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誰の手を取ればいいの
45.第二王子夫妻の内密の行動予定とデュバルディオにとっての不安要素
しおりを挟むそこに居るだけで、空気が和らぐ。兔や仔犬のような印象の柔らかな笑顔が親しみやすい第二王子フレキシヴァルト(※但し中身は肉食系大型ネコ科の猛獣)。
システィアーナと並んで壁際に立つエルネスト、廊下の真ん中で立ち尽くすアレクサンドルとやや険しめの表情のファヴィアンを順に見て、なんとなく状況を読み取る。
また、面倒な⋯⋯
勿論、表情には出さずに、ニッコリと歩み寄る。
すれ違いざまにファヴィアンの背中を軽く手のひらではたき「力を抜け」と他の三人には聴こえないようにギリギリの音量で声をかけておく。
「エル、頼んであったことは解決したんだね?」
「はい。その報告にあがるところでした」
「聞こう。みんなも居るけど、サロンでいいね?」
有無を言わさずエルネストにサロンの方へ視線で示し、システィアーナの肩を抱き寄せて歩き出す。
「え、あの? わたくしは帰、る⋯⋯」
「いいから。アナに少し付き合ってやってくれないかな」
システィアーナを促してサロンに戻る途中、アレクサンドルに声をかけるのも忘れない。
「兄上、夕刻に少し時間が空くだろう? その頃再度サロンへ来てくれないかな。システィアーナにハーブティーを入れてもらうから、悪いけど、御足労願えるかな」
その夕刻の空き時間に仮眠をとろうと思っていたアレクサンドルだったが、システィアーナのハーブティーと聞いて頷く。
「勿論、ファヴィアンも来るだろう?」
「殿下の居られる場所に私の仕事がありますから」
硬いなぁ。苦笑いで兄王子とその側近を置いて、愛しい妻と妹達の待つサロンに戻る。
サロンに戻ると、ユーフェミアとアルメルティアがきらきらと輝く目をして迎えたが、アナファリテが一瞥を送るだけで押し留め、立ち上がってシスティアーナを出迎える。
「戻って来てくださって良かったわ。訊きたい事も説明しておきたい事もあるのよ」
ユーフェミアとアルメルティアが刺繍道具を広げるテーブル席には戻らず、システィアーナの肩を抱き寄せて歩き、窓際のセティに座らせる。
「訊きたいことは、システィアーナの都合。私に付き合ってくださるのだから、無理は言えないわ。でもね、期間をどれだけ取っていただけるか⋯⋯」
アナファリテが訊きたいことが、先程の奇行についてではなかった事にほっとする。
訊き出したそうにしている王女ふたりを黙らせてくれた事に感謝して、説明を受けながら、答えられることに答えていく。
王女ふたりとデュバルディオとは別の応接セットに、フレキシヴァルトとエルネストが座り、書類を広げていた。
「ミア、フレック兄さんの、シスを巻き込んでの都合って何か訊いてる?」
「いいえ。アナが何かシスにお願い事があって、長めの期間、拘束することになるかもとは聞いているけれど、何をするのかまでは聞いてないわ」
「そう⋯⋯ 僕も聞いてないんだよね」
システィアーナが赤面して逃げ出しアレクサンドルが楽しげに喜ぶ出来事も、妹達には知りたくないと言ったものの本音は気になるし、次兄とその妻の、他の王子王女達にも聴かせない内容とはどういった事柄なのかも、デュバルディオにとっては不安要素である。
長期間、システィアーナを頼る? どう考えても自分にはいい話ではなさそうにしか思えない。
デュバルディオの考えるべき事は山積みだった。
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