183 / 294
Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
21.シーグは眷属・・・じゃなかった?
しおりを挟む町とはいえ、ハウザー城砦都市のように高い壁で囲われているわけではなく。
街道を挟んで左右に、居住区と商業区が広がり、ここからマガナですよという感じの標識が立っているだけだった。
「関所はないのね」
《まあ、商業を優先して、広く開放してるからネ。それでも、不審な動きをする人は、自警団に木札を検められたり、詰め所に連れて行かれて査問されたりするワヨ》
おのぼりさんみたいにキョロキョロしすぎないデネ。
ケケケとサヴィアンヌが笑う。等身大の女王姿だと人目を引くので、ピクシー風に、虹色の蝶の翅を生やした小人の姿で、私の肩やシーグの頭の上にとまったり飛んだりしていた。
「でも、よかったわ。シーグの木札も出せって言われたら困るところだったもの」
「そうか…… 街に入る時は、狼になってないと駄目か」
《アンタ、大型だから、魔獣と間違われて大騒ぎになったりシテ》
サヴィアンヌは、サヴィアほどではないが、シーグに対して扱いが良くない気がする。眷族って、下僕とか手下って感じなのかしら?
「は? 下僕? 俺が?」
《アンタ、信じてたの? アレ》
「え?」
ふたりが呆れた顔で私を見る。
だ、だって、カインハウザー様たちに、そう紹介したんでしょ? 違うの?
《方便ヨ。ワタシのベッド兼乗り物になるんダシ「誰が乗り物だ、ベッドでもないぞ」
シオリに惚れ込んで離れない、シオリの為に何でもするオス狼デショ?「おい、その言い方は……」
森を根城に過ごしてたのも嘘じゃナイシ、精霊の加護を持った強い狼デ、他の魔獣は近寄らないんダモノ、嘘じゃナイワヨネ?》
「それって、殆ど嘘なんじゃ……」
《シーグの強さに低級魔獣は近寄らず、野生動物はシーグの牽制に従イ、シーグに加護を与える精霊達は、森を清浄に保ってイル。ホラ、あの森の獣王デショ》
「う、う~ん、そう、なのかな……」
《ワタシを妖精王として認めそれなりに敬意を払い「敬ってない」ハイハイ。
シオリを番いと定めて付き従い護るオス狼「だから、言い方……」ハイハイ。
ワタシのカラカル山の森の獣王。
魔力の高さから、魔獣と間違われそうな、精霊の加護持ち。
ホラ、ワタシやシオリの眷属の条件は揃ってるワ♬》
ん? 眷属? 眷族じゃなくて?
《マア、イイじゃないノ。それで、あの場ハ収まったんダカラ》
「よくない。俺が、サヴィの手下扱いじゃないか」
《たいして変わんないワヨ》
サヴィアンヌがシーグを眷属として紹介したのを信じてたから気にしてなかったけど、そうじゃないのなら、彼は、どこから来たの?
そう言えば、神殿の人達から私の扱いと同様の仕打ちを受けたみたいな事を言ってたっけ?
あれ? シーグもまさか?
「ほら、倉庫を作ったから、旅の必需品を揃えるんだろ? 店を見て廻ろう?」
爽やかな笑顔で、私の手を取って柔らかく握り込み、雑貨を扱う店や露天商が並ぶ方へ引いていく。
太陽の光を反射して、黄金の眼も金茶の髪も、きらきらと光っていた。
2
お気に入りに追加
2,706
あなたにおすすめの小説
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
みんなからバカにされたユニークスキル『宝箱作製』 ~極めたらとんでもない事になりました~
黒色の猫
ファンタジー
両親に先立たれた、ノーリは、冒険者になった。
冒険者ギルドで、スキルの中でも特に珍しいユニークスキル持ちでがあることが判明された。
最初は、ユニークスキル『宝箱作製』に期待していた周りの人たちも、使い方のわからない、その能力をみて次第に、ノーリを空箱とバカにするようになっていた。
それでも、ノーリは諦めず冒険者を続けるのだった…
そんなノーリにひょんな事から宝箱作製の真の能力が判明して、ノーリの冒険者生活が変わっていくのだった。
小説家になろう様でも投稿しています。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜
八又ナガト
ファンタジー
魔術師としての実力で全ての地位が決まる世界で、才能がなく落ちこぼれとして扱われていたルーク。
しかしルークは異世界に召喚されたことをきっかけに、自らに剣士としての才能があることを知り、修練の末に人類最強の力を手に入れる。
魔王討伐後、契約に従い元の世界に帰還したルーク。
そこで彼はAランク魔物を棒切れ一つで両断したり、国内最強のSランク冒険者から師事されたり、騎士団相手に剣一つで無双したりなど、数々の名声を上げていく。
かつて落ちこぼれと蔑まれたルークは、その圧倒的な実力で最下層から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる