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【萌々香 Ⅰ】
🚱15 火の玉
しおりを挟む私達のような未成年の女子に危ないことをさせる神経を疑ったけど、それも含めて愛唯が文句を言うと、代表者っぽい男性は、にこやかに揉み手をし、背後の若者を前に進ませる。
若者が抱えている石材の台座には、ありがちな、大玉の水晶玉が柔らかい厚地の布に包まれて鎮座していた。
「これに触れて瞑想なされば、各々方に女神様より授かっておりますはずの加護の息吹と固有能力を確認することが出来ますので、ささ、順番に」
まだ、引き受けるとも、魔物を退治なんて可能なのかの確認も出来てないのに、強引にやる前提で話を進める代表者っぽい男性。
「瞑想とか言われても⋯⋯」
「手を添えるだけでも、だいたいは解るはずですから」
ここで突っぱねてもごねても先に進まないと思ったのか、実は興味があったのか、愛唯がそろそろと、大きな大理石風の石材のテーブルに置かれた水晶玉に手を添える。
水晶玉が芯の方で淡く光り出し、本当に何かドッキリ企画じゃないのかという疑いが再び擡げてくる。
静電気で放電するああいうガラス玉あったよね。
芯の方の光は金色に変わり、その中から赤い蛍火のようなものがふわふわと出て来て愛唯の腕をのぼり、驚いた愛唯が玉から手を放しても、その赤い蛍火はどんどん伸び拡がって愛唯の全身を覆い尽くす。
「な、何なの? これ」
「おお、御遣い様の加護は身体強化と防御──身を護る力ですな」
「この赤いのが?」
「い、いやいや。今説明させていただきましたのは、女神様からの加護で強化された、元々御遣い様の持たれているお力です」
「その赤い霊気は、火の精霊の守護を得られたということです」
「火の術がお得意なのでございましょう」
「術なんて使ったことないわ。忍者みたいに火を放てるとか、ゲームみたいに火の玉を発生して投げつけたり出来るって事?」
「遊戯ではございませぬ。真実、精霊の守護を得て火の魔術が使えるようになったのですよ。恐らく元々お持ちの魔力の属性が、火と相性が良いのでしょう」
赤く仄光る自分の手を眺めながら、握ったり開いたりする愛唯。
「ゲームとかだと、ここで火をイメージして『ファイア』とか言うと手に火が⋯⋯」
そこまで話して絶句する愛唯。
なぜなら、本当に手の平に火の玉が現れたからだ。
「さすがです。使ったことがないとが仰ってもすぐに使いこなしておられる」
愛唯は、少し嬉しそうだった。
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