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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女

人生の大半を共に過ごした友がいない……

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 文字がわからない。イメージとしては、特に語学に堪能でない一般人が、アラビア語や古代の象形文字を見た時の、アルファベットのように表音文字なのか、漢字のように一文字毎に意味があるのかすら判らない状況を想像してみていただければ……

 私は、幼稚園にあがる前からひらがなカタカナ、一部の漢字は読めていた。

 父がよく漫画雑誌を買ってきていたので、最初は絵を眺めていたけれど、それでストーリーはなんとなく解るのが漫画。

 子供向けの文字を覚える玩具がある。プラスチック製のタイプライターのような形で、「り」のキーを押すとリンゴの絵がついたパネルが、ピアノの鍵盤のように立ち上がる。
「み」を押せばみかんが、「く」を押せば靴が……というように、おバカさんな私でも、たちまちひらがなカタカナはマスターした。
 文字が読める楽しさが高じて漢字好きになり、後に大学で知った漢字検定を受ける程、文字好きになっていた。

 余談だが、「る」のルームクーラーだけは今も納得がいってない。だって、当時の私のまわりの子供のどのお宅も、扇風機はあれど、クーラーがあるのはお金持ちって感じで、涼しい田舎町だからもあるだろうけど、クーラーを見た事がなかったのだ。
 馴染みの無いものを使うなってね。だったら、なにを使うのかって言われたら、「る」に相応しい物がすぐには思いつかないけど。

 ある程度大きくなって、京都や大阪の街中の喫茶店で壁一面の大きなエアコン(たぶん今からすれば結構旧式)見てすげーってなったくらい。

 たぶん、ホテルやデパートにもあったんだろうとは思うけど、ああいう見た目や雰囲気を大事にする所の物は目立たないように工夫されてたり、子供の気をひく物ではないから、気にした事なかった。

 ので、父の買ってくる少年漫画が教科書に、勿論内容は殆ど覚えてないけど、知らない言葉の意味は解ってなかったけど、ふりがなもあることだし、読み上げるだけは出来ていた。

 幼稚園で、毎月、絵本を配る習慣があった。
 ひかりのくに、キンダーブック……

 教室の黒板の前に長テーブルを並べ、何種類かの絵本を数冊づつ積み上げられる。
 まずはその月に誕生日を迎える子供だけが先に好きなのを選べ、その後、全員が1冊づつ手にすることが出来る。
 おっとりしてた?私は、バーゲンセールのオバサンも真っ青の戦場に加わるのは避け、一通り揉め事が終わった後、残り物から選ぶ人だった。
 おかげで、同じ絵本が家に何冊かあったりする。人気のない同じ物ばかり残るから。

 上の弟は毎月面白い物をきっちり選んできてたけど。
 誕生日の11月だけは、ずっと欲しかった、おひめさまとしろいりゅうをちゃんととれた。


 話は反れたが、基本、私のそばには、何かしらの本があったのだ。漫画。絵本。児童書。小説。

 お小遣いの殆どが漫画や小説に消費され、後は文具に消える。
 大学生になる頃には、納屋の二階部分すべてが私の本で床がミシミシ鳴るほど。
 勿論自室も本に溢れ、阪神淡路大震災の時は、本棚から雪崩れてきた本に埋まって、どうやって本を傷めずに這い出ようと考えたほどだ。

 その私が、本が読めない。これほどツラい事があるだろうか。
 返して貰ったスマホも、異世界にいたのでは、ネット小説を読むことも出来ない。
 メモリに記録した電子書籍を読もうかとも思ったが、この世界において充電する事が出来ないので、やめておいた。

 読むかどうか判らない状況でも、最低2冊は本を持ち歩く私が!
 夏期学校(夏休みすぐにある臨海・林間学校の事)に行くのに、着替えの鞄とは別に、本を詰め込んだ鞄を重くても用意した私が!
 そこまでしても読み切って、友達のを借り、友達の姉のを借り、数千円しか持たされなかったお小遣いで本を買い足してた私が!

 ここしばらく、この世界に来てからずっと、本が読めない。

 背中が痒いのに手が届かなくて我慢できない苦しさや、あちこち痛みに近い怠さが我慢できなくて堪える時のツラさ。
 アレルギー症状で呼吸困難になった時に喉の浮腫が治まるまで待つ時に近い苦しさが襲うのだ。
 子供の頃から何度も読んだ同じ本でもいい!
 レビューでメタボロに酷評されたつまらないと評判のしょうもない読み物でもいい!

 私に読める本をくれ!


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