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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
49.うさぎの人
しおりを挟む〝バニーガール〟は失礼だったかもしれない。
でも、レザージャケットにレザーパンツ。お尻の一部がVの字に切れ込んでて、ふわふわのお尻尾が出てる。
ミルクティ色の髪をかき分けるように、頭のやや後ろてっぺんに近い位置に少しだけ長めの耳があり、漫画のように腕ほど長いお耳ではなかったが、お耳とお尻尾は、ほぼバニーガールのようである。
手足は艷やかな肌に見えるが、よく見ると細かい産毛に覆われていて、真珠色の毛並みがとても美しい人だった。
可愛らしさと美しさが混じる容姿に反し、出で立ちは勇ましかった。
背に矢筒、腰に細剣。肩に弓を抱えていて、まるでファンタジー世界のうさぎの獣人の冒険者みたい。
シーグ以外で、ケモミミの獣人さんは初めて見た。
ギルビッタさんの呟きからして、この辺りではあまり見かけない人種なのだろう。
「とても綺麗な方ですね。お耳もお尻尾も素敵。真珠色の被毛もとても綺麗⋯⋯」
私の呟きは聞こえたのだろう、お耳が少しだけ動き、肩越しにこちらをチラッと見た。
慌てて口を押えても遅い。目が合ってしまう。
でも、少しだけ、目の印象が柔らかくなったような気がしたから、微笑んだとか、わかりにくい程度に会釈したのかもしれない。
「でも、勇気あるわよね。この辺りで兎人なんて、差別されたり狩られたりしないのかしらね」
「だからこそのあの武装なんじゃない? ワザと人の多い場所を選んでるのかも?」
称号に過ぎない権威の低い爵位にしがみつく人がいる、カインハウザー様が冷遇されるような貴族社会のお国だから、獣人も下に見られるのだろうか。
「あまりいい扱いは受けないでしょうね。
王都だと、商店でも正規の値段で取引させてもらえなかったり、宿に泊めてもらえなかったりする事もあるって聞くわ」
使い魔はいいのに、獣人さんはだめなの?
人種差別みたいなものなのかしら。あのお耳やお尻尾を引っ込めて、ヒトのふりはしないのかな。
「変身出来る二姿魔族ならともかく、兎人はあのままよ?」
「大きめの帽子をかぶるとか、コートで尻尾を隠すくらいは出来るでしょうけどね」
獣人みなが、シーグのように姿を変えられる訳ではないらしい。
獣人とは言っても、目鼻口も人のそれと同じだし、被毛だって、遠目にはツヤ肌くらいにしか見えない。お耳の形と尻尾があるというだけで、差別されるなんて。
「兎人はまだ人に近い部分が殆どだし可愛らしい部類だけど、虎人とか爬虫系とかになると、猛々しい獣っぽさやかなり人外って見た目だから、敬遠されがちよね」
「一部の貴族はともかく、一般人は、トラブルを起こさないためにも住み分けるって暗黙の了解的な感じかしら?」
「それに、魔力や霊気を読み取れない一般の人には、魔物と獣人の違いは解りづらいってものあると思うわ」
人は、自分たちと違う、よくわからないものを恐れたり、心の安寧のため排除したくなるもの。そこから争いや諍いが起こる。
それは、あちらでもここ異世界でも変わらないということだろう。
肌の色や骨格の微妙な違いの人種どころか、人とそれ以外の違いまであるこの世界は、仲よく暮らしているのだと思っていた。
神族、精霊、妖精族、獣族、獣人族、魔族、一般的な動物と魔力を持つ魔属。
私が今いるこの世界は、科学の代わりに魔術があって、人間と動植物以外の、精霊や獣人なんかもいて⋯⋯
でも、ここはお伽噺のような優しい世界ではなかった──
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