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誰の手を取ればいいの
20.笑顔
しおりを挟むアルメルティアの社会勉強も兼ねて、ユーフェミアと婦人活動の支援事業に向かう。
初めての城外での活動に、ワクワク感が押さえられないアルメルティア。
これまでは、同年代の令嬢達と、城内で教養学習やマナーレッスン、ダンス教室、お茶会などのインドア活動ばかりで、先日の、従姉姫のマリアンナの世話が初めての、正式に任された公の仕事だったのだ。
「アンナ従姉さまのお世話は散々だったけど、今度の公務はミア姉さまやシスのお手伝いだもの、問題は起こらないわよね?」
「どうかしら。何かしらトラブルは起きるものよ」
王族の馬車留めに資料と必要物品を準備した侍女と従者が待っている。
隣では、デュバルディオが、外務省の高官達とどこかの大使館から戻って来たところらしく、普段会わない王族の面々も、ディオに断りを入れてから会談の内容を語りながら本宮へ戻っていく。
更にその隣の、国王と王佐、王太子、宰相しか使わない停車場にアレクサンドルが居て、フレックとファヴィアンとで何かを話し込んでいた。
(今日は、顔色もいいみたい。あれからちゃんと眠れているのね)
「お兄さま達? シスって、なにげに面食いで可愛い物好きよね」
「えっ? その、ミアも大好きよ。本当の姉妹のように、大切に思っているわ。メルティだってリアナだって柔らかくて温かくて可愛くて大好きよ」
突然後ろから声をかけられ、そのタイミングと内容に、動揺を隠せないシスティアーナ。
「ありがとう。私も、お父さまの仰る、違う母から生まれた姉妹って発想、言い得て妙だと思ってるのよ。確かに両親は違うのだけれど、他の誰よりも傍にいたし、ずっと一緒に育ったのだもの。ドゥウェルヴィア公爵先々代王弟殿下のことも、三人目のお祖父様だと思ってるわ」
頰を染めてミアと見つめ合っていると、その後ろでフレックがこちらに気づいて手を振り、ファヴィアンは静かに頭を下げる。
アレクサンドルが、目を細めて微笑んだ。
「⋯⋯お兄さまが、笑ってる?」
「そりゃ、一のお兄さまだって、王太子だけど人間だもの、笑うでしょう?」
「そう言うのじゃないわ」
ユーフェミアは、アレクサンドルのアルカイックスマイルではない笑顔を見たのは何年ぶりかと思ったのだ。
「ティア。ミアもメルティも、これから城外活動に出るのかい?」
「そうだけど。二人も可愛い妹が居るのに、声をかけるのはティアが先なのね?」
「ちょ、ミア、なんてことを言うの」
「そうだね」
(肯定するの!?)
「年功序列だよ」
「私とシスは同い年だし、なんなら私が先に生まれてますけど?」
「再従叔母であるティアは、先々代王弟の孫娘、王族の尊属だよ? 対して僕たちは、ティアから見れば王家だけど祖父の血筋から見て卑属だね? ほら、ティアが先だよ」
「そう来ますか」
「まあまあ、兄上から見たら、三人とも、可愛い妹って事でいいじゃないか」
フレックが取りなし、メルティは笑っているが、ユーフェミアは、今までと違う上の兄を観察していた。
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