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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
47.山頂で食べる名物料理
しおりを挟む山頂付近で、馬車が停車する。
遠くにカラカル山地と山頂の大神殿、近くの谷に綺麗な川と森の眺望が素敵だった。
「食事休憩ね。御者も護衛も休憩しなくちゃいけないしね」
スキー場のロッヂのような、丸太を組んだログハウスがあって、中には、食事をする登山客っぽい人達や、行商人風の人が居て、この馬車の乗客も入って行く。
現代日本のように、旅行したりピクニックなどの休日を楽しむような豊かな生活は、庶民にはあまりない事らしく、ここで食事してる人達は、何らかの理由でこの山を超えなくてはいけない人達──主に商人や職業旅人が殆どだという。
「まあ、この、収穫祭前の一時期は、一年の感謝の巡礼をする人が増えるから、巡礼者も少なくないけれどね」
「後は、収穫祭前の納税で、王都や商業都市を行き来する人達かしら?」
そう言えば、この三人は、王妃様のお使いだと言っていたけれど、荷物を、魔法錠をかけるとはいえ、置いて一晩宿に泊まるくらいだから、荷物に要件の物は入っていないんだろうけど、なんの用なんだろう。
私も、なんで乗合馬車に乗ってるのかって訊かれたら、サヴィアンヌが乗りたがったからで、旅の理由を訊かれると答えられないし、だから彼女達の目的も訊けないんだけど。
「ここはね、この景色を見ながら食べるパンケーキが美味しいのよ」
「こんな場所だから、出来る料理も限られるでしょう? パンケーキなら、付け合せで食事にもおやつにもなるし、粉を混ぜて焼くだけだから簡単でしょ?」
「なのに、すっごく美味しいのよね」
お城で働く、王妃様の近くの女官たちなのに意外に旅慣れてるのね。
旅慣れてるのかと訊ねると、ここのパンケーキは有名で、お城の下位から上位までの女官や官吏の間でも、ファーマーズに行く時には必ずここを通るから、食べて行けってよく言われるらしい。
一度食べたら、王宮の職員食堂より断然美味しくて、以来、この路線を行くときは、必ずクルズで一泊して、このココネの山でパンケーキを食べる事に決めているのだとか。
もちろん、私もパンケーキを頼んだ。
驚きました。
二種類あって、一つはほぼホットケーキ。甘さのないクリームが少しだけついていて、お昼時なので、薄切りの茹で腸詰めスライスが三枚と、桃っぽい果物がついていた。
もう一種類は、スフレチーズケーキにしか見えない。ふわふわで、フォークを刺すと、メレンゲが潰れるような音がする。
生活魔法がある世界なので、電動泡立て機がなくてもこういう物も簡単に作れるのかもしれない。
「美味しい!!」
「でしょでしょ!?」
ロレッタさんたち三人は、目をキラキラさせて、パンケーキを食べる私を見ている。
う~ん、これは、アレを使いたいなぁ。
足元に置いた背負袋から、フィオちゃん本舗の妖精の蜂蜜を出して来て、一匙パンケーキにかける。
「ええっ。そんな贅沢な事するの?」
「え⋯⋯と、私の故郷では、蜂蜜やメイプルなんかのシロップをかけて食べるのが普通だったので、つい」
そうだった。この世界では、養蜂もなくあまり蜂蜜は普及してないんだった。
でも、毒を抜いたり状態異常回復の魔術があったり、麻酔のような、麻痺霧弾や導眠なんかの魔術もあるんだから、蜂の巣は簡単に取れそうな気もするのだけど。
三人が、私の手元をじっと見る。食べづらいデス。
「あの、皆さんも使います?」
まだ在庫はあるし、そう訊かないわけにはいかない雰囲気だった。
「いいの!?」
「まあ、まだこんなにありますから⋯⋯」
持ってきた瓶の中身はそんなに減ってない。サヴィアンヌの食事の花蕾にかけるくらいしか使ってないから。予備ももう一瓶あるし。
この世の蜂蜜はすべて自分のものと言い出しかねないほど、恨みがましくサヴィアンヌが見ていたけれど、敢えて見ないふりで、三人のパンケーキにもかけてあげる。
「うま~」
「これが、フィオちゃん印の蜂蜜の味!!」
「本当に、家にあるのとは全く違いますわ」
普通のが、あることはあるのね。噂にもなってるらしいフィオちゃん本舗のが食べてみたかっただけかしら。
食事休憩も終わり、再び馬車の旅に戻る。
今度は下り坂である。横の窓から見える景色は、どこか懐かしい山林の美しい景色だった。
「フィオちゃん、見て?」
「あれが、王城。その手前が、貴族達のタウンハウス街。林を挟んで手前が、商業地区と、工業地区などのダウンタウン」
「山の麓が、王都在住の、商人や町民の暮らす住宅街と田園地区」
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そこから迷路のように高い壁が張り巡らされ、目的ごとに区画分けされた、城廓都市になっていた。
──ん? 王都? 今、王都って言った?
「そうよ。我がヴァレンティノ王国の王都、ヴィスコスよ」
あれ? 私、王都は避けなくちゃいけないんじゃなかったっけ?
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