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システィアーナの婚約者

17.夜更かしの理由は?

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 ユーヴェルフィオが報せておいたおかげで、馬車止めに侯爵家の馬車が待機していて、侍女、従僕と馭者が待っていた。

「お嬢さま、お加減は?」

 馬車で待っていた侍女はスカートの裾を持ち上げ、足早にシスティアーナを迎える。

「少し疲れが出たかしら。殿下に支えていただいたので、大事なく来れたわ」
「このところ、色々と詰めすぎですわ。明日はゆっくりなさって下さいまし」

 システィアーナの幼少より世話をしてきた侍女は、手早く、介抱を始める。

 保温材を使った袋にお湯を用意していたらしく、固めに絞った手拭いで、口元を湿らせ、額と頰を優しく拭うと、首筋を温める。

 喉元から血を温めて身体の緊張が弛むと、ユーヴェルフィオの手助けで、ゆるりと馬車に乗り込む。 

「メリア、だったかな? システィアーナをこき使って申し訳ないね。明日はゆっくりと休ませてやってくれ。妹達には、わたしから言っておこう」
「お心遣いいたみいります」

 侍女メリアは、伯爵家の三女で、行儀見習いを始めたすぐに、システィアーナの専属侍女に抜擢され、王宮へも付き従うようになっていて、ユーヴェルフィオはもとよりアレクサンドル達王族も顔は覚えていた。

「アレク」
「構わないよ。送っていってあげて。そのまま今日は自宅へ戻って領地内の業務に戻ってもらって構わない」

 ユーヴェルフィオは頭を下げると、システィアーナの向かい側、進行方向とは逆の席に座る。
 従僕の手を借りてメリアが乗り込むと、扉は閉められ、従者が後ろのステップに立ったのと同時に馬車は進み出した。


「シス。王宮内で倒れると迷惑がかかる。調子が良くないなら、早めに伝えて、休むことも覚えなさい」
「ユーヴェ従兄にいさま、申し訳ありません」

 素直に頭を下げるシスティアーナに、頷いて、ユーヴェルフィオは頭を撫でた。

「たくさんの釣り書きが届いてるの。お断りのふみもまだ全部出せてなくて⋯⋯」
「ひとつひとつに返事を出してるのかい? そりゃまた大変そうだね」
「幾つかは、お父さまが破り捨ててしまったから、返せなくなってしまったので、お詫びの文を出したら、他の方々にも出さない訳にもいかなくて」

 困った顔で眉を寄せるシスティアーナ。
 ユーヴェルフィオはため息をついて、腕組みした。

「いちいち返さなくても、見合いの申込みがなければ断られたと解るんじゃないか? 数が多いんだろう?」
「ええ。まさかあんなに来るとは思わなかったわ」

 届いた釣り書きの数を聞いて、ユーヴェルフィオは呆れてしまった。
 どう考えても、適齢期の令息を持つ高位貴族の家の数を超えている。

「ええ。男爵家や子爵もありましたわ」

 本気で婿入り出来ると思って出したのだろうか。お祭り騒ぎに便乗しただけのようにも思える。

「まあ、なんだな、今夜と明日は、その返信作業はやめて、ゆっくりしなさい」

 返事を遅らせたくはなかったが、自分が体調を崩せば、王女達のスケジュールにも迷惑がかかるので、言われた通りに休むことに承諾して、邸までの間目を閉じた。





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