのか、穂になるのか、形状は、開花期はどの季節のものなのか、一輪づつ咲くのか房咲きなのか、薬草なら匂いは強いのか、見本か図鑑はないのかまで訊くと、受付嬢のカムリーさんは、ポカーンと口を開けて私の顔をマジマジと見た。ちょっと失礼?
「あなた、自由民の経験があるの?」
「いいえ? ただの学生でしたけど。ただ薬草を採ってこいと言われても、知らないものを集めて来れる訳ないでしょ? せめて見本を見せてもらうか、図鑑を貸して欲しいです」
「モモカの言うとおりだな。当たり前のことじゃないか? まして、彼女は異世***、いや、チェゴ草を見たことがないんだからな」
ガヴィルさんも頷いているし、監督官兼案内人としてついて来てくれる剣士のお姉さんもニヤリと笑う。
「悪かったわ。初心者の若者には、見たことがあるからと詳細を調べずに飛び出していく人が少なくないのよ。だから、驚いたし感心したの。見くびってたわ、謝ります」
ちょっとだけ、株は上がったかな?
次話
🚯5 クリルマ草
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