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小さな嵐の吹くところ

13.7つの少年はお子さまでほんものの王子様ではないらしい

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 結論から言うと、システィアーナはうまくは踊れなかった。

 祖父に習ったからと言って、すぐに思うとおりに踊れるはずもなく、まだ手足も短く姿勢を保つのも大変な体格。

 加えて、相手を務めるエルネストもまだ7つになったばかり。
 幼児体型から手足が伸び始め、日々全身のバランスが変わっていくのに追いつかない頃だ。

 誕生日を迎えておらず、まだ5つのシスティアーナは小柄で重い頭に重心も高く、走っても転びそうな幼女である。

 どちらも手本通りに踊れるものではなかった。

「もぉエルにぃさま、お祖父さまとぜんぜん違う~。ちゃんと踊らなきゃ」
「ごめん、僕もまだちゃんとは覚えてないんだ。次までに特訓しておくよ」

 そういうシスティアーナも、踊れていないのだが、そこで素直に謝るのがエルネスト。
 デュバルディオもエルネストと同年生まれで、エルネストよりもまだ小柄。
 パートナーを変わってみるも、幼児のお遊戯会の域を超えない。

「お前らドンくせぇな。貸してみろよ」

 本日集まった中で最年長のファヴィアンの隣でつまらなそうに眺めていた、金茶の髪と榛色の瞳が意志の強そうな少年。
 9歳のオルギュストである。

 兄ファヴィアンが、ユーヴェルフィオと共に第一王子アレクサンドルの学友兼側近候補として出入りしているのについて来た(来させられた)形で参加していた。

 デュバルディオの手に捕まって立っていたシスティアーナの手を引っ張り、エルネスト達より2つ年長のわんぱく盛りらしいよく言えば元気、悪く言えば乱暴な踊りを披露する。
 重心が高く慣れないダンスシューズでよろめくシスティアーナを引き摺る感じで踊っていると、目を回しかけているのをみかねたファヴィアンが、止めに入った。

「オルギュスト。女の子はおもちゃじゃないんだ。もっと、優しくそっと扱わなきゃだめだ」

 最年長だけに、場数が違うのだろう、少年にしては優雅に、そつなく踊り出す。
 そうは言ってもまだ12歳の少年である。社交にけたドゥウェルヴィア公爵と比べるのが間違っていると言える。

「ファー、のっぽすぎて首が疲れるし、手が怠いの」

 ぶっ

 莫迦にしたようにオルギュストが笑ったが、こういう態度は日常茶飯事なのだろう、ファヴィアンは意に介さなかった。

 その後も、ユーヴやふえっくフレックは面白みがない、デューやエル兄さまはお子様すぎ、と、少年達のプライドをへし折っていく。

「てぃあ、そんなこと言ってたら、相手いなくなるわよ」

 ユーフェミアも呆れて声をかけるが、兄達を庇ってのことではない。
 ほぼ同意見であるが、今この場に居るのは子供ばかりだし、大人が5~6歳の習い始めの少女と踊るのは無理がある。
 だから、ここは我慢しろというのである。

 ユーフェミアの相手パートナーをしていた10歳の美少女が、クスリと笑いを堪えられずにもらした。

「いいわ。お子さまなこーしゃくシソクなんかより、ティア、ほんものの王子様と踊りたい!!」

 ファヴィアンの手を離し軽やかな足音を立てパタパタと駆け寄り、ユーフェミアの練習をみていた相手の胸元に飛び込んだ。

「さんでぃ、おどろ!」





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