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【萌々香 Ⅱ】
📵2 大聖女さまは王妃さま
しおりを挟む「王様はいないんですって!」
「は?」
愛唯が口を尖らして、ソファで足をバタつかせながら言う。
どうやら、愛唯は、この国に貢献を続けたら、物語にあるように王様や王子様に会えるかもと期待していたらしい。
「昔は王国だったらしいけど、今は評議会が国をまわしているらしいわ」
神殿関係の上層部も関わってはいるらしい。
普通、国家と宗教は相性悪いものだけどね。民衆を導く上での手法に違いがありすぎるし。
でも、政治家や役人達と法曹界、自警団や警備兵などの治安局だけでは、魔物や魔獣から民も町も守り切れない。
魔物の脅威対策として、神殿の巫女や神官と言った魔法士や聖騎士が必要なのだ。
それでも、他国の魔物専門家のようにはいかず、都度対応するしかないという。
都度対応──襲って来たら聖騎士や魔法士を派遣して撃退する──しか出来ない状態で、どんどん国力は落ちていく。
だからこその最後の手段が、私達、女神の加護を受けた異世界人なのだ。
「あの代表者のオジサンが、総理大臣みたいなもの?」
「みたいね。国民が選出する訳じゃないから、大統領じゃないわね。評議員達も選挙じゃないみたいよ?」
王国だった頃の貴族や王族の傍流、国家予算に関わる大商人の子孫がそのまま議員を務めているらしい。
王様が居なくなってそのまんま、国王も宰相も居ない無秩序状態で上流階級が牛耳ってんのね。
そんなんでよう国として保ってんな。いや、保ててないからこその国力低下と、緊急避難措置の私達なのか。
「大昔に異世界人を召喚した時は、国中を囲う高くて長い大きな魔障壁を建てて『大聖女』と呼ばれた女性が結界を張ったんですって」
「それって、例えば美土里の防護領域の強化版を張れれば何とかなるものなの?」
──一度張ればずっとある訳じゃないから、どうかなー
やっぱりそうよね⋯⋯
「え? 無理よ。まだ、自分と、あたしの肩に手を触れた人2~3人護れるかどうかよ? 国中を囲うなんてとてもとても」
そう言って手を振る美土里。
「例え出来たとしても、そのバリアを維持しなくちゃいけないやん? やっぱり無理じゃないかな」
「その大聖女さまは、当時の王子様と結婚して王妃になったらしいわよ? 美土里」
「ええ? 王妃様かぁ。美味しいものたくさん食べられたらいいけど、政治とか外交とか、面倒くさそう」
「綺麗なドレスや宝石も貰えるんじゃない? 国の女性の代表でしょう? 見窄らしい格好は出来ないわよ」
「王子と結婚って、結界を張れる聖女を逃がさないための、囲い込みと言うか、権力の檻?」
あ、言わなきゃ良かったかな、王族の仲間入りにキラキラトークしてたのに、二人とも黙っちゃった。
「ま、今は王様は居ないんだから、王妃にもなれないわよね」
愛唯が肩をすくめ、まとめてくれた。
今はこの国には居ないみたいだけど、周辺諸国には居るんじゃないのかなと思ったけど、愛唯がその気になった時に面倒が起こりそうなので黙っておいた。
──うん、隣にも国王は居るし、皇帝が国王や大公を統括してる帝国もあるよ
うん、その情報、二人には教えないように、周りの精霊達にもお願いしておいてね?
──解った! 黙っとくよ
素直な精霊達は、近隣国の情報は二人には与えないと誓い合ってくれた。
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