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小さな嵐はやがて⋯⋯

35.園遊会の後

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 エスタヴィオが、主だった貴族達と有識者、昨年の功労者を労い、アレクサンドルとフレック夫妻が他の招待客への挨拶と言葉かけが終えると、招待客達は、日暮れ前に閉会解散まで、自由に茶と菓子とお喋りに興じる。

 エスタヴィオが直接招待した者──少ないプライベートな時間に個人的に親しくしている友人と、親族の中でも普段から付き合いのある一部の血族のみ、他の招待客を庭園内に残し、城内の奥宮のプライベートエリアへ入って行く。

 エスタヴィオの弟妹や叔父叔母、従弟妹いとこ達でも、その殆どが喚ばれていない。

 エスタヴィオの妻子とフレックの新妻アナファリテ、宰相でもあり幼馴染みでもあるロイエルド夫妻、父(元国王)大公、祖父エイリーク王の妻太王太后たいおうたいごう、先々代王弟ドゥウェルヴィア公爵夫妻、幼少からの学友の一人で典医局の医学博士クラヴァイン伯爵夫妻、エスタヴィオの妹の一人レーナンディア女公爵とその配偶者。エスタヴィオのまた従兄いとこの一人サラディナヴィオ公爵夫妻、聖王に仕える十二人の枢機卿の一人セリウス大司教、グルリと一周してドゥウェルヴィア公爵夫人の隣にエステール女公爵アミナリエが、数脚の円卓に分れて座している。

 その中に、アレクサンドルの側近の一人としてファヴィアンとユーヴェルフィオ、フレックの護衛兼秘書としてアスヴェルとエルネスト、ユーフェミアとアナファリテの補佐役としてシスティアーナも参加していた。

 何のことはない、ただの、場を変えての内々のお茶会である。

 各円卓の内側の空間には、年代物の大きな壺が飾られ、王家の白薔薇が生けられていた。

「お祖父さま」

 赤味の強い艶が特徴的な濃い金髪の、初老の男性に駆け寄るシスティアーナ。
 社交デビューも済んだ令嬢に対する行為とは思えないが、公爵にとっては、いつまでも可愛い孫娘なのだろう。縦抱きに抱え上げて、染まる頰を撫でる。

「システィアーナ。立派になったな」

 日光の当たらない室内では曇りのない赤銅あかがね色に見える濃い金髪の美丈夫。老いて尚ピンと伸ばした背筋は真っ直ぐに、とても60代の老人とは思えないドゥウェルヴィア公爵。
 先々代王エイリークと同腹の正妃の生んだ第二王子で、母正妃からも父王からも、女王ブランカの血を引いているのが一目でわかる金紅色のきんこうしょく ブロンドは、娘エルティーネにも孫娘システィアーナにも受け継がれている。
 妻のフェルミーナも女王ブランカの王妹が興した女公爵家の嫡出子で、エルティーネが薔薇姫、システィアーナが薄紅の姫君と呼ばれるのも当然のことと言えた。

 



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