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誰の手を取ればいいの
34.目覚めたら、
しおりを挟むカチャカチャと、茶器を用意する音が、冷えた空気の中よく通る。
暖炉に火が入り、湯を沸かすための鉄瓶がかけられ、室内は少しづつ暖められ湿り気を取り戻していく。
ファヴィアンがアレクサンドルのために用意した茶に入れることの出来る香草の中から、疲れや尖った神経を弛めるのに有効な成分を含むものを選んでいくシスティアーナの横顔を、アレクサンドルはただ、見つめていた。
ファヴィアンも、暖炉の火と鉄瓶の湯の加減を見ていて、何も話さない。
静かで、湯の沸く音と、茶葉を整えていく音だけが響き、落ち着くのにどこか緊張感もある空気を感じ、アレクサンドルはゆっくりと息を吐き出した。
「さぁ、どうぞ。室温が低めなのですぐに冷めるかと思いますが、気をつけて、ゆっくりと飲んでくださいね」
茶の色も楽しめるように、浅めで口の広い白磁器の茶碗が使われている。
華奢な飾り把手、中はシンプルに白無地、外は薔薇のレリーフのような凹凸のある柄が繊細にデザインされているもので、色は僅かに、薔薇の外側に薄紅と葉の幾つかに渋緑を、極々淡い色調で整えられていた。
これも、おそらくは五代前の女王ブランカの愛用品だったのだろう。
ゆっくりと味わい、時間と温度で色と風味が変わるのも楽しめる、複雑で風雅なハーブティーであった。
最後のひとしずくまで飲み干すのを見守ると、空の茶器を控えていたファヴィアンに預け、ソファの端に座り、ドレスのスカート部分を整える。
「お待たせ致しましたわ。どうぞ。以前のように休めるとよいのですが」
慈愛のこもった眼差しで両手を差し出され、アレクサンドルは、今回も頭の奥が痺れたように何も考えられず、ふらふらと誘われるままにソファに身を横たえ、頭をシスティアーナの膝に据える。
迎えたシスティアーナの右手が髪を撫で、左手が肩から指先の方へ伸びて、半ば本気ではなかったはずの願い通り、アレクサンドルの揃えられた両手の左手だけを軽く握った。
「約束通り、眠っている間もこうして手を握って傍にいますから、安心してお休みくださいね。目覚められましたら、一番におはようございますと言って差し上げますから、楽しみにして眠ってくださいませ」
誰よりも一番に、おはようの挨拶を受けられる? ティアから?
「いい子にしてちゃんと眠るから、そこに居てくれるね?」
「ええ」
先日のように、すっきりと休めるに違いない。
一度深くゆっくりと深呼吸をして、わくわくと期待に目を閉じた。
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