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誰の手を取ればいいの

8.初デートとは

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 ソファに深く沈み込み、息を吐き出すデュバルディオに、目をキラキラさせたアルメルティアが温かいハーブティーを差し出す。

「ねぇねぇ、どうだったの?」
「ん?」
「今日、シスとデートだったんでしょ?」

 ソファの傍にしゃがみ込み、ディオの腿に両手を添えて、顔を覗き込むアルメルティア。
 恋バナに興味津々なお年頃の14歳の少女。それは、王女であっても変わらないようだった。

「うん。楽しかったよ。彼女、街歩きは殆どしたことがないって言ってたしね」
「ウンウン」
「でも⋯⋯」

 ちょっと、眉を顰めて苦笑するデュバルディオ。

「どうかしたの?」
「いやぁ、参ったよ。婦人服飾店に入って帽子を見ても、エル従兄にいさまと昔来た時どうだった、とか、お茶しようかと喫茶店に入っても、エル従兄にいさまはああ見えて甘い物も嗜むのとか、エル従兄にいさまならエル従兄にいさまはエル従兄にいさまってば、どこ行っても何見てもエルエルエル⋯⋯」

 ぶふっ

 とても普段人に見られる事を意識してすましている王族とは思えない、無遠慮な笑いが漏れる。

 ぎりっと声の漏れた方を振り返っても、みんな背を向けて視線を反らしている。
 無反応なのは、黙って聞いているアレクサンドルとファヴィアンだけだ。が。

「まあ、予想はついたがな」

 しれっとそう言って、興味は削がれたとばかり、目を伏せて茶器を取るファヴィアン。

「予想はついた?」

 不満げな表情かおをファヴィアンに向ける。

「ああ。そこまでとは思わなかったが、ある程度は予測出来た。街歩きは殆どしたことがないと言っていただろう?」
「ああ」
「つまり、今ほど忙しくなく、うちの阿呆と婚約する前に、ユーヴェルフィオやエルネストと、保護者付きで街を視察に出たのが、子供の中では街遊びのようなもので、それくらいしか街の思い出はないのだろう」

 ファヴィアンの解説に、フレックが補足説明をつける。

「年頃になって、男と出掛けた事がないシスには、膨らませる話題がない。かと言って、普段のように公務がらみの話をするのも違う。で、ディオと共通の話題として、共通の友人でもあるエルネストの話題をするしかなかったんじゃないかな?」
「ああ」

 そうか。納得するデュバルディオ。

「私と出掛けていれば、ユーヴェルフィオの話になったのだろう」

 ファヴィアンと出掛けるシスティアーナという組み合わせはあまり想像がつかないが、かっちりして如何にも貴族階級らしさを崩さない彼のエスコートなら、長身で銀に近い白金髪プラチナブロンドのファヴィアンと凛とした薄紅の姫君らしい、お似合いのカップルに見えるだろう。

「きっと、次にエルネストが連れ出す時には、この間ディオとお出かけした時はこうだったのよ、な話題でいっぱいだと思うわ」
「落ち込むエルネストの背中がみえるようだな」

  





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