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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
26.妖精王がそばにいる理由は?
しおりを挟むなぜかいつもほど協力的でないサヴィアンヌは、妖精達がいっぱいいる花畑の方へ行ってしまった。
そもそも、ずっと一緒にいるから考えてもみなかったけど、どうしてサヴィアンヌは、私と一緒にいるんだろう。
アリアンロッドは、私の感情を核に造られた、いわば人工的な大精霊で、私のそばにいるのは、元となるものが私の中にあるから、そばにいると安定するのだと、カインハウザーさまは言ってた。
だから、私のそばを離れないのだと。それはわかる。
シーグも、生涯を通じてそばにいてくれると、大人になったら番いになるって約束したから、かっ、彼氏みたいなものよね? 或いは婚約者? 改めて考えると照れるわ。
でも、サヴィアンヌは?
《シオ? 光弾要る?》
可愛らしい少女の顔で、私を覗き込むアリアンロッド。
最初こそ、私に似たアウトラインをしていたけれど、今でははっきり違う姿になっている。縦に巻いた髪、西洋人の子供のような、天使の絵のような姿。
きっと、アリアンロッドって名付けた事で、私の中の、北欧神話の女神のイメージが膨らんできているのが影響しているだろう。
「アリアンひとりでは、無理でしょう?」
《ん~、クロクロ・動かない。まだ、モヤモヤ。イケる、かな?》
「俺の国でのやり方で、一度、風の精霊を呼んでみたらどうだ?」
シーグの国では、光の精霊に併せて、風の精霊をたくさん呼び、まずは淀んだ空気を吹き飛ばして入れ替え、光の霊気を載せた風の精霊で森中を飛び回って、穢れに育つ前の澱んだ感情や闇の気配の凝りを綺麗にしてもらうのだとか。
その後で、残った穢れを祓い、それでもしつこく残っている瘴気を浄化するのだという。
「まあ、今ではその風の精霊を呼べるやつも減って来て、気紛れに俺に手を貸してくれる精霊たちの世話になりっぱなしだったんだが……」
今ではどうなってるのかな
たぶんそう続けるつもりだったのだろうけど、口を閉ざし、森の方へ向き直ってしまった。
そういえば、シーグの国の話はあまり聞かない。
気にはなるけれど、根掘り葉掘り聞きたいわけじゃないから訊かずにいるけど、却って冷たいやつだと思われてないかしら? 話を聞いてあげたほうがいいのかしら。
「どうすんだ? 風のを呼んでやるんなら、陽が落ちる前のほうがいいぜ? 陽が落ちたら闇の霊気のほうが優位になるからな」
アリアンロッドや私に負担になるかどうか、ならない訳はないだろうけど、旅を続けられる程度なのか、動けなくなるほど消耗してしまうのか、尚且つ、それでも尚払いきれないのか……
瘴気だの穢れだのが、ファンタジーなフィクションの中だけの世界から来た私には、判断の目安がない。
「まあ、浄化するかどうかはともかく、穢れが増えないように、風で澱んだ空気を祓うだけはしとけば?」
それもそうだ。それすら出来ないなら、祓うなんて無理だろう。
森の方へ向き直り、風の精霊たちを探すことにした。
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