異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

19.静謐?な空間魔法

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 シーグが準備してくれた携帯食で朝食を摂り、身支度を整えたら、出発である。

《シオリ、ちょっと手を貸して?》

 サヴィアンヌに言われて、大きな樫の木の前に立つ。ううん、樫の木に似てるけど、エルバレオにも似てるけど、なんか違うみたい。

《ソウヨ、これは、世界樹の木の子株。女神アルファが、ワタシの妖精王就任の祝いに分けてくれたものヨ》
「サヴィアンヌ、女神アルファさまと会った事あるの?」
《直接はないワヨ。意識の一部とお声だけネ》

 自慢気に胸を反っくり返って答えるサヴィアンヌが可愛い。

《ところどころ、うろがあるデショ? 妖精の蜜酒が隠されてる所や手が入らない所は除いテ、好きな所ヲ選んデ?》

 言われるままに、一つ一つ穴の中を覗いていく。お酒やキノコ、宝石なんかが入ってるところは避けて、もちろん届かないところも除外する。

 根っこの分れた隙間に、狐の巣のような穴を見つける。勿論、中には何もなかった。

《ふうん、イイトコ見つけるワネ。じゃ、手を差し込んデ、目を閉じて、手元に意識を集中シテ》

 意識を集中……? 手に魔力が集まってくるのが感じられる。少し動かすと、揮発性の液体のような希薄な手触りを感じる。

《マナや精霊達を感じるカシラ?》
「うん、たぶん、これがマナ…… 身体の中を巡る時と、手で感じる時とは違うのね」
《ソウ? 人間ヒトの感じ方は解らないワ。それを纏め上げて、練ってチョーダイ》
「纏めて、練る?」

 気楽に言ってくれるけど、私は、魔術が楽々行える魔術師じゃないのよ?

 とにかく、イメージを膨らませて──頭の中で、霧が纏まっていくような様子を、手応えがもわもわと温かくなってきたら、手の中に圧縮していく感じを、なんでもいいから無理やり想像する。

《いい感じヨ。それを薄く伸ばしてうろの中に、壁面に塗り広げるようにシテ》

 またまた難しい事を。今度は、親指と人差し指を擦り合わせるようにして、糸を縒るような感じで溜まった温かいものを伸ばしていき、薄く広げてペンキ塗りのように、虚の中を塗りつぶしていく。つもりになってみる。

《塗り残しはダメヨ、虚の形の袋が目一杯広がって中で密着してる感じにシテネ》

 汗が、閉じた目に滲みる。塩分がちょっと痛いわ。

《ダメヨ、気を逸らさないで最後まで丁寧にネ》
「う……ん、わかった」

 虚の中に差し込んだ手が筒で、マナと私の魔力を含んだ霊気、土と大気と水と光と闇の精霊が混合した温かいものがガラスの塊で、びいどろを吹いていくように広がっていき、やがて虚の中全面積にピッタリ張り付くように伸び広がった。

《ウン、イイワネ。星空? 海の底? どこでもいいワ、アンタの知る広い場所をイメージして、虚の中と重ね合わせテ!》

 私の知る、最も広い場所……と言ったら、やっぱり宇宙? ⋯⋯藍色、紺碧、藤色、水色、深紫、  こきむらさき 僅かに白、黄色など、複雑に色が散らばる満天の銀河と銀河の映る水面を想像してしまった。

《アラ! 素敵じゃナイ♡ その情景がどこまでも広がるイメージを固定しテ》

 水面に僅かに浮いた私が天井を見上げると、どんどん大きく広がっていく銀河に(自分の空想物なのに)感動して、一歩足を出すと、触れていないのに波紋が広がり、どこまでも静かで、ひんやりと涼しく心地よい清浄な空気を吸い込み、『静謐』ってこんな感じなのかしら? と思った。

《ワッ!!》

 ひゃあっ

 耳元で、サヴィアンヌが大声を上げると、ビックリして身を縮め、せっかくのイメージは消えてしまい、手も胸元へ引いていたので、木の洞からは抜いてしまっていた。

《いい感じに出来たジャナイ》

「何が?」
《アンタ専用のお宝部屋》

 木の根の分け目の奥はチラチラと星が瞬く深い青の闇だった。
 手を差し込むと、入り口いっぱいに波紋が広がり、まるで水面の扉のようだった。

《シオリの魔力と霊気──存在値を染み込ませたマナと精霊で作った異空間ダカラ、シオリしか中には入れないワヨ。
 ソウねぇ、入れるとしたら──アリアンと女神アルファくらいカシラ?》

 アリアンロッドはアンタの祈りと魔力を核に作られた精霊だし、女神アルファは、この世界のすべての存在の母──みなもとダカラネ

 しばらくは、中に物をしまうのも取り出すもの、サヴィアンヌがしてくれるらしい。

《早く魔法を使えるようになって、自分で出し入れするのネ》

 いや、ここでは『魔法』は、精霊と妖精しか使えないんじゃ……
 まあ、魔術もそのうちちゃんと習ってみるわ。

 こうして、私は、自分だけの異空間倉庫──いわゆるマジックポケットとかアイテムボックスとか収納とか言われる存在を手に入れた……と言っていいのかな、とにかく作り出したのだった。







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