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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

21.シーグは眷属・・・じゃなかった?

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 町とはいえ、ハウザー城砦都市のように高い壁で囲われているわけではなく。

 街道を挟んで左右に、居住区と商業区が広がり、ここからマガナですよという感じの標識が立っているだけだった。

「関所はないのね」
《まあ、商業を優先して、広く開放してるからネ。それでも、不審な動きをする人は、自警団に木札(身分証)あらためられたり、詰め所に連れて行かれて査問されたりするワヨ》

 おのぼりさんみたいにキョロキョロしすぎないデネ。

 ケケケとサヴィアンヌが笑う。等身大の女王姿だと人目を引くので、ピクシー風に、虹色の蝶の翅を生やした小人コビトの姿で、私の肩やシーグの頭の上にとまったり飛んだりしていた。

「でも、よかったわ。シーグの木札も出せって言われたら困るところだったもの」
「そうか…… 街に入る時は、狼になってないと駄目か」
《アンタ、大型だから、魔獣と間違われて大騒ぎになったりシテ》

 サヴィアンヌは、サヴィアほどではないが、シーグに対して扱いが良くない気がする。眷族って、下僕とか手下って感じなのかしら?

「は? 下僕? 俺が?」
《アンタ、信じてたの? アレ》
「え?」

 ふたりが呆れた顔で私を見る。

 だ、だって、カインハウザー様たちに、そう紹介したんでしょ? 違うの?

《方便ヨ。ワタシのベッド兼乗り物になるんダシ「誰が乗り物だ、ベッドでもないぞ」
 シオリに惚れ込んで離れない、シオリの為に何でもするオス狼デショ?「おい、その言い方は……」
 森を根城に過ごしてたのも嘘じゃナイシ、精霊の加護を持った強い狼デ、他の魔獣は近寄らないんダモノ、嘘じゃナイワヨネ?》
「それって、殆ど嘘なんじゃ……」

《シーグの強さに低級魔獣は近寄らず、野生動物はシーグの牽制に従イ、シーグに加護を与える精霊達は、森を清浄に保ってイル。ホラ、あの森の獣王デショ》
「う、う~ん、そう、なのかな……」

《ワタシを妖精王として認めそれなりに敬意を払い「敬ってない」ハイハイ。
 シオリをつがいと定めて付き従い護るオス狼「だから、言い方……」ハイハイ。
 の森の獣王。
 魔力の高さから、魔獣と間違われそうな、精霊の加護持ち。
 ホラ、ワタシやシオリの眷の条件は揃ってるワ♬》

 ん? 眷? 眷じゃなくて?

《マア、イイじゃないノ。それで、あの場ハ収まったんダカラ》
「よくない。俺が、サヴィの手下扱いじゃないか」
《たいして変わんないワヨ》

 サヴィアンヌがシーグを眷として紹介したのを信じてたから気にしてなかったけど、そうじゃないのなら、彼は、どこから来たの?
 そう言えば、神殿の人達から私の扱いと同様の仕打ちを受けたみたいな事を言ってたっけ?

 あれ? シーグもまさか?

「ほら、倉庫を作ったから、旅の必需品を揃えるんだろ? 店を見て廻ろう?」

 爽やかな笑顔で、私の手を取って柔らかく握り込み、雑貨を扱う店や露天商が並ぶ方へ引いていく。
 太陽の光を反射して、黄金の眼も金茶の髪も、きらきらと光っていた。





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