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誰の手を取ればいいの
12.ゆびきり
しおりを挟むアルメルティアも今年15歳。正式に社交デビューの年である。
そこで、経験を積ませるためにも、ユーフェミアとシスティアーナで進めている婦人ボランティア活動に参加させることになり、色々と摺り合わせを終え、ひと息ついていると、語学学習のためにフローリアナが入ってきた。
「ああ、やっぱり。ここに居たのね、シス姉さま」
「リアナ。わたくしを探していたの? なあに?」
まだ8歳のリアナは、妹ソニアリーナよりも歳も身体も小さく愛らしくて、ぷくぷくすべすべのほっぺは触りたくなる。
触りたいのを堪え手をフルフルさせながら、リアナの目の高さまでしゃがむ。
「ううん、探してたのは私じゃないわ。ファーよ」
(ファヴィアン様が? わたくしを?)
「ファヴィアンがシスをって、珍しい事もあるものね?」
「確かに、あまり接点はありませんが、お探しなら、この後は帰るだけなので、訪ねてみますわ」
ユーフェミアの執務室を辞し、アレクサンドルの執務室に向かう。
(確か、王太子殿下は本日は外出される予定はなかったはず。執務室長のファヴィアン様も居られるわよね?)
だが、王太子執務室に着いてみると、主も補佐官もどちらも不在だった。
「一刻ほど休まれるとの事で、王太子宮に近いサロンの方へ向かわれましたので、室長も恐らくそちらにいるのでは無いかと」
行き違いになる可能性もあったが、どうせこの後の予定はない。時間を気にするほどのこともないので、王族しか立ち入れない奥宮へと向かう。
いつも王子達が使うサロンを訪ねてみるが、フレックとトーマストル、アスヴェルとエルネスト、トーマストルの侍従と護衛官二人しか居なかった。
「兄上は来てないよ。ファヴィアンは一度顔を出して、シスが来たら、一度寄るように伝言は預かったけど⋯⋯ 行き違いになったみたいだね」
「ええ。もう一度、時間をおいて執務室を訪問してみますわ」
「なら、お茶、飲んでいく?」
12歳のトーマ王子が空の茶器を手に、にっこり微笑む。
エメルディア妃に似た愛らしい面差しが、少年から青年へと変わりゆく過程にあり、今が一番、美少年と言える時期だ。
年頃の少女らしく、美しいもの、愛らしいものが好きなシスティアーナは、微笑ましくて胸が温まる。
「殿下。お気遣いありがとうございます。帰る前にミアと話したいので、一度戻ります。殿下の手ずからのお茶はこの次に」
「約束だよ?」
可愛い小指と自身のとを繋げて約束を交わす。
カーテシーをひとつ、システィアーナがサロンを去る。
「お前、やるなぁ。システィアーナのツボを心得てる?」
「ふふん。フレック兄さまでは可愛くならないから出来ないでしょう? エルネスト、羨ましそうにしてもダメだよ。これは、成人前の僕の特権だからね」
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