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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
73.精霊に急かされて
しおりを挟むサヴィアンヌはニヤニヤし、思慕の精霊は私がシーグに告白するまで離れさそうで、どうしたらいいのか……
「シオリ。どうかしたのか?」
「え、あ、あの……」
やだ! まだなんにもないのに、顔が熱くなる。
挙動不審な私の様子に、何か感じたのか、シーグは神殿のテラスから降りてきて、真正面に立つ。
「顔が赤いな? 風邪をひいたのか?」
気遣わしげに額に手を当てるシーグ。
明るい場所で見るのは初めてじゃないのに…… なんで、こうなるの?
《早くぅ。勢いで言わないと、どんどん言いづらくならない?》
思慕の精霊がせっついてくる。確かに、後になればなるほど言いづらくはなるだろうけど、言う必要ある?
《あるわよぉ。言わなきゃ伝わらない事ってあるでしょう?》
感情を司る精霊だからなのか、口に出さなくても言いたい事は伝わるらしい。
見かねたフィリシアが助け舟を出してくれる。
《シオリは、シャイなの。すっごく恥ずかしがり屋なのよ》
《あら、なら尚の事、一度はきっちり伝えておくべきじゃない?》
「なんの事だ?」
シーグは、風や光の精霊の加護持ちで、精霊が視える人だ。会話もできる。
思慕の精霊に何かを急かされていることはわかるのだろう。
このやり取りだけを切り取ると彼にはなんのことだかわからないだろうし、こうなってしまうと、むしろ言わないと彼に隠し事をしているような形になってしまう。
とても恥ずかしかったが、覚悟を決めた。
「あ、あのね。神殿のテラスで、風に髪を靡かせて……」
「うん」
「太陽に照らされて髪がいつもより金色に、ね、光ってたでしょ?」
「うん。ここは、今までいた場所の中でも、一番風が心地良い場所だな」
「それで、その……」
「うん」
顔を赤らめ、俯く私の顔を、腰を折って覗き込むシーグ。琥珀のような瞳がまっすぐ私の眼を覗き込んで、更に顔の熱があがる。
「わ、笑わないでね?」
「笑わないよ。何?」
「う~ ……あのね、風に靡く金の髪とか、光に透ける琥珀の瞳とか、その、キラキラしてて綺麗で……」
「シオリのほうがキレイだろ?」
そこでそんなこと言うの反則!!
サヴィアンヌのニヤニヤが止まらない。近寄って来て下からのぞき込んでくる。くっ!
「いつもよりキレイで、カッコいいなって」
「……ありがとう」
シーグまで頰を赤くする。
《ほら、本題がまだよ》
「本題? まだ何かあるのか?」
《景観の特別効果でいつもよりかっこよく見えるのは、ただの事実と心理効果でしょ? そこで終わっちゃったらただの事実確認じゃないの》
「……? 言ってる事がわからないな? 事実確認して、それで?」
「そ、それで、だから…… その」
察してくれとは言わないけど、こんなこと言ったことないのよ。
《ホラ、シオリ、ファイトヨ!!》
《大丈夫よ! 私が保証するわ》
なんの保証ですか!? 涙目になってくる。でも、きっと、今じゃないとなかなか言えないのも確かだろう。目を瞑って、頑張る!
「かっこいいから、惚れ直したの‼」
「……!!」
神殿参拝のあとは、昼食になる。
神殿から少しだけ離れた場所に、山荘がいくつか建っていて、宿泊施設を兼ねていたり、食堂と売店になっていたり。
私達も、そのひとつで遅めの昼食を摂る。
現在、私は、何を食べても味がしない状況だ。
ルーチェさんのご家族に、生温かい目で見られている……ような気がするのだ。
私の、半ば強制的に言わされた感の拭えない告白に、シーグは耳まで赤くしてそっぽを向き、口元を右手で隠す。
でも、空いた左手は、私の右手を握り込んできた。
食事にしようと声をかけてくれたルーチェさんは、頰を染めて後ろを向くし、ご家族に合流して食堂の席につくまで離されなかった手は、みんなの視線を集めたように思われて恥ずかしくて仕方がない。
シーグはずっと楽しそうで、食べ終わっても、次の神殿──静謐神殿への馬車に向かうまでご機嫌だった。
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