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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
120.精霊達の祝福
しおりを挟む潔斎食を食べ終わり、カインハウザー様とリリティスさんと、パーカーのような上着のフードで顔を半分隠したィグナリオンと、領主館を出る。
「シオリちゃん、本当に大丈夫?」
「はい。ゆっくり眠らせていただきましたから」
なにせ、昼過ぎに美弥子から逃げて、小屋に帰ってすぐ、負の感情を暴走させて倒れて、数時間後にまた、身体だけでなく夢も見ないくらいに頭まで深く眠ったのだもの。
美弥子に言われたことは、正直今もつらいけど、それに囚われてばかりでは、まわりを巻き込んで恐ろしい事態を引き起こしてしまう。
カインハウザー様も仰る通り、ここでは、美弥子の父親に世話になっている訳ではないし、美弥子のそばで身を小さくしている必要も、ないはずなのだ。
何かしら、美弥子達がこの街に何度も来たくなるものがあるのなら、この街から少し離れて暮らそうかな。
その内、彼女達は本格的に『聖女』と巫女達として、浄化の国内行脚に出るはずだし。それまでだけでも⋯⋯
私の笑顔を見て、安心したのか、リリティスさんも微笑み返してくれた。
今日も、美弥子達は来るだろうか⋯⋯
街の人達も多く広場へ向かっている。
人々が一カ所に集まる分、街の中が手薄になるので、要所要所に衛士隊の人達が立っている。
巡礼者も含め、ハウザーの精霊祭を観に来る人もいるので、警戒は緩められないのだろう。
「衛士隊の人達は、お祭りを楽しめないんですね」
「八日間あるんだ。参加したい日、しなければならない日は休みにしているよ。みんな交代でね」
「毎年同じにならないようにも、シフトは組んでいるから、みんな気にはならないみたいよ?」
元々街を護ることに誇りのある人達だから、文句もないのだろう。
途中見かける衛士隊員には必ず声をかけ、労うカインハウザー様。リリティスさんも一言二言かけていく。
私は会釈したり挨拶したりで、後をついて行くけど、シーグはぺこりと頭を下げるだけだったりする。狼犬の時は愛想がいいのに、なぜか人型になると人見知りするのが不思議だった。
収穫祭開催初日と同じく広場の櫓台で、カインハウザー様とリリティスさんの後ろに立ち、精霊祭に寄せる想いを語る領主さまの顔をしたカインハウザー様を見ている。
平成の日本で考えると、22歳の市長や県知事って事だよね。若い!
そんなことを考えていると、
「シオリ」
カインハウザー様に呼ばれていた。
「はい」
「君が知り合えた精霊や妖精達に、気持ちを伝えるんだ。口に出しても出さなくてもいい。祈るだけでも通じるしね」
カインハウザー様もおそらくそうなんだろうけど、精霊達の愛し子だと思われる私が祈る事で、精霊達が喜ぶのだという。
「今日まで助けてくれた精霊達、妖精達みんなに、感謝しています⋯⋯」
目を閉じ、みんなを思い浮かべる。
いつも日常生活で手助けしてくれる小さい子達、穢れを祓うために力を貸してくれる子達、闇落ちから護ってくれた子達。
畑で作物の世話の手助けをしてくれるサヴィア、籾っ子ちゃん達。
この世界に喚ばれた時からずっと見守ってくれてたサヴィアンヌ。
神殿から放り出された時からそばにいてくれたフィリシア。
私を助けてくれた精霊達が集まって、私の感情を核に個性を持ったアリアンロッド。
みんなみんな、あなた達がいなければ、この街も守れず、私も生きてなかった。
「護ってくれて、助けてくれて、仲良くしてくれてありがとう。みんなも、この世界で幸せになれますように」
「シオリ⋯⋯!!」
カインハウザー様が驚きの声を微かにあげる。
私のまわりに飛び交っていた精霊達がきらきらと輝きだし、くるくる螺旋を描きながら空へと高く舞い上がっていった。
広場に集まっていた人達が一斉に歓声を上げ、空を見上げる。
きらきらと光の粒が降ってきて、この広場だけでなく、街全体に降りそそいでいた。
人々の様子を見るに、ほぼ全員が、精霊達を見、この光の粒を浴びていることを認識しているらしい。
「⋯⋯全く、シオリはいつも意図せずやってくれるね」
「これ、私がしたんですか? そんなつもりは⋯⋯」
「シオリの言葉に喜んだ精霊がやったことだけど、シオリの言葉があればこそだろう?」
私の言葉に喜んだから?
「カインハウザー様が感謝を伝えてもこんなことが?」
「まさか。君は、感謝の気持ちを伝えるだけでなく、精霊達も幸せにと願っただろう? 魔術を使える者達も、魔術を発動してくれたり守護してくれる事を感謝する者はいても、精霊達の幸せを願う人は、わたしは見たことがないからね」
君には本当に驚かされるよ。そう言って、カインハウザー様は困ったように笑った。
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