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小さな嵐はやがて⋯⋯
16.園遊会──同席者
しおりを挟む主だった上位貴族が国王の園遊会への招待の挨拶を終え、案内された席につくと、いよいよ王エスタヴィオは、招待客の中でも特に覚えのよい者、昨年の国益功労者などを労って廻るために席を立った。
後は、互いにいつもの茶会のように挨拶や情報交換したり、お喋りしたり、閉会まで自由に過ごす。
案内されたテーブルのアフタヌーンティースタンドの軽食や菓子に手をつける者、別のテーブルへ移動して、縁者に挨拶する者など、大騒ぎする者はいないが大勢が一斉に話し始めると、それなりのざわつきが出る。
意図的に選別された招待客しかいない夜会と違い、王城の広い庭園で行われるガーデンパーティーは、招待客も、客を世話をする女官や従僕達も、かなりの数だ。
雪解け早春の季節はまだ風は冷たいが、今日は天気もよく、陽に暖められた芝生から僅かな暖気が立ちのぼる。
主にカロラインが喋り、ユーヴェルフィオとエルネストが相槌を打ったり返事したり、ファヴィアンはほぼ無言だった。
座っていても尚わかるほどに身長が高く、白っぽい金髪を肩甲骨の辺りまで真っ直ぐ伸ばした美丈夫は、黙っていると多少威圧感がある。
話し掛けたいのだが声をかけられないといった様子が見て取れるカロライン。チラチラとファヴィアンを見るが、寡黙に茶を飲むだけで、にこりともしなければ、視線をやることもない。
これで、ユーヴェルフィオとアレクサンドルとは仲がいいというが、年相応の青年らしい所を見てみたいかもと、システィアーナも思っていた。
「あ⋯⋯の、わたくし、うるさかったですか?」
「カロライン嬢。ふぁー⋯⋯ファヴィアンは、いつもこうなの、具合がよくないとか機嫌が悪い訳じゃないの。大丈夫よ?」
おずおずと訊ねるカロラインに、システィアーナがフォローを入れる。
「別に。小鳥が囀るのは当たり前だ。気にしていない」
「ほら、小鳥みたいだって。可愛いって言ってるし、気にしない。こいつはいつもこうなの」
ユーヴェルフィオも不安げなカロラインを宥める。
小鳥のように可愛いとは言ってないと思ったけど、まあカロラインはシスティアーナほどではないが可愛いし、混ぜっ返してもいいことはないので突っ込まないエルネスト。
近くのテーブルで、苛つく女性の甲高い声が上がった。
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