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婚約破棄宣言した愚か者を許さない人達
13. オルギュストの処遇
しおりを挟むその後もエスタヴィオは、オルギュストに対して不快な点を次々と挙げ連ね、公爵は再起不能かと思われるほど床に這いつくばって動けなくなっていた。
この部屋に集められた者のうち、幾人かはその姿を見て溜飲を下げたようだったが、システィアーナは居心地が悪くなるだけであったし、エスタヴィオの怒りは収まってはいなかった。
「まさか本当に、官僚子爵の『平民の』娘と婚姻を許すつもり?」
「い、いえ、まさかそのような事は⋯⋯」
「え? どうして⋯⋯」
「「「は?」」」
エスタヴィオが公爵に、オルギュストが連れて来た子爵令嬢との結婚を許さないよね?と言外に確認すると、意外な所から、疑問の声があがる。
システィアーナである。
彼女からしてみれば、貴族位を棄ててまで添い遂げたいと思う相手が出来たのだ。自分との関係を解消した後は、あのシャンパンゴールドの娘と夫婦になり、一騎士として暮らしていくのだろうと思っていた。
「システィアーナは、それでいいの?」
「いいの、とは? オルギュスト様は、そうなさるおつもりで、わたくしとの関係を破棄なさると仰せなのでしょう? わたくしには否やはありませんわ。あの方との縁は、もうとうに諦めましたから。あの可愛らしい方とお幸せになられるのでしたらご自由にという感じでしょうか」
「なるほど。オルギュストがシスティアーナを貶めるような阿呆であり、アレがシスティアーナを棄てるのではなく、システィアーナがアレを見捨てた、という事でいいのか」
何やら、大袈裟な話になっていないか?
王命に逆らうのはよろしくないが、自分が好かれなかったというだけの事として、双方了承の上で婚約関係を解消すれば、問題はないのではないのか。
システィアーナの背に、冷たい汗が流れた。
「お互いに了承の上で円満に婚姻契約を解消すれば、傷を負うことなく、想う相手と添える。それでよろしいかと」
「自分を蔑ろにした責を咎めたいとか意趣返しをしてやりたいとかは?」
「特には」
「そこまでアレへの関心は薄れてた?」
「ええ、まあ、もはや努力するだけ時間の無駄なのかと」
「九年間が勿体無い、とは思わなかった?」
「想い合えなかったのは残念ですが、王戚の方を夫に迎えるに相応しい女性になる為に、ユーフェミア王女殿下と共に学んだ事は、無駄にはなりません。次に活かせるかと」
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