婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ

文字の大きさ
81 / 263
婚約破棄後の立ち位置と晴れない心

8.システィアーナのパートナー

しおりを挟む


 名を呼ばれ、アレクサンドルの肘に手を置いて、王家の座る雛壇の裾からホールへ出る。

 システィアーナは王家の人間ではないが、アレクサンドルのパートナーとして、国王、大公の前の最後から三番目の登場だった。

 壇上からホールを見ると、公爵家の人々が待つ区画の端に、ユーヴェとエルネストを見つける。

 エルネストは、数段高くなった王家の立つ雛壇に、アレクサンドルにエスコートされて出て来たシスティアーナに驚いていたようだ。

(わたくしだって聞いてなかったし、驚いているのよ)

 軽く首を振ると、ユーヴェが何かを囁いていた。


「ユーフェミア王女とフレック王子の発案らしい。アレクもシスも知らなかったようだよ」

 それでエルネストが納得したかは判らないが、驚愕顔で壇上を見るのはおさまったようだ。

 続いて前国王ウィリアハム大公、国王夫妻がクリスティーナ妃とエメルディア妃も伴って登場し、ようやくシルヴェスター開催の号令をかけると、雛壇とホールの間に座す宮廷楽団がワルツの定番曲を流し始める。

 エスタヴィオが正妃エルナリアの手をひき、初めの曲を踊り、二曲目をクリスティーナ妃、三曲目をエメルディア妃と踊ったが、大公は健康上の都合か玉座から立つことはなく。

「では、薄紅の姫君。わたしと一曲踊ってくださいますか?」

 アレクサンドルが胸に手を当て腰を折って請うと、やはり、システィアーナに拒否権はなさそうである。

「大丈夫。わたしはあまり人前で踊らないけど、ちゃんと踊れるから。子供の頃は何度も踊っただろう?」

 確かに十年ほど前はまだエスタヴィオが王太子で、王子王女達はみんな纏めて礼儀作法やダンスを学んだりした。
 その中に、ファヴィアン、ユーヴェ、エルネスト、システィアーナも混じっていた。

 まだ7つのエルネストはダンスもそこまでうまくなく、ステップを間違えない程度。
 12歳のファヴィアンや10歳のユーヴェやアレクサンドルと踊る方が綺麗に踊れるので、よく三人と踊っていた。
 当時はおしゃまな子供だったシスティアーナは、すでに長身だったファヴィアンやそつなく規定通りで面白みのないユーヴェより、踊りも見た目も綺麗で優しい本物の王子様のアレクと踊りたがった。

 当時の自分を叱りつけたい気持ちになった。
 なんて身の程知らずな我が儘娘だったのだろう。
 本物の王子様と踊りたいだなんて⋯⋯

 あの頃よりずっと洗練された動きで、アレクサンドルのリードで滑るように踊り出した。

「あの頃の君の言葉忘れてないよ。『ティア、本物の王子様と踊りたい!』に続いて、ファーはのっぽすぎるしユーヴとフレックは型通りすぎて面白くないし、エルとオーは子供すぎ、だっけ?」

 全部覚えられていた!! 自分が覚えていなかった、オルギュストとエルネストを子供だと、より子供で幼女とも言える五~六歳児の自分がそんな事を言っていたとは!

 穴があったら入りたいとはこのことか。

「こ、子供の戯言ですわ。忘れてくださいまし」
「くくく。あれがよほどショックだったんだろうね、フレックもディオも、勿論ユーヴェやエルネストも、君の見てないところでかなり練習していたよ」

 しかも、ユーヴェやエルネストには「本物の王子様」の垣根を越えられないのだ。
 かなり酷いことを言ったのだと自覚はあった。





しおりを挟む
感想 164

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ エレインたちの父親 シルベス・オルターナ  パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ! ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...