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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

85.ママとパパ!! アリアンの主張

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 張り切るアリアンロッドに、瘴気を斃さなくてもいいと言い聞かせるカインハウザー様。

「そうだな、そんなことにならないのが一番いいけど、どうしても、わたし達がそばにいなくて、シオリの身が危険にさらされたら。それでも、斃さなくていい。シオリの身を防御して、追い払うようにしてくれれば十分だよ」
≪斃さなくていい? アリアン、やっつける・喜ばれる。防御、風と水の盾囲む出来る思う。追い払うだけ・難しい、斃す・わかり易い≫
「それでもだよ、アリアン。ムリをして、シオリが倒れたら困るだろう?」
 苦笑して、頭を撫でながら言い聞かせるカインハウザー様。

≪シオリ、倒れる・悲しい。シオリ、笑う。ずっとずっと・笑ういい≫
「そのためにも、ムリはしちゃだめだ。今も、シオリはツラそうだろう?」
≪シオリ、つらい? 悲しい?≫

 カインハウザー様から視線を外し、私をじっと覗き込むように見てくる。
「今は、カインハウザー様が来てくれたから、大丈夫。でも、さっきは倒れそうだったかな」

 そう、ロイスさんに支えてもらってた時は、本当に倒れないように手を添えてもらってるだけだったけど、カインハウザー様が手を添えてくださると、安心するからか、あるいは前に魔力を共有して何か道筋のようなものが出来ているのか、体が本当に少し楽になっているのだ。

≪シオリ、倒れる・ダメ! 笑う。ずっと笑う≫
「うん、もう大丈夫だから。次は加減してね?」
≪加減? 難しい。デモ、頑張る≫

「ふふ。今日一日で、いっぱい話せるようになったわね、アリアン」
 なんだか、幼児のような姿につい、微笑ましくて笑みが出る。

≪笑った! シオリ、ずっと笑う、アリアン、いい子スル≫
「そうだな。アリアンロッドが成長しているのもそうだが、シオリ自身の成長も反映されるんじゃないかな?」
「私の成長、ですか?」
「アリアンは、シオリの、妖精達やみんなを思う、瘴気をなんとかしたいという強い気持ちに応えた精霊達が集まって、シオリの意志を核に生まれた大精霊の幼体だから、やはり、シオリの感情や経験に左右されるところはあるだろう」

≪シオリから生まれた……
 シオリ、アリアンのママ?≫
 激しく動悸がバクバク口から心臓を出しそう……
 ちょっと動揺しちゃった。深呼吸で落ち着こう。スーハー

「ママはどうかしら。直接産んだわけじゃないし」
≪えー。シオリから生まれた、セル、マナ魔力シオリに分ける、仲間たち集まる、アリアン生まれた!
 シオリ・ママ、セル・パパ!!≫

 ブハッ ゴホゴホ……

 ナイゲルさんやオラフさんが、苦しげに咳込む。

「シオリの一部をもらっているけど、親子じゃないね。そうだな、姉妹くらいじゃないか?」
≪姉妹?≫
「一部は同じものを持って生まれたが、シオリの中で育まれて生まれた親子じゃないだろう? シオリの一部を元に新たに生まれた別の個体だから、複製とまではいかないけど近い存在、姉妹くらいがいいんじゃないか?」
≪姉妹…… シオリ、お姉さん?≫
「う、うん、そうかも?」
≪お姉さん! セル、お兄さん?≫
「ん~? わたしは、生まれるのを手伝っただけだからなぁ」
≪やっぱり、パパ!!≫

 ブフッ ゴホゴホ……ンンッ

 今度はキーシンさんまで……

「今まで通り、セルかセルティックでいいよ」
 苦笑しながら、アリアンロッドの頭を撫でる。
≪セルでいい?≫

 どうやら、カインハウザー様のファーストネームの短縮形で、『セル』と呼ぶことにしたらしい。
 やっぱり、私の感情を核にしてるって、納得いかないんですけど。



「で、アレを縮めたのがアリアンロッドだという事は判った。しかし……」

 しかし…… なんだろ?

「ここへ来る途中、林にも畑にも響き渡る、イヌ科の遠吠えはなんだったのかな?」

 にっこり微笑むカインハウザー様。でも、口が笑みの形をしているだけで、目は笑ってなかった。



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