上 下
54 / 263
システィアーナの婚約者

24.カルルデュワは候補に入るか?

しおりを挟む


「参考までに訊いておくが、もし、タルカストヴィア伯爵家の方から、婚姻を結びたいと言われたら、システィアーナは、お受けしたいかね?」

 ──カルルデュワ様と、婚姻を結ぶ?

「ですが、あの方は、外交のお役目を降りる訳にはいかないのではありませんか?」
「だから、もし、だよ。それに、私だって王宮で宰相を引き継いでからは、殆どの業務を執事や親族に任せて、裁決しかしていないだろう? シスだって、同じように信頼できる部下を育てれば、今まで通り王女の公務を手伝いながら、領地管理も出来るようになるだろう。カルルデュワも同じだよ」

 大切なのは、システィアーナと後継を産み育てること。領地管理は、執事達や親族に任せて、最終的な裁決と、管理人達を統括するだけでもいいと言う。
 だから、カルルデュワも、システィアーナの夫となるのに、無理に外交官を辞める必要はなく、定期的に邸に戻り、彼女を支えるのが役目になる。

 ──それなら他の、騎士団に所属して王宮に詰めている上位貴族の三男、四男でもいいのだろうか?

「そうだね。ある程度の家格と、貴族男子としての常識や礼儀を備えていて、子供達を導けるようなら、多少は目を瞑ってもいい」

 ただし、婿養子の分は弁えてもらうけどね?

 ロイエルドは兄と言っても通りそうな若々しい整った顔を笑みに変えて、それだけ伝えると、サンルームを立ち去った。

 婿養子の分を弁える、とは、必要以上に領地のことに口を出して損害を出したり我が物顔で自由にしようとしたり、王族や当主でもないのに愛人を囲ったり、といった、世にあふれる醜聞のことを言っているのだろう。

 ──それは当然でしょう

 システィアーナだとて、領地の管理を手伝ってくれたり、より良く改革してくれるのは歓迎だが、自分の持ち物のように好きにされたり、当主でもないのに愛人を作られたりする気はない。

 父ロイエルドが宰相である以上、派閥勢力を鑑みた選定は必要となるが、公爵家や侯爵家などの三男四男も視野に入れてもいいかと、すでに頭にきっちり収めている貴族年鑑を広げていった。

 ロイエルドはカルルデュワも視野に入れてもいいような言い方ではあったが、それでも、なぜか候補の一番手には挙げられなかった。

 あの、洗練されたスマートな身のこなしや、外交で培われた、ものを見る目や知識、そつなく何でもこなせそうな気の回し方。
 侯爵家の女主人の隣に置くに、恥ずかしくない礼儀作法も身につけているし、茶会や夜会に伴っても、話題に困ることはないだろう。

 それでも、女性の扱いにも慣れてそうなところが、どうしても引いてしまうシスティアーナであった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました

上野佐栁
ファンタジー
 前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。

男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「たかが一男爵家の分際で、一々口を挟むなよ?」  そんな言葉を皮切りに、王太子殿下から色々と言われました。  曰く、「我が家は王族の温情で、辛うじて貴族をやれている」のだとか。  当然の事を言っただけだと思いますが、どうやら『でしゃばるな』という事らしいです。  そうですか。  ならばそのような温情、賜らなくとも結構ですよ?  私達、『領』から『国』になりますね?  これは、そんな感じで始まった異世界領地改革……ならぬ、建国&急成長物語。 ※現在、3日に一回更新です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした

桜月雪兎
ファンタジー
アバント伯爵家の次女エリアンティーヌは伯爵の亡き第一夫人マリリンの一人娘。 彼女は第二夫人や義姉から嫌われており、父親からも疎まれており、実母についていた侍女や従者に義弟のフォルクス以外には冷たくされ、冷遇されている。 そんな中で婚約者である第一王子のバラモースに婚約破棄をされ、後釜に義姉が入ることになり、冤罪をかけられそうになる。 そこでエリアンティーヌの素性や両国の盟約の事が表に出たがエリアンティーヌは自身を蔑ろにしてきたフォルクス以外のアバント伯爵家に何の感情もなく、実母の実家に向かうことを決意する。 すると、予想外な事態に発展していった。 *作者都合のご都合主義な所がありますが、暖かく見ていただければと思います。

【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。

はゆりか
恋愛
「お前との婚約は破棄させもらう」 「破棄…ですか?マルク様が望んだ婚約だったと思いますが?」 「お前のその人形の様な態度は懲り懲りだ。俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからこの婚約は無かったことにする」 「ああ…なるほど。わかりました」 皆が賑わう昼食時の学食。 私、カロリーナ・ミスドナはこの国の第2王子で婚約者のマルク様から婚約破棄を言い渡された。 マルク様は自分のやっている事に酔っているみたいですが、貴方がこれから経験する未来は地獄ですよ。 全くこの人は… 全て仕組まれた事だと知らずに幸せものですね。

婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?

サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに―― ※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

処理中です...