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婚約破棄宣言した愚か者を許さない人達

12. オルギュストの罪

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「10歳の頃から、その子爵令嬢と想い合っていたとでも? 当時、彼女はただの一事務官でしかなかった平民の娘で、公爵家次男のオルギュストと出逢うことも無かったと思うが? 仮に当時から付き合っていたとしても──許すつもりはないけど──そうだとしても、王命での婚姻契約を受け入れた時点で、身辺整理して、システィアーナを支える務めを果たすべきではないのかな?

 今の無意味な言い訳よりも、さっきの質問にまだ答えてもらってないんだけど?
 騎士道が「騎士らしい行動をとる事」? 馬鹿なの? その騎士らしい行動とは何か、を問うているのだけどね?」

 詰られる公爵の顔色は、青褪めるを通り越して、死人のような土気色と灰色を取り混ぜたグラデーションであった。


「答えられないの?」

「は⋯⋯申し訳ありません。わたくしめは、文官でして、武の道には明るくなく⋯⋯」

「それでも、息子を騎士にすると言うのなら、基本知識くらいは学んでおいて欲かったけどね? そうでないと、息子にどう教育していいのか解らないじゃないのかな? 適当に、上級騎士に預けておけば、なんとかなると思ってた?」


 公爵はただひたすら、コメツキバッタのように頭を床にこすりつけるばかり。


「不勉強なセルディオのためにかい摘んで言うと、主への忠義と勇気を主軸に、敬神・礼節・名誉を尊び、寛容な心と、弱き者──特に女性への奉仕を徳の理想とする理念を言うんだよ。君の息子は、その中のどれを持ち合わせているのかな?」

 エスタヴィオが、すっかり冷めてしまったハーブティーを一口含み、嚥下すると深い息を吐いた。


「第一に王命にもかかわらず、システィアーナと向き合おうとしなかった事。

 第二に、王命であるにもかかわらず、勝手に婚約破棄すると宣言した事。

 第三に、高位貴族でありながら、王の認可も取らずに勝手に連れて来た小娘と婚姻を結ぶと宣言した事。

 第四に、大勢の貴族の集まりの中でそれらを実行し、不当にシスティアーナに恥をかかせた事。

 第五に、婚姻契約締結より今日まで、システィアーナに対する侮辱行為の数々。

 第六に、高位貴族の末席にある者としての自覚、認識や常識が足りなすぎる不勉強さ。愚かしいね

 第七に⋯⋯」

「も、もう、十分過ぎるほどに、オルギュストの愚かさはわかりましたのでそれくらいに⋯⋯」

「なぜ?」

「は?」

「それくらいに留める理由が? この際、アレの至らない部分をすべて把握した上で、どう処分するか考えるべきじゃないの? まだ愚行を繰り返させる気?」


 エスタヴィオの公爵を見下ろす眼は、どこまでも冷たかった。





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