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システィアーナの婚約者
12.外交官で伯爵家三男の視線の先に
しおりを挟むイヤリングをつけてみたり、お互いに贈られた物を褒め合ったりしている王女三人と、胸にタイピンを刺してみている王子。
叔父と甥姪の和やかな雰囲気を横目に見ながら、カルルの分もお茶を用意していると、不意に目が合う。
てっきり、王女達の様子を見ていると思っていたので、自分と目が合うと予想もしていなかったシスティアーナは、変に動揺してしまった。
『ふふふ。お茶をありがとう。いただくよ』
さすが、王家の外戚で外務省の高官、伯爵家の子息である。洗練された綺麗な所作で、音も立てずに茶を飲む姿は、サマになっていた。
諸外国で外交上、もてなされる立場であり、そのカルルデュワの礼儀作法や対応、人品などを見て外交に価する国かを精査されるので、その場でマナー違反などする訳にもいかず、常に人に見られることを意識した正しく美しい、国を代表するに相応しい作法であった。
『薄紅の姫君は、お茶を淹れるのが上手だね。毎日飲ませていただきたいくらいだよ』
礼を兼ねたお世辞だとわかっていても、真正面から褒められると照れくさい。
頰に朱がさすと、カルルの目が柔和に細められた。
ますます、居たたまれなさが募っていく。
『シス? 顔が⋯⋯顔色が変よ? 血の気が引いた額なのに、頰は赤くて、まるで風邪でもひいたみたい』
『このところ気疲れがひどいのではなくて? カルルデュワ様がいらっしゃれば、語学は間違いないから、私達のことはいいわ。今日はもう、帰って休んでちょうだい?』
二人の王女に促され、下がらせて貰うことにした。
『送って差し上げ⋯⋯』
『大丈夫ですわ。語学の教師も兼ての訪問でありますのに、わたくしを送り返していてはせっかくの機会が失われます。それに、登城時の我が家の馬車が待機してますし、そちらにわたくしの侍女もいます。表の宮廷には父やその執事達もおりますから、どうぞお気遣いなく』
それに、婚約解消したばかりの惣領娘が、未婚の男性に送られたとあっては噂も立つ。
しかも、彼に不躾なほど観察された居たたまれなさが、不調の原因かもしれないのだ。
カルルに送られるのは、却って逆効果である。益々体調は悪くなるだろう。
まだ何かを言いたそうにしているカルルが口を開く前に、王女達の勉強部屋を辞した。
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