異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

94.隣国の巫女と、カラカルの巫女?

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 カインハウザー様の左手に、紅茶の葉を使ったシフォンケーキを出す。

 今日も、私の焼いたケーキが、ひと仕事済ませたカインハウザー様のお茶のひとときに出される。

「ありがとう。シオリのケーキは、甘さ控え目で食べやすいのに、疲れによく効くから嬉しいね」
「私も、シオリのケーキは大好きよ」

 にっこり微笑まれるリリティスさん。少し、顔色悪いかな?

 リリティスさんのお茶に、こっそり少量の『妖精の蜂蜜』を混ぜて手渡す。

 結局、件の巡礼者が通った後を確認してまわった結果、鍛冶屋の戸口の穢れが一番強く、旅の必需品を買い足したのだろう、雑貨と保存食を扱った日用品店に少し、長くいた分の気配が残っているくらいだったらしい。
 それらは、日々の生活で排出される冥い感情の溜まった凝りと共に、朝陽と精霊の通常の営みで霧散する程度なのだという事だった。

「よかったです」

 大事がなくて。また、あんな感じでアリアンロッドを使わずに済んで。


「幾分、後始末が面倒だがな?」

 私のシフォンケーキをフォークでつつきながら、ドルトスさんが続けた。

「後始末?」
「たいしたことじゃないよ、それより、シオリのケーキをいただいてしまおうじゃないか」
「おいおい、そう言うことぁねぇだろう」

 なんとなく、ドルトスさんの言いたい事を遮るように、カインハウザー様が、フォークを手に振る。

「ああ、シオリ、例の巡礼者だけど」
 リリティスさんが、思い出したように、話題を変えた。

「はい」
「さっき、風の精霊が返事を持ってきたのよ」
「大丈夫だったんですか?」

 リリティスさんに促され、私もリリティスさんの隣に座る。
 サッとすかさず、メリッサさんが私の前に、みなさんと同じ、私の紅茶葉のシフォンケーキを置く。
 勿論、セルヴァンスさんも私の前にティーセットを並べて、空気を含ませるようにうまく紅茶を淹れてくれる。

「せっかくですから、お嬢様もお召し上がりくださいね」
「あ、ありがとうございます」
 お礼を述べてから、私もフォークを手にした。

「私の伝言を持った精霊が、例の巡礼者が国境に着くタイミングに合わせて、少し先回りして伝えたらしくて、入国時に祓えたらしいわ」
「本当ですか?」

 よかった!
 魔獣や野獣が闇落ちになったのは恐ろしかったけれど、触れるだけで感染するなんてとんでもない恐怖だけど。
 それが、人間で、顔見知りだったりしたら……

 どれだけの恐怖と悲しみと、心に傷を負うか解らない。
 穢れを落とせてよかった。

 あの、地球で言うゾンビとかアンデッドのような姿と、その強い感染力の恐れもそうだけど、闇落ちになってしまったら元に戻せない、巫女の力で瘴気を落とし精霊の槍でほふった後、女神の掌に たなごころ 還って、魂が癒されるまで眠るしかないという、失敗したからといって退治のやり直しもならず、異形になったら治療が利かないのがなんとも恐ろしい。

偶々たまたまね、ふたりいらっしゃる巫女のおひとりと、引退なされた巫女が国境の近くの町に用があっていらしてたんですって。
 巡礼者の神殿への道に、偶然同行するという形を取って、本人に報せずにそっと祓ってくださったそうよ」
 本人に報せずに? そんなにサラッと出来る程、凄い方なのね。

《ソウネ。シオリ、アンタだって、アリアンロッドをもっと育てたら、祓うくらいは出来るワヨ》
「やっぱりそうなのか? お嬢ちゃんも、巫女の才能が……」
 嬉しげにフォークを振り回すドルトスさん。
 私は、巫女じゃないって、神殿から放り出されたんだけど……

《巫女とはちょっと違うカシラ?
 っていうか、そもそもの出生が……》
「さ!……ヴィアンヌが持ち上げてくれるのは嬉しいんだけど、私は、巫女じゃないって言われて追い出されたんだから、あり得ませんよ」
「誰に?」
「あ」

 ドルトスさんには、まだ、詳しいことは話してなかったんだった。有事の時に大抵いらっしゃるし、

「カインハウザー様も頼りにされているから、事情は通じているものとばかり思ってました……」

 頭を下げて謝った。

「直接訊いてはいねぇが、セル坊と嬢ちゃんの話でなんとなくは、な? 山頂の大神殿からなんだろ?
 親はいない、身内もなさそうだ。年は14歳。女神の祝福を持ってて精霊や妖精にかなり好かれる。
 知ってるのは、それくらいかな?」

 ニヤッと口の端を曲げて笑ったドルトスさん。

「ああ、後はセル坊の嫁候補ってもっぱらの噂だな?」
「ちっ! 違います!!」
「照れなくてもいいだろうがよ。昨夜、商店街でアツアツだったって、街のどこでも聞けるんだが?」
「それは、アリアンの……必要な、事で、別にそんなんじゃ……」
「照れるなって。まだ14歳だが、秋には成人するんだろ? 街のみんな、今年の収穫祭は楽しみにしてるんだぜ?」

「ドルトスさん、揶揄からかわないでください」

 う…… いま『子供』を強調された気がする……

 ドルトスさんに向かって放たれたはずの、カインハウザー様の言葉に、胸が締めつけられるように痛み、傷つく自分がいた……





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